広瀬和生の「この落語を観た!」vol.121

2月24日(金)
「和泉の新挑戦! 落語の仮面第三話」(配信)


広瀬和生「この落語を観た!」
2月24日の演目はこちら。

弁財亭和泉『冷蔵庫の光』
林家きよ彦『うちの村』
弁財亭和泉『落語の仮面第三話 時そば危機一髪』

全十話の三遊亭白鳥作『落語の仮面』を毎月一話ずつ演じていく弁財亭和泉の特別月例公演&ライブ。2月24日から配信開始した第3回では『落語の仮面第三話 時そば危機一髪』の他、昨年ネタおろしした傑作『冷蔵庫の光』の完全版。ゲストに彦いち今回の新作派女性二ツ目林家きよ彦を迎えた。

和泉作品の多くは生活の“あるある”を見事に題材にして共感を呼ぶ。『冷蔵庫の光』はまさにその傑作。使い掛けのドレッシングやタレの類いが大量に入っていたり、旅先で衝動的に買った瓶詰が開封したあと忘れさられていたり、野菜室にいつから入ってるかわからない野菜が入ってたり、霜まみれのハーゲンダッツが冷凍庫に埋もれてたり、カラシやタレの小袋を貯め込んだりと、“冷蔵庫あるある”の連続で、妻の言いわけもまたリアル。「冷蔵庫を信じて、自分を信じれば、賞味期限の先の期限は無限だよ」は和泉落語の名台詞のひとつだ。

和泉が「落語の仮面」の第一話と第二話のあらすじを語った後は林家きよ彦が高座に上がって『うちの村』を。田舎の高校を出て東京に来てから十年経つミキが、地元在住の幼馴染みヨーコに東京で再会し「村に帰ってこない?」と言われるが、田舎になんか帰りたくないと拒絶。すると実家から祖母が危篤との連絡があり、帰ってみると、そこにはドバイのような光景が……。

「落語の仮面」第三話は、「前座の仮面」を被って新作を封印していた三遊亭花が二ツ目に昇進、高座で新作を披露してウケていたが、女性落語家を快く思わない大東芸能の大徳寺社長が席亭たちに「花は使わないように」と圧力をかける。師匠の三遊亭月影は「NHK新人落語大賞を獲って一発逆転しなさい」と指示、予選をお姫様バージョンに改作した『時そば』で予選を勝ち上がるが、決勝当日、花をライバル視する女性二ツ目・柳家ミミの陰謀で喉を潰され、お婆さんのような声しか出なくなる。だが花はこの危機を、「婆やだけが出てくる」新バージョンの『時そば』を創作することで乗り越えようとした。高座は成功したものの、大徳寺の圧力で大賞を逃した花。だが世間の声は圧倒的に花を支持。“紫のイモの人”が客席に「花は声を潰されて急遽アドリブで演出を変えた」という事情を広めたことで、SNS上の投票ではブッチギリで花の『時そば』が1位となった……というのが第三話。だが花の前途には様々な暗雲が渦巻いている。気になる第四話は3月31日から配信開始(5月12日まで)。


次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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