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デス・オア・グローリー:翡翠の髪留 #1

 イケてるファンタジーミニチュアをいっぱい売ってる「ハーミットイン商店」が開発したソロプレイ用ミニチュアゲーム「デス・オア・グローリー」を遊びました。

 ルールブックに同梱されている入門用クエストを遊ぶには敵味方合わせて10体のミニチュア(手持ちのファンタジーミニチュアから好きなものを選べる)が必要で、2ヶ月くらいかけてのんびり塗り揃えました。「こいつはどんな経歴と性格をもっているんだろう」とか想像しながらペイントするのはある意味この趣味の一番楽しいところで、せっかくだから、最初のゲーム体験も読み物として書き起こしてみようとは、早い段階から思っていたことです。

 以下は、彼らの最初の、そして最後かもしれない冒険の記録。

◆ヒスイの髪留め

 その日、その街のその酒場に集った冒険者は全部で四人。共通点は単純明快、各々の路銀はもはや底を尽きかけ、明日の宿代飯代さえ無い。
 今となっては、誰も話の流れを覚えていないが、とにかく、金を稼ぐ為に手を組もうという結論に纏まった。
 折しも、仇討の引受人を探しているという男が、その酒場をうろついていたのだ。とある行商人を殺した、その存在への報復を為せば金貨30。そして、彼が持っていた<ヒスイの髪留め>を持ち帰れば…金貨20を、上積みすると。

 デス・オア・グローリーは手持ちのコレクションから好きなミニチュアを選び、種族と称号(クラス)と持ち物を選んで主人公とすることができます。今回パーティーメンバーとして選んだのは、以下の四人。

【ディーグリ】(ドワーフ/戦士)
ミニチュア:アザーワールドミニチュア「ドワーフの戦士
◆「傭兵だ」自らのことを、ディーグリは短く強い言葉で説明する。彼は金に厳しく、情に流されないが、依頼人を騙すような事もせず、淡々と仕事や冒険をこなす。そういう生き方しか知らないのだというから、一般的なドワーフとは少し違う生い立ちなのかもしれない。
 両手斧を用いた荒々しい近接戦を得意とするディーグリだが、傭兵として培った搦め手として、腰から下げた小槌による投擲攻撃にも通じている。

【オーリン】(ドワーフ/聖職者)
ミニチュア:アザーワールドミニチュア「ドワーフの聖職者
◆過去について問われると、オーリンは苦虫を噛み潰したような顔で口を閉ざす。卑屈で愚痴っぽく、悲観的なものの見方をするこのクレリックは、しかし目の前で困窮する人を助ける事は躊躇しない。そうする理由は解らないが、彼が何か固い決意を持っているのは確かだ。
 ドワーフは魔法の扱いに先天的なハンデを負うが、それでも彼の癒やしの奇跡と、生まれ持った頑強な身体は、戦いにおける守りの要となる。

【フレデリカ・スカーレットリバー】(人間/魔術師)
ミニチュア:オーロラモデル「メイジ
◆「西から来たの、見聞のためにね」飄々とそう語るフレデリカだが何せ魔術師、実際の素性は解ったものではない。魔法について堅実な知識を持っているものの、普段の彼女は魔術師とは思えないほど明朗で饒舌だ。また、冒険に対して向こう見ずな憧れを抱いている節もある。
 彼女は自身の髪色によく似た、炎による攻撃魔法を明らかに好んでいる。スタッフ(杖術)の心得もあるにはあるが、所詮素人に毛が生えた程度だ。

【"トマス”】(人間/戦士)
ミニチュア:アザーワールドミニチュア「人間の戦士
◆トマスは仲間の中で最も謎が多い。素顔を見た者は殆どおらず、名前さえ仲間に好き勝手つけられたものである。山ほど道具を抱えてダンジョンに潜るこの男について判っているのは、名声やスリル、財宝の為にノリと勢いで命を掛けてしまう、「意外と普通の冒険者」ということくらいだ。
 トマスの盾と斧の腕前はかなり正統な、由緒ある技術に依るもので、あるいは彼がどこかの国の兵隊だった可能性を思わせる。その一方で、冒険に関する道具への習熟と多彩な知識は、彼の来歴のちぐはぐさも物語っている。

◆タウンパート~ウィルダネスパート

 このゲームは、タウンパート(街)、ウィルダネスパート(野外)、ダンジョンパート(敵の本拠地)の3つに分かれて進行します。
 一つ一つのパートは複数のイベントで構成されており、四色の宝石のようなトークン「イベントジェム」の、どの色を引くかによってどんなイベントが起こるかが、ある程度の乱数要素を含んで決定されます。イベントをこなす度にジェム山に特定色のジェムが追加されたりするので、その後の運命が分岐していくようなイメージですね。 

「とんだマヌケもいたもんだぜ」と、ディーグリがぼやく。
 冒険の準備の為に街を歩きはじめた矢先スリに会い、依頼人に受け取った支度金の半分を奪われたのだ。
「ディーグリおぬし、主神のご加護が足らんのよ」
 オーリンのボヤキは本気なのか皮肉なのかわからなかったが、その後に立ち寄った露天商の占い師までが彼らに"不吉の影”を予言する始末。
「あちゃぁ。こりゃ、お祓いが必要かもね!」
 フレデリカはおよそ深刻さとは無縁にコロコロと笑い、勝手に占い師に祈祷を頼んでしまった。
「こんなヤツに残りの金を使うのか? お手本みたいな胡散臭さだぞ」
 トマスの言葉に、フレデリカは片目を瞑って微笑んだ。
「まじない屋の助言は、素直に聞いとくもんさ」

