【夫婦シーソー】「ご飯炊いてきたから」と彼女は云う #下書き再生工場
「遅くなっちゃったね。」
家族5人で出かけた休日。
思っていたより帰りが遅くなった。
《SIDE 夫》
「どこかで夕飯食べてく?」俺は聞く。
「ご飯炊いてきたから」と彼女は云う。
「じゃあ、帰るか。」と云うと、彼女は不機嫌そうに「……だね。」と答えた。
ん?なぜ彼女は不機嫌に?
本当は外食が良かった……?
でも彼女は自分から「ご飯炊いてきたから」と言ったんだ。それはつまり、家で食べたいってことだろう?
《SIDE 妻》
「どこかで夕飯食べてく?」と夫が云う。
その瞬間。3秒間の思考である。
ご飯、いいな、行きたい。でも。これから店決めて、寿司がいい、いやラーメンだ、うどんだって喧嘩になりそう。ファミレスなら解決?だけどこの疲れ切った子どもたちをファミレスに連れてったとして三男がぐずったら無理だな。三男連れて私が外に出てるとして、夫に上2人任せて、交代して私が食べて……。ダメだ、時間がかかりすぎる。次は二男が耐えられない。家に帰って私が作った方がまだ平和に過ごせるに違いない。確か冷凍庫に餃子あったし……それに。
「ご飯炊いてきたから」
「じゃあ、帰るか。」と夫は云う。
これしかない。だけど、これから発生する家事を想像して私はため息と共に「だね。」と云うことしかできなかった。
自宅に向けてハンドルを切る。
楽しかった今日を、楽しいまま終わらせたい。
それはどちらも同じ思いに違いない。
妻は夕飯のメニューを考え、夫はなぜ妻が不機嫌なのかを考え、車内は沈黙に包まれた。
「コロッケ食べたい!買って帰ろうよ!!」
シーソーを平らに、世界に平和をもたらすのはこんな子どもの一言である。
(おしまい)
下書き再生工場にいただいた百裕さんの
「ご飯炊いてきたから」と彼女は云う
を書かせていただきました!
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