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2023 大暑 桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

季節の果物を食べる。

実家の夜ご飯は18:30からで、小学校低学年の頃は21:00までに、高学年になってからは22:00までにお風呂を済ませて寝室へ行くのがルールだった。だから、お風呂の前後は唯一のテレビタイムで、そのテレビのお供はいつもデザートで。

この時期だと、スイカにメロン、桃に……と。母が果物好きなのと、祖母がしょっちゅう箱で果物を送ってくれていたので、旬と呼ばれる時期の果物はいつも冷蔵庫に入っているもんだと思って過ごしてきた。

祖父母の家を出て寮生活を始めたころになってやっと、果物は嗜好品だということに気付いて。ただ高いというわけではくて。なんというか、お値段するのに当たり外れが大きいよなって。

幼い頃はその価値を理解していなかったので、なに食わぬ顔で「これは甘いねぇ。アタリだねぇ」とか「これは味しないねぇ。ハズレだねぇ」なんて大きな口を叩いていたけれども。当たればラッキーだけど、外れたときのショックがまぁまぁ大きい程度には嗜好品だと思うようになってしまった。

だから「これはお買い得だ!」と思わない限り自分ではなかなか果物を積極的に買えなくなってしまっている。年々と。年々とケチになっている。

と言いつつも、この夏はちゃっかりと、さくらんぼも、桃も、メロンも、スイカもお腹に収めてしまった。これはもうほぼ全部、お茶の先生のお宅を尋ねた日のことで。

お茶と共にいただくお菓子には、練り切りとか和三盆とか王道のThe和菓子もたくさんあるけれども「水菓子」というお菓子がありましてね。これは、果物のことなんですよ。


お茶のお点前というのは、上のお稽古に行けば行くほどお菓子の数もどんどん増えていく。わたしは全部甘いものでももちろん良いのだけれども、これまたお作法でそういうわけにもいかず。わたしも、ちょっとずつ上のお点前を。そうじゃないときも、お姉様方の誰かが上のお手前をされるので、お相伴に預かって水菓子をいただく。

そのたびに

「今シーズン初メロンです!」
とか
「今シーズン初スイカです!」
とか毎回わたしが喜ぶもんだから、先生も「次回も水菓子を用意しておきましょうね」と笑いながら用意してくださっている。嬉しい。ちゃんと言葉にして伝えてよかった!(図々しさの極み)

季節の言葉を、お菓子を、果物を、食べ物を、装いを慈しむこと。それらにじっくりと向き合う時間を作る時間を、楽しむこと。そういう時間を月に3度。

実家を離れて、毎晩のテレビタイムに……なんて優雅なことは言っていられなくなったけれども。それでも月に3度、お月謝をお渡ししてそういう時間を大切にしたい。

そう思わせてくれたのは、幼い頃からお祭りには浴衣を、クリスマスには教会へ、氏神様へ初詣に行って、季節のものを食べて……そういう経験を積み重ねてきたから。それらを全部、当たり前のように経験させてくれたうちの母はとてもすごいなぁと思うし、大人になった今もお茶の先生に「うちの娘だから」とニコニコしながら季節のあれこれを経験させてもらって。本当にありがたい。

そうやって、わたしもきっと、誰かの季節の経験に一役買えるようなオトナになれているかしら。そうだったらいいなぁと思いながら眺めた今日の夕焼け空が、とんでもなく綺麗でした。

夏の空、淡くて綺麗な色をするよね。

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