労コン雑感 ~労コン必要ですか~


はじめに

この記事は個人の独断と偏見およびポジショントーク全開で書かれております。一部の方には不快と取れる表現もされていると思いますがご容赦ください。試験対策編は別にまた書きます。あくまで労コンの個人的雑感です。
基本的なスタンスとしては「労コンは産業医として労働衛生に関わるなら取って悪いことはないし、知識の上で役立つ資格である」という前提ですし、日々真面目に産業保健に取り組んでいます(と自分としては思っている)。
ただそれでも昨今の労コン人気に一石というか、安易に受けるのは何とも・・・という内容です。
(ただ多くの人が参入してきて、産業医の質のベースがアップするのは本来悪いことではないんですが・・・。)

pho先生の労コン記事も合わせてご参照ください。
ほぼ同じような内容です。


簡単な経歴

自分は急性期→専属の転職組です。市中病院でそれなりに臨床やってきたとという自負はあります。ただ色々思うところがあり「産業医というのがあるんだな。産業医興味出てきたしいっちょ単位集めてみるか!」と思い、9月に神栖の前期講習会に出てから「産業医めっちゃ面白そう!」と感化され、すぐに色々調べだし、週末など利用してその年の9-12月くらいで日医の産業医単位50単位を全部集めました(認定証受け取るまでは時間かかりますがこれは別記事で)。
同時に速攻で転職活動をし、無事翌年4月から専属へ転職しました。
専属1年目ということもあり労働衛生の知識を体系的に勉強したかったことと、専属で働きながらそれなりに「産業医やってますよ!」感が欲しかったため、今回労コンを受験しました。そして何とか無事合格できました。


そもそも労コン必要ですか?

もともこもないことですが、みなさん労コン本当に必要ですか?
労コン受験でよく聞く受験理由を羅列してみると、

①日本医師会(日医)認定産業医資格を持っていない。将来産業医やりたいけど、日医や産業医大の講習会の競争が激しくて単位が取れない。単位取りに行くのがめんどい。労コン持ってたら産業医できると聞いたから。
②日医認定産業医資格持っているけど、これの更新がいらなくなるから。
③日医の資格持ってるし、産業医活動すでにしているけど、箔をつけたいから。それっぽく体裁を整えたいから。労働衛生の勉強したいから。etc

大きく分けるとこの3つな気がします。

①産業医講習会が取れない・労コン持ってたら産業医できるの罠

「産業医やりたいけど産業医の講習会の競争や倍率がすごくてそもそも単位が取れないんです。」
これよく聞くんですけど半分本当、半分嘘です。本気で単位を取りに行ってないだけです(と個人的には思っています)。
たしかに産業医大の集中講座については倍率高いですし抽選なので参加するのは難しいと思います。しかし、他にも土日の週末にまとめて単位が取れる講習会が多数あるわけで。しかも大体どこも先着順です。本気で産業医やりたいんだったら、なりふり構わず単位は取りに行けます。
東京、大阪、神栖、東北などでは土日にまとまった単位を取得できる講習会がありますので、週末を何回か使えば取れます。探せば他にもあるかもしれません。地域の医師会も直接電話したら受けれるところあります。

「俺は産業医に絶対なってやるんだー」という強い思いがあるのなら、産業医講習会の参加争奪戦くらいなんてことないはずです。ディズニーホテル取るほうがまだ難しいです。
(また別の機会に講習会情報については書くかも。ただ、本州以外だと確かに厳しいというか面倒くさいかもしませんね)

産業医やりたい理由は様々だと思いますし、そこまで強い思いなくても、
「寝て取れる産業医講習会」と「試験勉強して取得する労コン」でしたら、言うまでもなく圧倒的に前者のほうが楽です。
強いて言うならお金がかかるくらいです。

「いつか産業医をやりたい」「単位取得にお金がかかる」「日医の産業医資格なんて更新面倒だし最初から労コン取ってみるわ!」というのは分からなくもないですし、勉強にはなりますが、資格試験ですし普通に落ちる可能性もあるので、労力に見合わないというか、そんな不確実なことしなくても…と個人的には思います。
上記の崇高な考えをお持ちでなおかつ、落ちても受かっても時間的猶予含めて特に問題がないのであればいいとは思います。
「来年度から産業医やりたい!」とか時期を決めて産業医やろうとしての労コン取得は止めといたほうがいいです(少数だと思いますが)。
臨床とかバイトで働きながら「産業医興味あるしいっちょ労コンでも取ってみて、頃合いみて産業医やってみっか」くらいの感覚で受ける方もいるとは思いますが、やっぱり寝て取れる産業医講習会のほうが確実だし楽かと・・・

まとめると、「ふわっと産業医興味あるから労コン取ってみるか」というのはあまり労力に見合わないですし不確実かなと思います。

余談
※余談だけど一番大事なところ
労コン(保健衛生)の資格取得難易度は簡単~難関です。ハッキリ言って労コン合格者の質は正直担保されていません。担保されていないというよりものすごいバラツキがあるという表現が正しいです(多分受かった人の多くが思っているけど、なかなか言えないところ。試験の特性上、不公平になりがち)。
ここがこの試験の特徴かつネックです・・・
そして、医師が安易に労コンを受ける最大の理由なのですが・・・

