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【筆談のススメ】聴覚障害者がレストランでの食事をさらに楽しむためには?

聴覚障害者が聴者とレストランに行くときに、どんな工夫をしているか知っていますか?

聴覚障害者と一緒に食事に行くとき、お店に聴覚障害者が来るとわかったときに、どんな対応方法があるか知っていると、お互い気持ちよく食事の時間を過ごすことができますよね。

聴覚障害当事者のわたしは、いつも「筆談」をしています。誰にでもできるけれど、ちょっとした心配りと準備があるだけで、さらに周りがあったかい気持ちになれるのではないでしょうか。

聞こえる友人と一緒だからこそ、「筆談」を

幼稚園から大学院まで一貫してろう学校を経験せず普通校で育ったわたしの友達は、「きこえる」相手が多くなります。するとやっぱり、休日にちょっと遊びに行こうと誘い合う相手も「きこえる」聴者の友人になりがちで。

「それじゃあ、いつでも聴者に通訳してもらえるね」なんて周りから言われることもあるけれど、あらかじめ料理の説明がたくさんあると分かっているレストランでは話が別。できる限り自分から店員さんに「筆談」をお願いしています。

この「筆談」をお願いすることで、聴者の友達・店員さん・わたしの3者での会話がぐっと増えてとっても楽しくなったので、今回はこのnoteで紹介していこうと思います。

「情報保障」って?〜わたしの場合〜

わたしたち聴覚障害者は、音を聞き取ることに不便があります。
そのため、情報を入手するにあたり必要なサポートである「情報保障」をお願いする必要が出てきます。

わたしの場合は、

・補聴器を活用することで、ある程度の音声を認識できる
・慣れた相手であれば読唇ができる
・日本語で筆談ができる
・手話でのやり取りができる

以上を踏まえて、読唇・文字通訳・手話通訳の3つの方法を情報保障としてお願いすることがあります。

読唇は、相手の口の形を読み取る方法です。

カフェラテの注文時に「アイスですか?ホットですか?」なんて聞かれることがよくありますが、これくらいの一言二言の内容であれば聴者の友達に復唱してもらうことが多いです。

難点は、男の人に復唱してもらうと
「この彼氏、なんでも自分から彼女に了承取りに行くんだな。めっちゃ尻に敷かれてるじゃん」
と思われる可能性があることですね。
(実際聴者の彼に「僕、めっちゃ尻に敷かれてる彼氏って店員さんに見られているんだろうな」と笑いながら言われた過去、アリます笑)

文字通訳は、いわゆる筆談です。

メモ帳などを使って「アイスですか?ホットですか?」と尋ねてもらって指さしをしたり自分のメモ帳に「アイスでお願いします」なんて書いたりしてやり取りをする方法です。

文字通訳の難点は、時間がかかることですね。

手話通訳は、文字通り手話を使った通訳方法です。

一語一句漏らさずに通訳できるのが良いところ。

難点は、とにかく手話ができる人が少ないこと(笑)

情報は知りたい。でも、友達との時間を大事にしたいから

わたしが本格的に情報保障を受け始めたのは、大学生のときです。
大きな教室で行われて板書の少ない大学・大学院の講義を受けるために、お願いしはじめました。

その時、大学の職員さんから口酸っぱく言われたことが

「情報保障をする学生の講義に参加する権利」を大切にしよう

ということ。

もし、同じ講義に参加している学生に情報保障を頼むと、その学生は先生の話を漏らさずわたしに伝えることに必死になります。

すると、その学生が聞きたいと思っている話に集中することができなくなってしまいます。そのため、情報保障はその講義に参加していない学生に頼むことが鉄則でした。

大学時代の経験から、聴者の友達も「会話」というサービスにお金を出す場に行くときには、できるけ情報保障を求めないように意識しています。

店員さんに筆談を頼むと、わたしも会話に参加できるようになった

先日、友人と旅行をしたときのこと。いつものように宿泊先のフロントで

わたしは耳がきこえにくいです。食事の際の料理の説明は、筆談でお願いします。

とメモを渡しました。


次々に出てくる料理の説明が文字情報としてもらえることで、中米旅行のときに食べて以来の「ユカ芋」に出会えるなんてエピソードも。

一緒に行った聴者の友人は中南米に行ったことはなく、当然ユカ芋の存在も知らなかったとのこと。文字として情報をもらえたからこそ中米旅行の思い出話にシェフと盛り上がって、友人とも旅の思い出話をできたのではないかなと思っています。

