私とあなたの、日常

もう 寒くなるね、とわたしがいったら
窓の外を見てごらん、とあなたがいった


まっ黒くろけのからすが一羽いて
カァカァ、と鳴いた


まぎれもない、ありのままの、からすの鳴き声で
全身で 声を絞り出すように

カァカァ、と鳴いた

呼んでいるんだよ、とあなたがいった
誰かをよんでいるんだ、とあなたがいった


子供を捜している母親のからすかもしれない、とわたしはいった


ほんとうは


生きているっていいね、とわたしはいいたかったのだけど


なんだか 場違いな感じがして
ひどく滑稽なことの感じがして


子供を捜している母親のからすかもしれない、とわたしはいったのだった


ひとしきり 鳴き続けたからすは
さっと飛んだ

とても小さな 淋しさを置いていった


#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

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