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愛してやまないマンガの話

人生最初に読んだマンガは「ベルサイユのばら」でした。

”いつもsannaは本ばかり読んでるから、たまにはマンガでも読んだら?”となぜか父が古本屋で買ってきたのです。って、それは私が幼稚園時代のことだったのだけれど、父は研究職でマンガなど全く読みもしないのに、なぜ幼稚園児にそんなものを買ってきたのか今でも理解に苦しみます。

とはいえ、私はそのマンガのキャラクターに夢中になったのです。

フランス革命前、華やかなドレスで着飾った貴族たちやマリーアントワネットではなく、ドラマティックな運命に翻弄される美しく凛々しい男装の麗人、オスカルの姿に。。

その頃から戦うひとが好き、というのが今でも続く私の嗜好。それゆえ、男性向けのマンガに偏った読み方をしています。

小学生になると、マンガとドリフターズを毛嫌いしていた母に隠れて、図書館に置いてあった手塚治虫の名作などを読み漁る日々。小学校高学年以降は自分のお小遣いで花とゆめを購入。愛読していたのは「スケバン刑事」と「ブルーソネット」その頃から色恋を描くマンガにはほとんど興味がなかったらしい。あ、その時代の少女マンガだと「ホットロード」「僕の地球を守って」「ガラスの仮面」も良かった。

成長するにつれ、その時代時代の多くのマンガを読み続けてきたけれど、モノを沢山もつことが苦手なので、引っ越すたびに沢山のマンガを処分してきてしまいました。中でも、AKIRAと風の谷のナウシカを手放してしまったことは今でも悔やまれます。

今は本当にいい時代!

紙質にこだわったマンガは紙で買いたくなるけれど、殆どのマンガはKindleでいくらでもデータを持ち、いつでも読むことができます。

おまけに大人になったので(笑)マンガ代くらいは惜しまず使えます。

定期的に週刊誌に掲載されているマンガの新刊を買うのに忙しいのだけど、金曜の夜にゆっくり半身浴しながら新刊を読むのが最高の楽しみの一つ。

前置きが長くなったけれど、今どうしても5つ好きなマンガを選ばないと100日後に死ぬ、という位のプレッシャーの中で5つに絞ってみました。

本当は愛するマンガは100くらい余裕で出てくるのだけど、今回の選択において個人的な縛りとして

・完結している

・広い家に引っ越したら紙で買いたい(あるいは既に紙で持っている)

・その作者の作品複数が好き

・社会現象的ヒット作品は除く

の4つで絞って見ました。

まず1つめ。

1.竹光侍

表紙の見た目からして、時代小説のような、マンガらしくない印象のこのマンガ。松本大洋先生の名作でございまする。

江戸時代の長屋に突如訪れた侍と周囲の人々とのあたたかな関わり。徐々に明らかになる侍の過去と迫り来る血なまぐさい出来事の数々。そしてそれらと関わりながらも、どこまでも心優しく強い主人公の在り方と所作の描かれ方が美しい作品。

これはマンガという域を超えてアートです。キャラクターの描き方ひとつとっても、思いきり遊ぶように、飛ぶように、心の赴くままに。文字通り筆を滑らせて描かれているのが、見ていて心底気持ちいい。人物をこれだけデフォルメしてなお、構図の完成度の高さ、凄いです。

同じく松本先生のSunnyも名作で大好きな作品なので迷いましたが、竹光侍は素晴らしい原作をベースに画作に注力されているせいか、マンガ表現の新境地を感じたのでこちらを選びました。

2.孤高の人

こちらは坂本眞一先生による山岳漫画です。2010年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門 優秀賞を受賞しました。新田次郎による同名小説が原案となっていますが、物語は現代版に置き換えられ、大きく異っています。

坂本先生は連鎖当初から高い画力が特徴ですが、序盤と比較するとラストにかけてかなりタッチが変化(個人的には進化に感じる)していきます。それがまた主人公の精神的な成長とリンクしているように受け取れるところが不思議な魅力でもある作品。

クライミングに取り憑かれた青春時代の人間模様から、本格的なチームでのアタックを経て、物語のラストの単独登坂では誰も陥れたことのないK2東壁登頂を目指します。

このクライマックスにおける心象表現はマンガの新境地ともいえ、度肝を抜かされました。高度障害に陥った時の主人公の脳内の錯乱や葛藤が緻密かつ計算され尽くした描写で描かれています。それらはまるでCGと合成された映画のような美しさと現実感を持って迫ってきます。また、ラストは当時起こった3.11の影響を色濃く受けた象徴的な描写が胸を打ちます。

