#1 プー横丁の家/ロギンス&メッシーナ【ロック向こう正面】
いままで一番聞いた曲は何だろう?
音楽聴取を量的にとらえたことがなかったので、かなり強引に記憶と結びつけようとすると、どうしても最近聞いている音楽になってしまう。
できれば中1くらいから40年以上聴いている曲が良い。
例えばエアチェック小僧時代のラジカセのフォルムなんかと同時に思い出してみた。
中学当時愛用していたのが、AIWAのダブルカセット、もちろんオートリバース。結局思い出せないので生涯で唯一、番組にハガキを出した曲にする。
高校時代、ヒロ寺平さんがやっていたNHK-FMの番組に、曲のさわりを聞かせて曲名を当てるというコーナーがあった。毎回、楽しみにしていてきょうも簡単だなあ、と偉そうに上から目線で楽しんでいた。
たまたま知っている曲があっただけで、もちろん知らない曲も多々あったのだが。ある時「プー横丁の家」の歌いだしが流れた。曲名はすぐにわかったのだが、私が知っていたのはニッティ・グリッティ・ダート・バンド(以下、NGDB)のバージョン。
でも知っているNGDBとは少し違うような気がした。
静かな始まりだし、イントロのバンジョーが聞こえないような気がしたのだ。半信半疑だったが、ハガキを買ってきて後にも先にも人生唯一の番組投稿を敢行してみた。ペンネームは今もしっかりと記憶している。
あまりにも恥ずかしいので書くのをためらうのだが、“空の上にはシドがある”というもの。音階の並びにかけたのと、さらに夭折したシド・ヴィシャスにささげたPNだったが、今思い出しても赤面してしまう。
1週間後、いよいよ答え合わせのオンエアを聴く。正解は3通程度だったと記憶している。やっぱり少ないなあ、と思いながらあの恐ろしいペンネームが読まれるのを待つ。
ところが正解はロギンス&メッシーナの「プー横丁の家」だったのだ。この時はじめてロギンス&メッシーナ版があることを知るのである。
やばい、間違った!とヘコむのと同時に、えええ?フットルースの人が?デンジャーゾーンの人が?「プー横丁の家」を作った人なの?と、脳天を割られたような、あらゆる角度からの衝撃を甘受する22:30。
ヒロ寺平さんの渋いお声が、私の恥ずかしいPNをのたまう。「続いては、空の上にはシドがある さん、プー横丁の家、正解です、ありがとうございます」と軽やかに読み上げる。
正解にしてくれるんだ、と番組の寛容な忖度に感謝するとともに、座してロギンス&メッシーナバージョンを聴く。
のちに「レコードアワー」で【ウエスト・コーストとカントリー・ロック】という特集を放送したとき、久々にNGDBをちゃんと聞いた。イントロにバンジョーは入っていなかった。
(文・杉澤洋輝)
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