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韓国相続法の変遷 その1(1912-1960)

相続の場面では、昔の法律にあたらなければいけないことがあります。ですが、外国の法改正について調べることはあまりなく、そもそもいつのどの法律に当たればいいのかという問題に直面しがちです。

韓国人での相続について1912年から2002年までになされたものを調べることがあったので、今後のためにもその結果を簡単にまとめました。今回は韓国併合から1960年の民法施行までの慣習法の時代を取り上げます。

1 韓国併合下

「(旧)慣習法」と呼ばれる(おそらく不文の)法源によります。1910年の併合後、1912年に朝鮮民事令が発令されて日本の民法が韓国にも適用されることになりました。しかし、相続法はこの対象から外されたため、韓国では「(旧)慣習法」という慣習に従った処理がなされることになりました。

なお、その後の朝鮮民事令の改正で、家族法の一部については日本の法律が韓国でも用いられるようになりました。たとえば、1921年には親権、1922年には裁判離婚、認知、1939年には裁判上の養子縁組の解消、婿養子縁組の規定が韓国でも適用されるようになっています。

2 第二次世界大戦の終結後

 (旧)慣習法がひきつづき適用されます。当局は1945年8月9日時点で適用されていた法律が戦後も適用されるとの法令を公布しました。したがって、1と同様、第二次世界大戦の終結後も、韓国の相続は旧慣習法によります。

この朝鮮民事令と(旧)慣習法に関して、私はまだ十分な文献を見つけていません。李氏朝鮮や大韓帝国まで遡るのはあまりに骨でした。ただし、次の論文にその内容について若干のヒントがあります。
  青木清(1995)『韓国相続法上の若干の問題』

韓国には、21世紀初頭まで、「戸主」という身分を相続する制度がありました。戸主を相続した者には、家の統率者として他の相続人よりも多くの権利が認められます。戸主にはそもそも他の相続人より多くの相続分が認められますし、一度戸主がすべての財産を相続してから、他の相続人に「分財」として財産を分け与える制度になっていたようです。

3 まとめ

1960年の民法施行まで、韓国の相続は旧慣習法に基づいて行われていました。次回の記事では、1960年の民法施行から戸主制度の廃止までについて(書く元気があれば)ざっとまとめる予定です。


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