広瀬和生の「この落語を観た!」vol.66

9月29日(木)
「J亭スピンオフ企画24 桃月庵白酒・柳家三三 大手町二人会」@日経ホール

広瀬和生「この落語を観た!」
9月29日(木)の演目はこちら。

春風亭㐂いち『辰巳の辻占』
柳家三三『お血脈』
桃月庵白酒『替り目』
~仲入り~
桃月庵白酒『つる』
柳家三三『高砂や』


J亭スピンオフ企画24 桃月庵白酒・柳家三三 大手町二人会


㐂いちの『辰巳の辻占』は三遊亭兼好の型。なのでサゲは「生まれ変わったんだから、はじめまして」。

三三の『お血脈』は地噺ならではの“脇道に逸れる楽しさ”に満ちた一席。肩の力が抜けて悠々と“おはなし”をしている姿には、一皮むけた今の三三の“円熟の境地”を感じた。

酔っ払った亭主の面倒臭さが笑いを呼ぶ『替り目』は“白酒で聴きたい噺”。「飲めないの!」「お前は俺か?」や「大根と玉子とコンニャク」のくだり等々、女房と亭主のやり取りが最高だ。白酒は『替り目』を途中で切らず必ずサゲまでやるが、後半に突入してからのうどん屋を相手に絡む亭主の面倒臭さがまた秀逸。義太夫流しが来る意外性も楽しい。

『つる』は軽い滑稽噺の面白さを会話の妙で見事に膨らませる白酒の“落語の上手さ”が如実に表われている一席。「普段から高慢なツラしてる隠居は嫌われ者だから誰も行きたがらなくて、じゃあジャンケンで決めようってことになってイヤイヤ来たんです」と隠居に言ってしまう八五郎の真っ直ぐな軽さが愛おしく、作り話を教えて照れまくる隠居も可愛い。「メスはどうした? 黙って飛んできたのか?」「撃ち落とされました」とは凄いサゲだ。

続いて三三もまた八五郎が隠居にものを聞きに来る『高砂や』を。「こういう他愛もない噺にこそ落語の真髄がある」ということを白酒と三三が二人がかりで示すかのごとき絶妙のコンビネーションだ。三三の『高砂や』は八五郎と隠居のやり取りを丹念に描いて聴き応えがある。“柳家の了見”を体現する一席。

次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

※S亭 産経落語ガイドの公式Twitterはこちら※
https://twitter.com/sankeirakugo