広瀬和生の「この落語を観た!」vol.43
8月15日(月)
「三遊亭わん丈隔月独演会“わん丈ストリート”」@国立演芸場
広瀬和生「この落語を観た!」
8月15日(月)の演目はこちら。
桂枝平『犬の目』
三遊亭わん丈『星野屋』
三遊亭わん丈『干物箱』
三遊亭わん丈『牡丹灯籠~相川新五兵衛~』
~仲入り~
三遊亭わん丈『付き馬』
『星野屋』は某コンクールの規定「11分以内」に照準を定めて構成したもので、無理に短くまとめた感はなく自然に楽しめる。
わん丈の『干物箱』は善公が二階で独り芝居ではしゃぐ件がなく、二階に上がったらすぐに父親から「聞きたいことがある」と言われて俳句の会での巻頭巻軸を一気に答え、無尽のことは聞かれず干物の話になるというスピーディな展開。寄席サイズで使い勝手が良さそうだ。
都内での『牡丹灯籠』通し6公演のうち4公演を終えたわん丈が、ここまでの「通し」で触れていなかった第15章後半での相川新五兵衛宅での経緯を、“相川と婆やの会話”に焦点を当てた演出で『相川新五兵衛』と題する一幕として今回ネタおろし。孝助の身に起きたことと飯島の思いなどが相川と婆やの会話の御中で簡潔に説明され、孝助がお徳と祝言を挙げてから敵討ちに出るまでを、圓丈リスペクトの「バカヤロ、コノヤロ」も交えつつ、ちょっと笑える落語然とした一席にしていた。これを「通し」に付け加えると、より一層わかりやすくなるだろう。今回の口演を基に、整理して磨けば「通し」に必要なピースとして重要な役割を果たしそうだ。
『付き馬』は明らかに桃月庵白酒の型だが、朝飯を食べた後で藤棚に突き当たって花やしきの前を通ってからすぐ鳩に行き、途中の白酒独自のクスグリ(氷冷式サーバー等々)を抜いているのは賢明だ。今年ネタおろししたばかりのようだし、“よく喋る男”の調子の良さにはわん丈の個性が反映されているので、今後やり続けることで“わん丈の付き馬”として磨かれていくはず。
次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!
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