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YOASOBI - 「怪物」

この曲はアニメ『BEASTARS』のOP曲だ。このアニメは草食動物と肉食動物が共存している世界が舞台で、主人公の狼・レゴシの学園生活が描かれる。この曲も『BEASTARS』の世界観を元に作られており、今回はこれを前提として考察していく。

「偽り」の世界

あぁ 素晴らしき世界に今日も乾杯
街に飛び交う笑い声も
見て見ぬフリしてるだけの作りもんさ
気が触れそうだ

クラクラするほどの良い匂いが
ツンと刺した鼻の奥
目を覚ます本能のまま
今日は誰の番だ

笑い声が飛び交う素晴らしい世界。しかしこれは「作りもん」のようだ。そして良い匂いにつられて「本能」が目を覚ます。『BEASTARS』の世界では肉食獣と草食獣が自分たちの本能を隠して共存している。特に肉食獣は草食獣を食べたいという思いが深層心理にあるのだろう。そんな世界を皮肉たっぷりに「素晴らしき世界」と揶揄している。

レゴシが守りたいもの

この世界で何ができるのか
僕には何ができるのか
ただその真っ黒な目から
涙溢れ落ちないように

恐らくこの歌詞は主人公「レゴシ」目線のものだろう。そしてBメロの「真っ黒な目」は、アニメに出てくるうさぎの少女「ハル」のことだと思う。レゴシは草食獣であるハルをこの偽りの世界から守りたいと強く思っているのだ。

あぁ願う未来に何度でもずっと
喰らいつく この間違いだらけの世界の中
君には笑ってほしいから
もう誰も傷付けない
強く 強くなりたいんだよ
僕が僕でいられるように

レゴシは肉食獣の割には内気な性格である。そのレゴシが、この間違った世界でハルを守るため、強くなりたいという強い思いがサビからは伝わってくる。

「偽り」であるからこその「安泰」

素晴らしき世界は今日も安泰
街に渦巻く悪い話も
知らない知らないフリして目を逸らした
正気の沙汰じゃないな
真面目に着飾った行進
鳴らす足音が弾む行き先は
消えない消えない味が染み付いている
裏側の世界

悪い話も「知らないフリ」し、真面目な行進(=日常?)も行きつく先は偽りの世界。しかしそんな日常があってこその「安泰」な世界であり、レゴシはこの世界で生きることに対して葛藤している。肉食獣の本能を優先するのか、本能に抗い草食獣であるハルを守るのか、その狭間で揺れているのだろう。

レゴシの「葛藤」

あぁ
清く正しく生きること
誰も悲しませずに生きること
はみ出さず真っ直ぐに生きること
それが間違わないで生きること
ありのまま生きることが正義か
騙し騙し生きるのは正義か
僕の在るべき姿とはなんだ
本当の僕は何者なんだ
教えてくれよ
教えてくれよ

「生きること」とは何か、何が「正義」か、と苦悩している。自分を偽り誰も悲しませず生きるべきか、それともありのまま自分を偽らず生きるべきか、そんなレゴシの葛藤が強く伝わる。

今日も 答えのない世界の中で
あぁ 願ってるんだよ
不器用だけれど
いつまでも君とただ
笑っていたいから
あぁ 跳ねる心臓が
体揺らし叫ぶんだよ
今こそ動き出せ

どちらが正しいなんて答えはない。そんな中でレゴシは「君=ハル」と笑っていたいという自分の強い想いに気づく。そしてその想いにレゴシは動かされる。

レゴシの「決断」

あぁ 弱い自分を何度でもずっと
喰らい尽くす
この間違いだらけの世界の中
君には笑ってほしいから
もう誰も泣かないよう
強く 強くなりたいんだよ
僕が僕でいられるように

ただ君を守るそのために
走る 走る 走るんだよ
僕の中の僕を超える

答えのない中でも最終的にレゴシはこの偽りの世界でも「君=ハル」が笑って過ごせるように守る、という決断をする。ハルを守るため、弱い自分を「喰らい尽くして」今の自分を超えるのだ、というレゴシの想いでこの曲は終わる。

まとめ

この曲はアニメの世界観を維持しつつ、聴いている人も感情移入できるような構成になっている。この現実世界でも、何が正義か悪か曖昧になっている部分はあるし、自分はそこで何をすればいいか分からなくなる時もある。しかしそんな中でも、自分の思いに従い、決断して前を向いて走り出すのだ、という強いメッセージをYOASOBIは伝えたいのだと思う。

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