マンガの読後、原作小説も読み、山に取り憑かれた人たちの気持ちが少しだけわかった気がします。文字通り命懸けで山にアタックするのですが、そのプロセスがとても興味深いのです。

クライマーは1g単位で荷を厳選し、事前のトレーニングもアスリート同様に過酷なものです。身体もメンタルも極限まで鍛え上げてアタックする。万全の準備を期しても自然の気まぐれに翻弄され、それでも命をかけて頂きを目指す。その姿の美しさたるや。。と感じ入りました。

ちなみに、原作の主人公も含めて、このマンガの各巻の最後に紹介される著名なクライマーの殆どが山岳事故で亡くなっております。。

山岳マンガでもう一つ有名な”岳"の主人公は”孤高の人”の主人公と対極にあるような人物像。山岳救助を生業とし、山や人への関わり方も肩の力が抜けた、それでいて軸のある空気感を持っています。ストーリーも明るい描かれ方なのですが、ラストがシリアスでモヤってしまいました。とはいえ、こちらも名作なのは間違いありません。

3.銃夢

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舞台ははるかな未来。小さくて可愛らしい外見のサイボーグ、ガリィちゃんのなんだかんだあれど最強&無双ぶりを楽しめる、日本が世界に誇るSF叙事です。

全部で3シリーズ、計28巻に渡る大作なので、なかなか踏み出し難いこのシリーズ、ぜひGWにTSUTAYAで借りて読むのをお勧めします。また、アリータ バトルエンジェルというタイトルでハリウッドで映画化もされているので、ざっくり世界観を知るにはそちらも良いかと思います。

最近シンギュラリティについて見聞きすることが増え、このマンガの主人公のように人間の体の大半が機械に置き換わり、脳もチップにデータとして保存され永遠に生きることが可能である。そんなことも可能なのでは?と本気で思えてきました。

そんな妄想を多くのクリエイターが描いてきたのですが、銃夢の設定は特に広く深いと思います。これだけの妄想を30年も前からビジュアルとして繰り広げられてたって凄い!

4.ORIGIN

Boichi先生の緻密で圧倒的な画力にまず惹きつけられたこの作品。読み進めるとオリジナリティの高いストーリーもキャラクターの魅力度も最高。 

Boichi先生の作品はエロ&バイオレンス高めのものも多いですが、この作品はエロ度抑えめで女性にも読みやすいかと思います。個人的には人の身体の美しさがシンプルに好きなので、Boichi先生の描く女性の表現はとても魅力的です。

近未来の2048年の日本が舞台。天才科学者が作り出した、人間に限りなく酷似したロボットと対立するロボットとの闘いを描いた傑作です。手塚治虫先生の作品の時代から、ロボットと人間の共存をテーマに沢山の作品が描かれてきましたが、これほどロボットの感情の機微を切なく深く、熱く描かれたマンガは無かったのではと感じます。途中で涙した作品でした。

こちらの短編集もオリジナリティが高いストーリーが秀逸。

正直、ORIGINはまだまだ続きそうだったのに、ジャンプでBoichi先生が作画担当されている" Dr. STONE”の連載のためにこちらを終わらせたように感じているのは私だけでしょうか。。もっと読みたかったーー!(涙)ラストの流れからして、いつか続編があると勝手に信じて心待ちにしております!

5.To-y

上条淳士先生のスタイリッシュな作画に衝撃を受け、To-y沼にどっぷりハマった中学生の私。。今見ても全然古くないし、むしろこの色使いのセンスと余白を活かした構成に改めて感じ入ってしまいます。

音楽業界でオトナの世界をかき回す主人公たちが年齢のわりにオトナすぎ、カッコよすぎな設定で、田舎で中高生活を送っていた私には刺激が強すぎた作品。

また、マンガという媒体で、音楽をここまで臨場感溢れる表現にできるのか。。と衝撃を受けました。文字を追わせるのではなく、人物の表情や背景によってライブシーンを描き、読み手が脳内でのライブの音を想起させられる。そんな作品です。

一コマ一コマがイラストレーションとして完成されているような美しさ。上條先生の拘りに震えます。

上條先生の"SEX" は紙の本で持っている数少ないマンガのひとつ。

この作品はストーリーがどんなにバイオレンスに流れていても変わることなく、その空気感は美しく、切なく、どこか乾いている。それにしても出てくるキャラクターが皆さん美しいのですよね。。うっとり。

いやー。。珠玉のマンガたち。紹介文を書いているだけで幸せな気分になりました!


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