広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.130

4月7日(金)「落語教育委員会」@かめありリリオホール


広瀬和生「この落語を観た!」
4月7日(金)の演目はこちら。

コント(びんずる像帰還編)
三遊亭ごはんつぶ『タテ前さん』
三遊亭歌武蔵『莨の火』
~仲入り~
柳家喬太郎『えーっとここは』
三遊亭兼好『お見立て』

『タテ前さん』は「もしも数十年先の高齢化が進んだ落語協会で寄席を円滑に回すためにタテ前座の権限を極端に大きくしたら」という“もしものコーナー”的な噺。

『莨の火』は上方から八代目林家正蔵が東京に移植した噺で、『稲川』『植木屋娘』などと並ぶ「歌武蔵ならではのネタ」のひとつ。柳橋の料理屋を初めて訪れ豪勢に遊ぶ老人の“器の大きさ”に説得力がある。こうした人物を爽快に描けるのが歌武蔵の魅力だ。

『えーっとここで』は先日の「SWA」でネタおろしした作品だが、前回聴いた時は「新規オープンしたカフェの主人が、なかなか注文が決まらない二人連れの男性客の“世代間ギャップ”話を“メニューにない注文”と受けとってしまう」噺だったが、今回は「客の雑談に出てきたもの」をサービスとして提供する“謎の店主”の噺になっており、結末もまったく違っていて、今回の方が断然いい。不思議な余韻の残る、素敵な噺になった。

兼好の『お見立て』は、喜瀬川が日頃から杢兵衛に会いたがらないのを知っている喜助が気を利かせて自分の判断で「病気で出られない」と嘘をつき、「風邪を引いた」「イボ痔もある」「入院した」「お客様のお見舞いは御法度」というところまで言ったのに「実の兄だっていうことにしろ」と言うので困り果てて、初めて喜瀬川のところに来て経緯を報告、「面倒だから出ましょうよ」と促すという始まり方。そこで喜瀬川は「死んじゃった」という作り話を喜助に伝授する。喜瀬川が言う「杢兵衛に会うくらいなら真っ裸で毛虫の上をゴロゴロするほうがまし」が生理的嫌悪感を見事に表現していて可笑しい。涙は“お茶を使う”型。杢兵衛のトボケた演じ方は兼好ならでは。軽快な演技で新鮮に笑える見事な一席。

次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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