銭湯の物件探しは難しい?


銭湯を始めたいという方からの相談をよく受けます。

「物件探している最中でどうすればありつけるのでしょうか。」というものです。

今日はそのことについて書きます。というのも、毎度説明するのが面倒なので、これ見て頑張ってください!!!

銭湯の物件は、賃貸サイトでは中々お目にかからないと思います。組合に聞いてもイマイチ。かといって、営業している銭湯に「借りれる銭湯知りませんか?」なんて聞き込んでも・・・。

2店舗目の都湯を始めるまでの1年間だけでも、関西圏で10件の物件に当たりました。

状況的に断念したものから、”賃貸”を断られたものまであります。


それらのパーターンは大きく3つ。

1 賃料が高すぎ

2 売買のみ 

3 廃業後の段取りが既に決まっていた

だいたいが3のパターンです。

賃料が高くてどう計算してもいきなり大赤字。賃貸は考えてない、の一点張り。廃業情報が出た時には、時すでに遅し。そりゃ、廃業後の段取りを考えて、計画的に廃業宣言しますよね。

みたいな感じでした。

今回のブログでは、①物件が見つからない理由、②物件の難しさ、③どうすれば? を書いていきます。これらを聞いて湊が答えることを、隠さずに書いたので参考にしてください。

① 物件が出てこない理由

⑴ 銭湯以外の運用の方がいい

⑵ 廃業を決意したら、次をすでに決めてしまっている

⑶ 同業者までにしか情報を出していない

② 物件の難しさ

⑴ 老朽化

⑵ 所有者の自宅

⑶ 土地と建物所有者が別

⑷ 地域

⑸ 経営が成り立つのか

③ どうすれば?

⑴ 組合が斡旋してくれる?

⑵ 購入する

⑶ 縁を信じて聞き込みまくる

⑷ 誰かのもとで働く

⑸ 地方銭湯を当たる

以上です。他にも見落としているポイントがあるかもしれません。何かあればご指摘いただきたいです。


① 物件が出てて来ない理由

⑴ 銭湯以外の運用がいい

物件の持ち主にとっては、不動産運用に過ぎません。

銭湯って割と好立地なとこにあったり、坪数もあるので、銭湯として貸すより、他の運用をした方がお金になるケースが多いです。賃貸しした場合の収益や建物の管理責任などを天秤にかけると、・・・です。

商売として厳しい状態にあり、老朽化問題もあることを考えると賃貸しをするという発想には正直なりにくいです。もちろん、中には、梅湯や都湯のオーナーのように、地域に残していきたいと考えている方もいます。

なんにせよ、銭湯を銭湯として資産運用するには、金銭的価値は低いという事です。よって、オーナーにとって、「銭湯を銭湯として貸す」という選択肢が考えられにくい現状があります。

⑵ 廃業を決意したら、次をすでに決めてしまっている

先に言ったように、銭湯が銭湯という商売で成り立つと思っていない所有者が大多数です。なので、廃業後に賃貸として貸し出すという選択肢は順位が低いです。経営的に厳しい銭湯であれば、廃業後のことを全く考えていない事はないと思います。解体して新居にするのか、そのまま住み続けるのか、売却してしまうのか・・・。これらが大きな選択肢だと思います。この今後を決心した段階で、賃貸を申し出てもなかなか交渉は難しいです。ただし、地方においてはそのままになっている場合がよくあるので、交渉の余地はあると思います。

⑶ 同業者までにしか情報を出していない

一般には情報が回ってきにくいです。同業や関連業者経由で、どこどこが借り手を探しているなどの情報はよく耳にします。それが一般的にSNSなどで告知されているケースは数少ないです。その背景としては、経験がある人にやってもらいたいという面があるようです。

以上の3点が、物件が出てこない大きな理由だと思います。


② 物件の難しさ

仮に物件が確保できそうになっても難しさが幾つかあります。それらの問題は重複してる場合があるので、難易度は一気に上がります。よく直面する難しいパターンを5つあげてみます。

⑴ 老朽化問題パターン

ボイラー、濾過器、バルブ、ポンプ、配管、浴槽、天井や内壁、エアコン、煙突、建物そのもの、あとは細々した備品類。長年使ってきた設備はかなり傷んでいます。営業を続けてくのであれば、修繕やあ新調しなくてはなりません。ボイラー、濾過器、浴槽、煙突は、数百万規模と高額出費になってしまいます。梅湯で500万、都湯で700万の初期投資です。梅湯に関しては、この3年で1000万以上の設備新調や修理で出費がありました。(※高額工事は所有者負担の契約内容も多いですが、その分家賃が高い場合が殆どです。)

4店舗目の源湯では、当初に点検して把握していた以上に設備の老朽化がひどく、開店までにかなりの時間と労力を使いました。もちろん、お金も。営業開始して一ヶ月でジェットのモーターが壊れるなど、やはり、老朽化問題は常につきまとってきます。地味に足を引っ張られるので、やりたいことが後回しになってしまう厄介な問題です。

老朽箇所の把握とどのくらいの修繕費がかかるのか見積る必要があり、その段階で実現不可能と判断せざるをえない結果になりがちです。

⑵ 自宅がくっついてるパターン

銭湯の2階や釜場から奥が住居になっていて、店舗と住居の分断が構造的にしにくいことが多いです。分断のリフォームや引越しを前提に交渉しなければならないです。その理由で、借りられなかったことがあります。一方で、2店舗目の都湯では釜場と住居部を分断する工事をしてくださったので、借りられることができました。

