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鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(要約)

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

はじめに
 昭和30年12月30日、学習院大学山岳部は冬山合宿(鹿島槍ヶ岳)において、天狗尾根隊が4名の遭難事故を起こした。 この遭難は目撃者がいない遭難である。

 12月25日に入山するが、天候悪化により、前日まで強風と激しい降雪に見舞われた。 前日はテントの移設と雪かきに追われ、30日(遭難発生日)にはデポ地から食糧を荷揚げするために行動した4名が雪崩遭難に遭い、テントキーパーの1名が生還した。 当日は、同じ天狗尾根に入山していた専修大学山岳部の4名が安全を求めて下山。 下山時のビバーク中に宮田久男氏が凍死。 この遭難の過酷な状況と、遺族の心情が座談会で詳細に明らかにされた。

遭難の概要
 30日、小谷明テントキーパー以外の4名(鈴木廸明、鈴木弘二、藤原荘一、清水善之)が降雪直後にデポ地に荷揚げに向かい、その後発生した大きな音から大雪崩の可能性浮上。 小谷明は、猛吹雪の中で4名の帰還を待ちながら、大雪に閉じ込められたが、1月1日に下山を始め、登山本部に遭難の連絡を入れた。 4名の遺体発見までに8カ月以上がかかり、8月12日に第10次捜索隊が最後の遺体を収容した。 長期かつ厳しい捜索が終了し、9月22日に学習院で慰霊祭が行われた。 またこの遭難について、学習院内で募金運動が行われ、皇族、学習院当局、父母会、桜友会、常磐会、学生生徒からの厚意により最後の捜索活動まで実施できた。

事故原因の追究
 遭難について、事故原因を明らかにして、そこから貴重な教訓を学ぶ義務が残された者にはあるとして詳細な分析を行った。

1.基本的な知識と危機感の向上
 登山者が新雪表層雪崩の危険性を正しく評価し、それに対する危機感を持つためには、基本的な知識の向上が必要。 特に地形や気象条件から雪崩を予測する能力を養うこと。

2.地形と気象条件の理解
 登山前には周辺の地形を注意深く観察し、急斜面や樹木の有無など危険なエリアを把握。 また、新雪の状態や気象条件の変化に敏感になり、雪崩のリスクを常に評価すること。

3.パーティー情報共有と連携
 リーダーが地域的な気象や雪崩の関係について正確な情報を持ち、登山メンバーとの適切な情報共有が行われることが重要。 経験者でも新たな知識の習得と共有が必要。

4.雪崩予知の情報を活用
 登山前に雪崩予知の情報を確認し、その情報を地元の気象情報と組み合わせて冷静な判断を行うこと。 注意すべき点があれば、それに従うことが不可欠。

5.雪崩予測のトレーニング
 登山者は雪崩予測の専門的なトレーニングを受けることで、地形と気象条件から雪崩の危険性をより正確に判断できるようになる。

6.安全な行動の優先
 判断が甘くならないようにし、遭難のリスクを最小限に抑えるためには、冒険心よりも安全性を優先する態度が重要。 このような安全対策を心掛け、登山者自身が状況を正確に判断できるような訓練や知識の向上が重要。
 また、経験者であっても常に謙虚な態度で学び、危険を冷静に評価できるよう心掛けることが、雪山登山において安全な行動の基本である。

7.形式的責任と実質的責任
 遭難が発生した場合、リーダーは形式的責任を負う。 これは、その立場からくる責任であり、遭難の原因となった具体的な行動についての実質的責任は、グループ全体で共有されるべき。

8.責任の取り方
 責任を取る際には、まず遺族に誠意ある謝罪が必要です。 その後、形式的責任を果たすためには、リーダーの辞任や登山活動の自粛、グループの解散などが考えられます。 実質的責任については、深い反省に基づいた謝罪が求められ、行動や判断ミスについての説明が必要です。

9.法的側面と倫理的責任
 遭難における責任は、法的なものではなく、倫理的なものと位置づけられます。 法的な措置が取られることは少なく、むしろ誠意ある謝罪や倫理的責任の果たし方が重要視されています。

10.事故原因の解明
 遭難が発生した場合、事故原因の解明が必要であり、これを通じて再発防止策が講じられること。 遺族の感情に敬意を払いつつも、原因究明は避けてはならないとの立場が取られています。

11.倫理的責任の取り方
 登山グループや組織は、故人の代わりに倫理的責任を果たすべきであり、原因解明を通じて再発防止の取り組みを具体化することが重要。

詳細な内容は「原文」を参照してください。
「鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)①」へ

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