[idea]寒空の下のブルー系コーディネート

肌寒くなってくる季節の変わり目の10月には、夏を引きずりこんだTシャツやシアー(透ける)系のブラウス、防湿性・通気性が高い生地のハーフパンツなどをまだ着ている人たちと、ニットセーターや軽めのトレンチコート、ショールを羽織る人たちとで入り乱れて面白い。

この春夏は、オーバーサイズのトレンドがまだまだ根強くあって、上下とも、その大きな面積をパステルカラーやアースカラー(くすみ系)で存在感をぼかして着るバランスは私の目を引いた。

私自身、40歳目前になり加齢や単なる運動不足から体型崩れが著しく、服に体型を合わせる努力など馬鹿馬鹿しくなってしまって、すっかりルーザーなシルエットだ。そこで、このオーバーサイズ+パステルカラーウエアには大変お世話になった。

パステルカラーというのは実に日本人の肌に馴染みやすく、色合わせを悩まなくてもすんなりおさめる力がある。とりわけピンクの功績は大きい。

青ではなく黄味の強い赤に、大量の白を混ぜた色。色味を落ち着かせるために、ごくごく僅かな黒が入っている。

ピンクべージュ、オレンジベージュとも言う。

肌に反射すると、血色がよく見える。

鏡越しにみるピンクベージュを身に纏った姿は、調子が良さそう、機嫌が良さそうに見える。

浮き出てきた血管も愛らしく、増えるシワは緩和して見える。

生活の疲労感を漂わせやすいマダム層にピンクベージュは強い味方だ。落ち着きと余裕を強調してくれる。

じゃあ、ブルーやパープル、グリーンなどの寒色系はどうなのか。

寒空の下で、冷たい水や海を想起させるカラーはパステルにしたところで寂しさを醸し出してしまうのか。

雑誌の特集どおり、毎度おなじみのミリタリーやタータンチェックで秋冬仕様にすることが健全なのだろうか。黒・ブラウン・カーキなどの深い洞穴のようなカラーや、テラコッタやコバルトブルーといった何か権力を象徴するような強いカラーで身を守りたくなるのは自然な反応かもしれない。

しかしそれは、服を買うしか手段がないという人たちが、売り場にある服を買うから、街全体がそういうカラーで埋め尽くされるのであって、意図して着こなしている人は少数なのではないかと推測する。

街のカラーはまだまだ個人の思考によるものではなく、企業や業界のコンセプトによるものだと。

もし東京の街の人々半数が、肌寒い日にパステルカラーを見に纏っていたらという想像をしてみる。

個人個人がファッションを楽しんでいる冬世界。

年末に向けて張り詰める空気にちょっと間が抜ける。

寒さに身を縮こませていた筋肉の緊張が幾分解ける感じ。

自由。

その中に、寒色系の装いをしていても何も違和感なくいられる気がする。

装いを楽しんでいる余裕のあらわれとも言える。

寒色系のコーディネートならボリュームで遊べる。暑苦しくならないし、目障りな感じにもなりにくい。

タイトにしないで、ボリューミーに構成を考えても全体バランスは崩れにくいのではないかと。

立体的なボリュームを出すアイテムといえば、ファー(昨今では高品質のフェイクファー)、レース、ビーズ、ジュエリー、パール、フリル、リボン、ギャザー(生地を贅沢に使う意味で)、サテン、レザー(光沢をもつものは立体感を感じさせやすいという意味で)…。

シンプルを突き進めて、これらの装飾なんて使わなくても、生地のカッティングと縫製でボリュームは出せると思うが、選択肢として覚えておいて損はないはず。

この冬はそんな実験をしてみたくてウズウズしている。














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