⑶ 土地と建屋の所有者が別々パターン

建物は自己資産だが、地代を払って経営している場合があります。この手の物件は借りるとなると、建物所有者と土地所有者に賃料を払うことになり、相場より高くなってしまうことがあります。また、それぞれの意向もあるので、交渉が難航しがちです。

⑷ 過疎地域で商売が難しいパターン

経営難で廃業をしてしまう場合、地域の衰退が要因な面もあります。昔は栄えていたけど、主要産業の衰退、団地がなくなったなど、地域的な問題の影響があります。この周辺状況では、商売、ましてや銭湯という商売は厳しい・・・と思えてしまう物件も多々ありました。立地は本当に重要なポイントだと考えています。この銭湯だけはなんとか残したいのだ!と、利益度外視なのであれば、挑戦してもいいかとは思います。

⑸ 経営が成り立つのかパターン

(1)と(4)も含め、既存の集客数(売上)とランニングコストを計算すると、厳しい状況だと判断せざるをえないこと、本当多いです。物件の設備内容や条件で大きく変動するので、銭湯ごとで全然違います。ここが物件の難しいとこです。立地または設備がよくても、ランニングコストが必然的に高い物件は難しさがあります。逆に、ランニングコストが低ければ、他の条件が厳しくてもやっていける可能性はあります。(これは都湯や容輝湯で実証中です)。ランニングコストの内訳については、また詳細に書こうと思います。


以上です。難しさばかり列挙してしまいました。しかし、だからと言って無理ではないはずです。これらのハードルを先に知っておけばいくらでも備えることはできます。最短とは言えないでしょうが、何もないとこからやっていくよりは最短だと思います。それを踏まえて、どうすればいいのってことです。

③ どうすれば銭湯が見つかる?

どうやって物件を探していけばいいのだろう・・・。これは僕らも難儀しています。簡単にはいかないので、いろいろなアプローチを地道にやっています。

⑴ 組合が斡旋してくれる?

「組合に聞いてもダメだったんですよ・・・」との声をかなり聞きます。そりゃそうです。組合にはまだそのような機能はないです。そもそも、組合というと聞こえがいいので、組合が銭湯を組織的に管理しているようにイメージしがちですが、実際に組合に触れてみた正直な感想は、各浴場経営者(風呂屋の旦那、女将)の寄せ集め、といった印象です。専門的なブレーンがいて、プロジェクトに向かって日々運営されていると云う組織ではないです。ただ、若手の会が発足していたり、マッチングに向けて動き出している組合もあるので組織改善が進んで行くと思います。また、積極的な経営者の方と知り合えたりするので、そこから広げることはできます。

⑵ 購入すると交渉する

潔く購入前提で探しましょう。

賃貸となると契約や運営の煩雑さ、所有者としてのリスクがあり、断る理由があります。購入となるとまとまったお金が入るため、所有者が抱える遺産相続の問題や何かしらの難しい問題をクリアしやすいです。ただし、それなりの資金力がないとできないです。とある銭湯で賃貸不可、売買のみという条件があり、頑張ったのですが、2億円は早急には準備できず、泣きました。

⑶ 縁を信じて聞き込みまくる

運の要素100%です。ただ、前提として、実績以上に信頼がないといけません。なので、単純な飛び込み営業では難しいです。

ちなみに、湊がしているのは、これです。実績と信頼で地道にやっています。(業界歴たった5年でこんなこと言えないですが、これしかないので・・・)

⑷ どこかの銭湯で働く

実績、信頼、関係を一挙に培うにはこの方法です。遠回りに見えますが、実はこれが最短かもしれません。ここ最近ではスタッフ募集している銭湯がSNS上でもよく見かけるようになりました。無経験からやるには、しんどい商売です。どこかで、経験を積まれることをお勧めします。また、我々、ゆとなみ社のように、1店舗だけの運営に留まらず、辞めてしまう銭湯を引き継いでいこう、サポートしていこうと考えている経営者が何名か存在します。ニコニコ温泉様(富士見湯、湊山温泉など)、シュリーマン様(松の湯、入船湯、いやさか湯)、東京銭湯様(喜楽湯、他)、押上大黒湯様(黄金湯)。今、パッと思いついたのは以上の方々です。他にも、廃業寸前の銭湯を引き継いでおられる方もいらっしゃいます。そういった考えのある方の元で働くのも、いいチャンスがありそうだと思います。

ちなみに、ゆとなみ社では、初夏(2019年7月)に募集し終えたので現在は募集していません。もちろん今後はありえますので、SNS等見張っていただきたいです。

⑸ 地方銭湯を探す

① の⑵でも触れましたが、地方銭湯は割と廃業後に残りがちです。地方銭湯の後継者問題は深刻なので、都心外で探してみることをお勧めします。実際に困っている銭湯はあります。本当に銭湯経営を真剣に考えていて、どこでも住めるって気概のある方はご相談いただきたいです。


以上です。投げやりではありますが、参考にして頑張って下さい!!!

一人でも多く銭湯側に立ち、銭湯を残していく気持ちのある人を、送り出していきたいの一心です。我々自身も、試行錯誤して運営しています。どうなるかぶっちゃけ、わかりません。そんな中でも、銭湯を残していきたいとの気持ちで一同やっております。ぜひ、諦めずに挑戦していただきたいです。

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