広瀬和生「この落語を観た!」vol.14

7月10日(日)
特別興行「シン・文菊十八番」@上野鈴本演芸場
16時45分開演


7月10日の演目はこちら。

金原亭杏寿『子ほめ』
古今亭始『粗忽長屋』
ダーク広和(奇術)
古今亭圓菊『祇園祭』
林家正蔵『一眼国』
風藤松原(漫才)
古今亭菊志ん『鰻屋』
柳亭こみち『三人姉妹』
~仲入り~
ペペ桜井(ギター漫談)
春風亭百栄『キッス研究会』
林家楽一(紙切り)
古今亭文菊『猫忠』

こみちの『三姉妹』は『短命』の“伊勢屋のお嬢さん”のその後を描く新作。「伊勢屋の婿は短命だ」と噂になり、四人目の婿が来なかったため、お嬢さんは後家のまま番頭と共に伊勢屋の看板を守ってきた、という設定で、短命だった三人の婿それぞれを父とする三人の娘が年頃となり、「三人のうちの誰に婿を取って伊勢屋を継がせるか」を番頭と相談すると、「三人にどんな男が好みで、どんな婚礼を挙げたいか訊いてみましょう」ということになる……という『女性版・片棒』的な展開で、“面倒臭い長女”“派手好きな次女”も面白いが、何と言ってもこみち演じる“伊勢屋のお嬢さん改め伊勢屋の女将”の楽しさが肝。こういう役柄のリアリティが今のこみちの武器と言えるだろう。

文菊の『猫忠』は、クライマックスで三味線に乗せて化け猫が語る芝居がかりの台詞が抜群に上手い! 「なるほど、こう演じるべき噺なのだな」と改めて実感。当代でこれ以上の『猫忠』を聴かせる東京の演者は他にはいないだろう。サゲの台詞の「にゃ~う~(似合う)」を声を張り上げて謳い調子で表現したのも見事。次郎吉と六兵衛のやり取り、常吉と女房、稽古屋の師匠それぞれの人物も巧く描けていて引き込まれた。聴き応え満点の逸品だ。


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