広瀬和生の「この落語を観た!」vol.49

8月27日(土)夜
「集まれ!信楽村」@神田連雀亭

広瀬和生「この落語を観た!」
8月27日(土)夜の演目はこちら。

柳亭信楽『タイムマシン』
笑福亭茶光『二人癖』
~仲入り~
柳亭信楽『首提灯』

長年の研究の末、実験段階ながらタイムマシンを完成させた博士が、助手に時間旅行をさせてデータを取ろうとする『タイムマシン』はネタおろし。年号を入れるとその時代に行けるというシステムのタイムマシンで好きな時代に行っていいと言われた助手は、博士の「歴史の改変は絶対に避けるように」という注意を今イチ理解せず、縄文時代までどんどん遡って現代に戻ってくるまでの時間旅行の中で平安時代に長居をして、とんでもないことをしでかす。この、平安時代での行動の鍵となる“固有名詞”のセレクトが絶妙で、信楽の卓越したセンスを物語っている。助手のボケと博士のツッコミのバカバカしい可笑しさが爆笑を呼ぶ傑作だ。

茶光の『二人癖』は「大根百本つまるかな」で「トントントンと行きたい」のに行かせてもらえないやり取り等、上方落語ならではのハジケた可笑しさ満載。詰め将棋のくだりでの意表を突く展開のバカバカしさと着地点には大いに感心させられた。新鮮に笑わせてくれる素敵な一席。

新作『魚楽師匠』か古典の『首提灯』かを観客の拍手で決める、という過程を経ての『首提灯』は時間の関係で「胴斬り」抜き。田舎武士に喧嘩を吹っかける江戸っ子の「弱いのに虚勢を張ってる」感が強烈で、首を斬られたとわかってうろたえる演技もリアル。こういう笑いのほとんど来ない噺にあえて取り組む姿勢を評価したい。サゲは正蔵の「八五郎でございます」ではなく圓生の「ハイ御免」。

次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

※S亭 産経落語ガイドの公式Twitterはこちら※
https://twitter.com/sankeirakugo