見出し画像

食料自給率ってなんなのさ

ちょっと手を休めているつもりで10ヶ月も間が空いていました。

事あるごとに「日本の食料自給率をなんとかしないとね」と言われます。
屈託ない笑顔でディスられる気持ち、わかりますでしょうか。

この自給率問題の厄介な所は、本来信用すべき省庁の(MAFFですが)一次データを元に繰り返し言われているので、常識化してしまっている事です。
(農林水産省「世界の食料自給率」)

が、あえて言います。根拠ありません。
理由を二つ挙げます。

  • 算出方法
    上記、MAFFのデータを見ても分かる通り、食料自給率の計算はカロリーベースと生産額ベースで行います。
    日本は平地が少なく、小規模農業が中心で大規模農業へのシフトがうまくいっていません(別の理由もありますが)。
    なので、大豆や小麦、とうもろこしなど、高カロリーで貯蔵可能な食品は輸入して、日本の風土に適した多品種少量生産の方が効率が良いのです。
    更に葉物野菜や果物など、鮮度の重要な食品は国産が圧倒的ですがカロリーは低いので著しく低く見えてしまいます。
    又、食料自給率の分母は廃棄食品も含みますので、フードロスが多い日本では実際よりも相当低くなります
    生産額ベースにも問題はありますが、それでも日本の自給率は60%を超えています。これって低いでしょうか?

  • 自給率が高い事は国益なのか?
    なぜ自給率が低いといけないのか?
    MAFFでは以下の流れを説明しています。
    1.食料は生きるために必要な特殊な商品である
    2.輸入には不安定要素がある
    3.世界の食料需要は増大している
    4.世界の食料不足が懸念される
    5.不足時の安全保障が必要
    と言うロジックです。

    それぞれにおかしな所はあるのですが、国家を世帯として考えてみましょう。
    日本は植木や丘が多くて小さめのお庭がある、高齢者が多い大家族世帯です。
    家族はほとんどが技術系サラリーマンで、お爺ちゃんが庭で細々と菜園を営んでいます。
    アメリカやオーストラリアの様に、広い庭でロボットが野菜や動物を育てている大規模農家から、食品を買っています。

    ここで日本が若い技術職のサラリーマンを退職させて、みんなで庭で農業を始めて自給自足を目指したらどうなるでしょう?
    自給率は「少し」上がりますが、天候不順や病虫害が発生したらいきなり飢えます。
    慌てて普段から付き合いが薄い、他の世帯から買おうとしても、仲の良い世帯優先になるのは当然です。スポット取引は価格面でも不利です。

    ポートフォリオで考えれば、得意分野にリソースを集中させて不得意分野を分散調達すれば国力も上がるし、リスクも分散できるというのが常識です。シンガポールやドゥバイは食糧増産なんて目指しませんよね。

    なぜ、わざわざ日本の国土にも国情にも合っていない「高カロリー」食品を絶賛人口減少中の日本で増産する必要があるのでしょうか?むしろ少子化にブーストがかかる気がしてなりません。

    現在のロシアを見て
    「エネルギーで揺さぶりをかけている!日本もああなったら危険だ!」
    と捉える人もいるかも知れませんが、逆に言えばエネルギーで依存関係があるから全面戦争に至っていないとも言えます。(今のところ)
    昨年まで日韓が政治的・軍事的に敵国と言える状態まで陥っていましたが、辛うじて繋がっていたのは通商関係でした。中台関係も同様です。

    とかく、国境さえ閉じれば日本は豊かで安全!と言う言説に流れる風潮が強いですが、幻想です。今、日本の食卓に上がっている「日本製食品」の多くは輸入で支えられています。しかも伝統食分野ほど顕著に。

    気が付いたら1,000文字超えていたので、その話は次回に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?