父、賃貸業の面白さを知る



平家の家の2階を、
4部屋の賃貸にしてスタートした父でしたが
その頃、本業の飲食業にチラホラ影が。
家賃収入の方が安定したので、
今度は姉と私の学費を稼ごうと、
庭にワンルーム8部屋を建てました。


と言っても、木造・風呂無し、
3畳のキッチンに4畳半の必要最低限。

今の若い方には想像できないお部屋ですよ。
トイレもまだ和式だったし、
床のタイルはもみじや石の模様。

収納は半間の押し入れだけ。

うなぎの寝床みたいな場所に、
二階建ての8部屋を作ったのです。

おしゃれには程遠い物件でしたが、
池袋に近く駅からも徒歩圏内。
あっという間に
大学入学のため上京した娘さんたちで
満室になりました。

子供達を東京に出す事を
心配する親御さんたちも、
大家さん家族が隣にいる事で安心するのか
好評だったのです。

両親は元々人付き合いが良く、
親御さんとも仲良くなり
お嬢さん達が卒業して故郷に帰ってからも
お付き合いは続きました。


庭に面した建物でしたから、
私たちも良く話をしました。
私にとっては姉の他に初めて知るお姉さん達。


なんだか皆さんキラキラと輝いて
可愛かったのを覚えています。


そうして暫く過ぎ、
我が家は犬を飼うことになりました。
この犬に関わる事件が起こるのです。


ある時、知り合いから生まれた犬を貰いました。
雑種の、茶色くて脚の太い子です。
その頃は犬は庭で飼われるのが当たり前。

家族で話し合い、「ジュン」と名付けて
庭で遊んでいると....


庭に面した部屋の女性が、
ガラリと窓を開け言うのです。


「その犬、ジュンって名前なの?私と同じね!」って。


子供心に、これはまずい、そう思いました。
だって、
庭でジュン、良い子ね!
お手!
ジュン、お座り!
なんて連呼されたら.....


私だったら耐えられませんもの。


すぐに両親に報告し、
相談の結果、犬の名は「ロッキー」に変更されました。



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