広瀬和生の「この落語を観た!」vol.120

2月22日(水)
「集まれ!信楽村」@ばばん場


広瀬和生「この落語を観た!」
2月22日の演目はこちら。

柳亭信楽『悋気の独楽』
柳亭信楽『イワヌマン』
~仲入り~
柳亭信楽『犬』

『イワヌマン』は立川こしら企画「ご当地落語」で信楽が創作した噺。「話題性はないが住みやすい町」宮城県岩沼市に東京から引っ越してきた三人家族を闇の組織ブラックターンが襲い、幼い息子を奪って悪の手先ツッキーに改蔵しようとするが、岩沼を守る正義のヒーロー、イワヌマンがそれを阻止する噺。何よりも「話題性」が大嫌いなお父さんの言動が素敵すぎる傑作。もっともらしい口調のいい声でバカバカしいことを言うヘンな人、という信楽お得意のパターン。「話題があるのは、悪いことなんだよ。テレビに出てる有名な人たちは、悪いことをした罰として話題になっているんだ」と説明し、ピクニックで「話題性のない単なる交差点」に出掛けるお父さんに爆笑が止まらない。

『犬』は愛犬ジョンを飼い主が散歩に連れて行くのが発端。ジョンは飼い主の言葉がわかるのに飼い主はジョンが飼い主の言動にムカついてる気持ちが理解できず、何を言っても「吠えないの」で片づけられてしまうジョン。犬の性で「面白くねえんだよ、やりたくねえよ」と言いながらフリスビー投げられるとつい取りに行ってしまうジョンだったが、ある切っ掛けで犬だけのバンド“イーヌーズ”を組むことに……。「犬に楽器が弾ける」という奇跡を「訓練」の一言で片づけ、ライヴのカッコつけたMCでロック魂をぶつけても「何ワンワンいってんだよ!」と野次られる可笑しさ。いい声でヘンな台詞を熱演する信楽の演者としての個性が着想を大きく膨らませている好例だ。サゲのくだらなさも素敵。


次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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