あらあらかしこ1
波津彬子著
舞台は明治末から大正あたり。小説家の書生として働く青年が主人公です。
小説家高村先生は独身で、もと武家屋敷だという広い家に猫と暮らしています。主人公の深山君は、隠居するという小間使いの女性に代わってこの家の家事をすることになったのです。彼は先生の原稿の清書も行うのですが、そのなかで不思議な手紙を読むことになります。
細い線できりりと描かれた草木や花が美しいです。古い時代の台所道具も細かく書き込まれています。
作中の猫の置物などは、読み返す度にじわじわと味わい深くなっていく気持ちがします。
そして先生宅の猫、盧染さんがいい味を出しています。盧染という名は盧染(はじぞめ)からとった名前でしょうか。
櫨染(はじぞめ)は、暖かみのある赤みの深い黄色のことで、山櫨(やまはぜ)の黄色い心材を染料にし、灰汁媒染で染めるそうです。猫の盧染さんもそういう毛色なのでしょう。
一生懸命で真面目な主人公が、次に何と出会うのか。2巻が楽しみです。