広瀬和生の「この落語を観た!」vol.48

8月27日(土)昼
「鈴々舎馬るこ・弁財亭和泉 二人会」@ばばん場


広瀬和生「この落語を観た!」
8月27日(土)昼の演目はこちら。

鈴々舎美馬『牛ほめ』
鈴々舎馬るこ『レバ刺し根問』
弁財亭和泉『夏の顔色』
~仲入り~
弁財亭和泉『冷蔵庫の光』
鈴々舎馬るこ『バルブ職人』

『レバ刺し根問』は先生に物事のわけを教わる“根問もの”の馬るこオリジナル作品。この日は落語界にまつわる爆笑マクラが長かったため「鬼に金棒」「ペンギン」「アルマジロ」から「レバ刺しが禁止になった本当の理由」まで。バカバカしさを極めた“馬るこらしさ”満載の一席。

夏休みで里帰りしてくる息子を迎える田舎の両親と里帰りに付き合う家族の“本音”を描く『夏の顔色』は今や和泉の代表作の1つと言っていいだろう。夏限定のネタだけに、ここで聴けて嬉しかった。

買い込んでそのまま賞味期限切れになった食料品や調味料でいっぱいの冷蔵庫の現状を肯定する妻と、そんな妻に猛反発されながらも不要なものをどんどん廃棄していく夫とのせめぎ合いを描く『冷蔵庫の光』は今回初めて聴いたネタ。“あるある”話が満載で共感の笑いを呼ぶ、『女の鞄』系の傑作だ。「自分を信じて、冷蔵庫を信じれば、賞味期限の先の期限は永遠だよ」という妻の台詞に爆笑した。

昨年の“ご当地落語プロジェクト”で作って馬るこの持ちネタとして定着した『バルブ職人』は、過疎化しつつある田舎の温泉地の観光協会に就職した東京出身の若者が源泉を流すバルブの開け閉めの具合で足湯の温度を調節する“バルブ係”となる噺。詳細なデータ分析でいかなる条件下でも温度を一定に出来るように研究したノートを破り捨てて「考えるんじゃない、感じるんだ!」と叱る“バブル調節の達人”の厳しさに挫けそうになる若者だが、地元の人々に励まされ、2ヵ月の山籠もりの特訓で悟りを開いて達人に“真打”と認められるまでに成長する。栗の木への感謝を込める“鶴の型”の儀式がバルブ調節の奥義への扉を開くという設定がこの作品の肝。儀式における馬るこの強烈な“圧”に笑いながら、しみじみと心温まるラストへと至る素敵な噺だ。


次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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