②日医認定産業医資格持っているけど、これの更新がいらなくなるからの罠

日医認定産業医資格は5年に1回更新が必要です(厳密にいうとぶっちゃけ更新しなくても産業医は出来ますが…)。
労コンの場合、更新がないので一度取得してしまえば、産業医の選任要件を満たしているので、日医の産業医資格は更新しなくても良いというやつです。
これこの界隈でよく勃発する「産業医とは何ぞや?」議論に繋がるんですが、まあ日医の産業医資格持ってないと「この人は産業医資格を持ってる」と会社の人からは非常に分かりにくいです。実数は知りませんが日医認定産業医がほとんど(体感95%くらい?)なので、労コンだけだとその都度説明しないといけないというか。
誰が見ても分かる産業医の資格要件って「日本医師会認定産業医」しかないんですよね。「日本医師会認定産業医」って誰が見ても分かりますもんね。
それに対して「産業医大卒」「産業医学基本講座修了認定書(産業医科大学産業医学ディプロマ修了)」「労働衛生コンサルタント」とか正直よくわかんないですよねって話し。

日医の更新単位取得も、県のさんぽセンターだったりが無料で頻回に講習やっていたりするので実はそんな大変じゃないんですし。

③日医の資格持ってるし、産業医活動すでにしているけど、箔をつけたいから。それっぽく体裁を整えたいから。労働衛生の勉強したいから。etc

自分はこれです。
最近の若手~中堅医師の傾向として、やっぱり意識高い人が多いような気がします。形から入るというのもあると思いますが。
「日医産業医持ってないけど将来的に産業医やりたいからせっかくだからしっかり勉強して労コン取ってやる」という①+③みたいな初期・後期研修医の先生もいるようです。
自分の場合、急性期病院からいきなり製造業の専属産業医になったので、体系的に労働衛生の勉強したかったのと、「産業医やってます!」感を出すために取得しました。産業衛生専門医は何年もかかりますし、もういいおっさんになって専門医取るまでの労力はライフワークバランス的に割に合わないと言うか…

ただ、余談でも少し触れましたが、言っておきたいのは、労コン取ったから労働衛生について何でも知っているかというと、まあそんなことないです。というか全然分からないことだらけです。
自分はどちらかと言うと昔の工場医的なのに憧れていて、「労コン取って化学物質とか機械のこと詳しくなるぞ~」とか思っていましたが、いざ勉強しだしてから分かったのですが、保健衛生の勉強をしても化学物質とか機械については詳しくなりません笑
むしろ自分が求めていたのは衛生コンサルタント(衛生工学)や安全コンサルタントでした(むしろ現在こっちの勉強するかくらいな考え)
医師の場合、労コン(保健衛生)を受験すると思いますが、保健衛生はまあ中途半端です、正直。
事業所のガチな方って、労働安全コンサルタント/労働衛生コンサルタント両方持っているイメージです。

「じゃあ、なんで取ったんだよ!?」と言われれば、もう本当に自己満です。
労コンとっても全知全能の神になるわけではないですし、モテるわけでもないです。当然給料も上がらないですし、引く手あまたになるわけでもないです。ぶっちゃけ別に何も変わりないです。労コン取っても取らなくても、神になるわけではないですし、死ぬわけでもないです。結局のところいつも通りの明日が待っているだけです。人生何でもそんなもんです。

まとめ

労コン人気ですけど、そこまでの実価値があるかといわれると正直何ともという内容でした。
・労働衛生の勉強のきっかけや素地には間違いなく役に立ちますが、そんなもんだよくらいで。
・別記事の試験対策編で詳細書く予定ですが、まあ試験難易度の振れ幅が大きい試験ですので、ワンチャンちょっとの勉強で受かってしまうことがあるので、産業医資格として皆さん気軽に受けてしまいますよね~

これらの複合要因で、勉強中モチベ保つのがムズイですし、まあ勉強してもしなくても受かったり落ちたりするし、合格者の質がバラバラという、ちょっと変わった資格試験なのかなとは思います。

・ただ本来、たくさんの人が受験して、産業医の質のベースアップに繋がることは本来悪いことではないはずです。
・労働衛生コンサルタント協会がどう思うかは別として
・産業医の資格要件に「労働衛生コンサルタント」があるのだからぶっちゃけそのために受験する人がいるのは至極真っ当だし、何もわるいことではない。

・そもそもこの試験はコンサルタントに必要な知識を聞かれる試験です。よくコンサルタントとしての資質とか言われますがが実は品位とか経歴は関係ないです。労コンは試験に合格して登録をすることで初めてコンサルタントが名乗れる名称独占資格です。合格後に品位を欠いたからといって合格が取り消されるわけではないです。登録除外をされることでコンサルタントが名乗れなくなるかもしれないけど。この「登録の考え」は弁護士や公認会計士に近いかも。

労コンとっても産業医道はずっと続きます。
対策編は書くつもりですが、めちゃくちゃな量になりそうで、時間かかるかも・・・

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