 初っ端から赤ジェム(このクエストでは不利イベントが起きやすいトークン)多めに引いて、嫌な予感。
 このあと余所者嫌いの自警団に街を追われてしまい、微妙に準備不足感が漂う中でタウンパート終了、ウィルダネス(野外)パートへ突入することに。

 夜の帳が視界を塞ぐ前に、トマスがたいまつに火を灯した。
「これでお前は良い的になるぞ」
 ディーグリが言うと、トマスは「勇気の証だからな」と返す。
 街を出てから数刻歩き、既に依頼人から聞かされた事件現場に近づいている。いつ、何が出てきてもおかしくはなかった。
 案の定、半刻もあるかぬ内に、暗闇から石礫が飛来し、オーリンの禿頭を捉えた。「いでででで」
 ドワーフの石頭と、戦士達が常備する回復薬で大事には至らないものの、暗闇に何かが潜んでこちらを狙っているのは明らかだ。
「盛り上がってきたわね」と、口元をつりあげるフレデリカ。
「不愉快じゃ、儂ゃァ全く不愉快じゃぞ」オーリンは自分の頭をさすった。

 ミニチュアを並べる「アドベンチャータイル」に書かれた1から12の数字で位置関係が示されるのがこのゲームのユニークなところの一つで、例えばこの罠イベントでは『5に一番近い場所にいる冒険者のHPがダメージを受ける』という内容だったり。HPの低いフレデリカを最後尾にしなくてよかった。

 で、その次のイベントで最初の戦闘発生。
 森の中、謎の敵の待ち伏せを受けます。

「だから言っただろ、良い的だってよ」
「ディーグリ違うぜ。これは狙われたんじゃなく、誘き寄せたんだ」
「はっ、笑える冗談だ」
「アンデッドだなんて聞いとらんぞ!?」
「あら、燃やし甲斐がありそうじゃない」

 敵ミニチュアは、ウォーハンマー用のプラ製イージーキット「スケルトン」を使用。かっこいい骨マンが5体も入ってしかも安いので最高です。

 戦闘の方は、各判定で1か2を出さない限りずっとターンが続くルール。指定が無い限りは味方ターンから始まるものの、とにかく敵にターン移行させないことが重要になりそうと直感。
 近接攻撃の判定はD8、魔法の判定はD20を使うから、じゃあ魔法から使った方が比較的には安全なハズだ!

 というわけでフレデリカの魔法『魔術攻撃』。難易度10から術者のMP1を引いて9以上の出目が出れば詠唱成功!

 フレデリカが半ば反射的に、得意魔術であるファイアボルトを詠唱する。
「とりあえずぶっ放せば良いんでしょぉぉぉ!」

 どーん。
 出目が走ったからってボーナスとかは特に無く、魔法ごとに固定の威力から攻撃の効果『アタックスコア』が算出され、それが対象のHP以上であればダメージが通ります。

 今回の『魔術攻撃』は威力5、そこからこのターゲットのDP(コイツは0だけど)を引いた値が『アタックスコア』となり、このターゲットのHP2よりも高いアタックスコア5なので、1ダメージ与えられました。

 判定の出目が1でも2でもないためターン移行は発生せず、続いて敵に一番近いトマスの行動。
 前衛クラスのスペシャルアクションである『突撃』を用いて、敵スケルトンに隣接します。(これはD8を振って3以上なら成功)
 かーらーのー、近接攻撃!

 出目は5。ですが。
 このゲーム、味方ターンである限り誰が何回でも行動していいものの、同一キャラが連続して行動した場合『連続行動ペナルティ』というものを受け、連続行動回数に応じてダイス出目がー1ずつ修正を受けます。
 なので、突撃から即攻撃したこの場合は出目4扱いになってしまいます。

 とはいえAP2ある戦士クラス、出目4+AP2ー受側DP0=アタックスコア6は、対象の現在HP1を余裕で上回るので1ダメージを与えることに成功。これで、敵1体を撃破。

「フンヌ!」
 トマスの振り下ろした片手斧で、骸骨の頭が真っ二つに砕け割れる。
 すると、残り二体のスケルトンは一目散に逃げ出してしまった。
 その背中を見送って、ディーグリは両手斧を地面に突き立て、嘆息した。
「出番なしかよ。アイツら何がしたかったんだ」

これで、最初の戦闘は終了。最初だけあってマイルドですね。
以降は、本格的に罠や戦闘まみれの物語になっていきます。

続きはまた今度


★ふろく:敵ミニチュアの写真

 ミニオンCとB。射撃攻撃をする設定なんですが、ルール上は投擲武器が射撃に含まれるようなので、彼らはジャベリン(投槍)使いという事で無理やり解決。

ミニオンAとボスA。近接攻撃する敵です。外見の違いは無い()

ボスB。ウィザードという、魔法攻撃ができる種別の敵。
きっと鋭い眼光から怨念が込められた暗黒光線を放ってくるのだ…

もう一体、ウォーロードという種別の敵がいますが、それは次回

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