もちろん食べながら店員さんの言葉を復唱していたら食べる手が止まってしまい、あたたかい食事も冷えてしまいます。そして、単純に友達の負担感が大きすぎます。お互いが会話の中から食材や料理を楽しむためにも、筆談を頼んで良かったなという思い出です。

筆談は、できるだけ早いタイミングで頼みましょう

聴覚障害があるわたしたちにとって、筆談は情報を知るための権利!
すべての飲食店は、聴覚障害者のために筆談をするべき!
筆談に対応してくれない飲食店は、悪!

みたいな当事者の意見、実は見たことがあります。それも、何度か。
でも、わたしはちょっと違うんじゃないかなと思っています。

先ほど紹介したお宿も飲食店も、わたしたち以外にもたくさんのお客さんを相手にしています。あたたかい料理をあたたかいうちに、そのお客さんのタイミングに合わせて提供していく。その中での「筆談」はイレギュラー案件になるわけです。

そんな中でお願いをするのだからこそ、店員さんにも猶予の時間が必要になるのではないでしょうか。

お宿だったらチェックイン時、レストランだったら入店時、いや、本当は予約の時点で伝えられたらお店の方々にも検討の余地があるのではないかと思います。

お客さんだから筆談をしてもらえて当たり前なのではなく、一緒にお店の空間を作る一員として、自分が店員さんだったらどんなタイミングがいいだろう、と考えることは大事かなぁと思っています。

(もし読者の方の中で飲食関係の方がいらっしゃったら、どのタイミングでの依頼が良いのか教えてくださると嬉しいです!)

「筆談」で使えるオススメグッズ

聴覚障害当事者も聴覚障害のあるお客さんを迎えるレストランにも、使いやすい筆談グッズがあったら重宝しますよね。最後に、わたしが今まで使ってみたオススメの筆談グッズをいくつか紹介します。

・iPhoneのメモ機能

iPhoneは常に携帯しているので、すぐに出せるという点で重宝しています。ただ自分のiPhoneにお互い打ち込むため、よく分からない単語や漢字が出てきたときに尋ねにくいのがデメリット。あと、ご高齢の方には読みにくそうです。

・音声認識アプリ「SpeechCanvas」

様々なアプリが出ていますが、SpeechCanvasは操作がシンプルでとても使いやすいです。さらに、インターネットがつながらなくても音声認識してくれるので、電波の届かないところ、災害時なども安心なのがポイントです。

・メモ帳

カバンに、ポケットにすっと入れておける便利なサイズのメモ帳。特に海外旅行に行くときは絶対にこれです。英語とか数字は、打ち込むよりも書いた方が早いと思っています。また、書いたものを破いて渡すこともできるので何度も読み返すことができます。

・電子メモパッド

おもしろがって書いてくれる人が多いから、聴覚障害当事者としては、話題提供のひとつとしても重宝しています。ペーパーレスで環境にも優しい。あと、書いたものをすぐに消せるので個人情報とかも描きやすいです。

まとめ

聴覚障害者がレストランでの食事をさらに楽しむには、「筆談」がオススメです。

もちろん聴覚障害者の中には日本語が苦手な人、読唇が難しい人、はたまた初対面の聴者の音声を聞き取れたり読唇ができたりする人と様々な人がいます。聴覚障害の種類についてはこちらにまとめているので、気になる方はぜひご覧ください。


「筆談」という武器を持つことで、音の世界と音のない世界が繋がっていける瞬間が少しでも増えたら嬉しいです。


✂︎筆談で音の世界とつながることのできたエピソードは、こちら✂︎
・ きこえにくいからこそ、「そこに行きたい」ただそれだけの理由で空を飛べるのかもしれない。
・ユカ芋と再会した日

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