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解く

私は人の心が和らぐことを「リボンが解ける」と言ったりします。

リボンが解けるところを見るというのはなかなかに楽しいです。初めて出会った頃は全然笑ってくれなかったのに最近はくだらないギャグで笑ってくれたりするのを見ると、私の心まで一緒に解けてくれる気がするからです。

そしてこんなことを言うのはおこがましいですが、私が絡まったリボンをほぐす作業も好きなのです。態度の悪いお客さんに優しく接して最終的に笑顔で帰ってもらうこと、疲れている親を労ってぐっすり眠ってもらうこと。解けた真っ直ぐのリボンには、変え難い何かがあります。そこに結んだシワがついているとまた、アイロンがけのような作業をしたくもなります。いわばお節介です。
このような行動を通して、私の分のリボンまで解けたらいいなと思ってやっているのです。

そんなまどろっこしいことしないで、大人しく助けてよと叫んだら手っ取り早いじゃないかと思いますか。私もそう思います。
でも「リボンを解いてくれてありがとう、今度はあなたの分も解いてあげるね」と言われてしまうと、どうも「必要無いです」と言ってしまいます。

想像してみてください、リボンを解くというのは、その絡まりが複雑であればあるほど難しいですよね。そして絡まりを解くには、一瞬新しい絡まりができることを我慢しなくてはなりません。そして絡まっている部分が多ければ多いほどそれは膨大な数になり、かける時間も増えるでしょう。


ですから私は新しく絡まりができるくらいなら、いっそのこと、ちょんぎってくださいと言っているのです。

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