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「戯れ言」雨が降る


「生ひ立ちの歌」         中原中也

   Ⅰ

  幼少期
私の上に降る雪は
真綿のやうでありました

  少年期
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました

  十七〜十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました

  二十〜二十二
私の上に降る雪は
雹(ひょう)のようかと思われた

  二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪と見えました

  二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……


   Ⅱ
私の上に降る雪は
花びらのやうに降ってきます
薪の燃える音もして
凍るみ空の黝む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差し伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額に落ちくもる
涙のやうでありました

私の上に降る雪は
いとねんごろに感謝して 神様に
長生したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました



今思えば、さして中原中也が好きだったわけでもなく、ただその音の響きの良さに憧れて読んでいた。
今夜の豪雨に美しかった日本の四季は、何処へいってしまったのだろう…
と、ふと思い出した。

真綿のような雪には音がない音があり、雨には沢山の音がある。
しとしとと私を泣かす雨は、もう降らない。
ザァーザァーと雨飛沫を上げたり、
ゴーゴーとアスファルトの地面に叩きつけられる雨が降る。

情緒や風情は何処へ消えていってしまったのだろう?
便利になった時代だけど、私が幼い頃には、もっと雨には表情があったはず…

そんなことを思いながら、ビニール傘を開いて駐車場へ急ぐ。
ああ、
私にも風情の欠片もないな(苦笑)

もともと、そんなもの
持ち合わせていなかったか(笑)
雨は降りしきる。



今に切ないって感情も無くなるのかも…


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