広瀬和生の「この落語を観た!」vol.110

12月15日(木)
「鈴々舎馬るこ勉強会『まるらくご爆裂ドーン!』#53」@しもきたドーン(12/13の会をアーカイブ視聴)


広瀬和生「この落語を観た!」
12月15日の演目はこちら。

鈴々舎美馬『子ほめ』
鈴々舎馬るこ『店長の「お」』
鈴々舎馬るこ『三つの願い』
~仲入り~
ホンキートンク(漫才)
鈴々舎美馬『からぬけ』
鈴々舎馬るこ『やかんなめ』

落語協会が毎年行なっている「新作落語台本募集」。2022年の「新作落語台本発表落語会」は11月25日に池袋演芸場で行なわれ、馬るこも審査員の一人に名を連ねた。その応募作品の中で「手を入れれば使える」と思ったに作品をピックアップして練り直し、この会で披露した。それが『店長の「お」』『三つの願い』。

『店長の「お」』は温泉地に旅行した男性二人連れが地元の居酒屋で飲む噺。「店長のおすすめ」「店長のおまかせ」「店長のおめがね」等、美味くてリーズナブルな品々に満足した二人は「この店、“店長の「お」”シリーズが美味いんだ!」と気付いて店長に「他に“店長の「お」”は何かありますか?」と尋ねると……。立て続けの強引な「お」推し連発からのあまりにくだらない展開がいかにも馬るこ好みで笑った。寄席で使えそう。

『三つの願い』は擬古典で、遊廓からの帰りに小塚原の刑場で獄門台の生首に話しかけられた男の噺。生首は“穴熊の源蔵”という悪党で、男に「ある場所に隠した百両をお前にやるから、俺の三つの願いを聞いてくれ」と持ちかける。一つめの願いは「蕎麦屋で蕎麦が食いたい」、二つめは「吉原の馴染みの花魁から起請文をもらって墓に供えてくれ」。だが花魁は「あんな男、嫌いだった」とつれない態度。落胆した生首に「三つめの願いは?」と訊くと、生首は「もういい」と言って百両の隠し場所へと男を案内、するとそこには生首が花魁に約束した、ある物が……。よくできた怪談噺。

馬るこの『やかんなめ』は、やかん頭の武士が頭を舐めさせて女を救っておしまいではなく、そこから大変なことに発展していく。「普通に面白い『やかんなめ』だなあ」と油断して聞いていたら最後にトンデモな展開が待っているという、馬るこならではの演出。こういうことをしなくては気が済まないのが馬るこの真骨頂。こんなバカバカしい展開、馬るこにしか考えつかないだろう。もちろんこれは褒め言葉だ。


次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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