算命学余話 #G45 「従生格を眺める」/バックナンバー
食品開発の分野では、味覚を数値として計測できるセンサー装置が活躍しているそうです。それによると、人間の味覚は甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の五味を感知し、それらの配合によって美味いかまずいかを判断していることが判ると言います。しかし美味いと判断される配合とは五味のうちの2~3種類の味の組合せがほとんどであり、五つの味すべてが混ざり合った味というのは美味しくないと判断されている。なお「辛味」というのは科学的には味ではなく「痛み」だそうです。辛い食べ物は痛覚を刺激しているのであって、味覚とは関係がない、辛い物を食べて美味しいと感じるのは、痛みを快感と捉えるマゾヒズムに過ぎない、ということです。なるほど。
五味すべてが揃ったからといって美味しくなるわけではないというのは、何となく納得できます。算命学は陰陽五行で世界を把握する学問ですが、五行のバランスが宇宙の均衡を保っているという総体論は理解できても、実際には身近に存在する五行は偏っているものです。
象徴的なのが、陽占人体図です。人体図には十大主星の座す場所が五つあり、十大主星に属する「五行×陰陽」すなわち10種類の星々の中から五つの星がここに座るわけですが、その星が五行すべて揃っている人というのは珍しいです。大抵は五行のうちどれかが欠けていて、バランスを欠いているけれども、そういう人間の方が普通なのです。人間とは、概ねまん丸ではなく、デコボコと偏った人格なり価値観なりを持って生まれるものだ、ということを人体図は語っています。
そして、ここがポイントなのですが、星の偏った人間の方が実は魅力的です。なぜならカラーがはっきりしているからです。五行が揃った命式だと性格はぼんやりと曖昧なものになりがちで、人間関係も円滑といえば円滑ですが、八方美人的になりやすい。誰とも付き合うことができるけれど、その実誰とも深く付き合えない、という弱みになるのです。逆に星の(五行の)種類が少ない人は、好き嫌いがはっきりしていて気難しいかもしれないが、キャラが立っていて、ポリシーがあり、人から大いに嫌われることもある反面、心酔されることもある。
ファッションに喩えてみましょう。色が系統立っていないカラフルな服というのは、ガチャガチャして目が落ち着かないし、互いの色を打ち消し合うので綺麗にも見えません。しかし青系とか茶系とかモノトーンなどといった同系色のファッションは、統一感があって美しく見える。更にその同系色の色彩の中にワンポイントで遠い色が差し込んであると、自然とそこが際立つ。コントラストがはっきりするからです。但し、その青系なりモノトーンなりが、見る人にとって好ましい色味でない場合には、全体からして許しがたい色彩ということになります。人体図における星の偏りとは、このように「すごく好まれ」たり「すごく嫌われ」たりする。しかしそれは一種の魅力と言って差し支えないでしょう。
冒頭に味覚の話を出したのは、こうした偏向と均等にかかる算命学の視点を裏付けるものだったからです。元より算命学ではこの世のあらゆる物質なり現象なりを五行に振り分けており、五味もそれに対応しております。五味だけでなく、五臓や五官、五徳や五情、果ては指が五本あることに至るまで、五と、それに陰陽を掛けた十という数によって世界を表現できると、算命学では考えています。
この話は突き詰めると宇宙空間そのもののように果てしなくなるので、この辺りで切り上げて、今回の余話は上級技法の一つである「従生格(じゅうしょうかく)」を取り上げてみます。「〇〇格」という名称は格法という技法に属し、雑誌の占いコーナーに掲載されるような算命学のウンチクとしてはまず取り上げられません。なぜなら算命学をある程度知っている人でないとチンプンカンプンな内容だからです。
『算命学余話』は入門者向けではなく、基礎知識を備えた中級者から上級者向けの読み物ですので、上級技法を解説するのに基礎的説明は省きます。『算命学余話』をこれまで読み続けてこられた読者には難しくない内容ですが、初級者には不親切な解説になりますので、予めご了承の上購読下さい。
「従生格」をテーマに選んだのは、これが冒頭の話のような「偏った」星並びだからです。そして偏っているからこそ強運であり、大変珍しく、大いに魅力がある、という点について論じてみます。そして、『余話#G43』で触れた「上格か下格か」という話も関連してきます。
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