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出版社・三五館シンシャの話(2018年~)

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記事一覧

腐ったミカン--倒産する出版社に就職する方法・第77回

『やっぱ、この色。。。いや』

このメッセージがLINEに送られてきたとき、俺は思った。
「ああ、そうか……」
落胆などしていなかった。むしろ心のどこかでほっとしていた。隠し続けてきた年齢詐称が露見したアイドルのように。ゴーストライターが明るみに出た佐村河内のように。これでよかったんだ。俺は自分にそう言い聞かせた。

時はその1週間前にさかのぼる。
私は「色校」を脇に抱え、都内の喫茶店で『買いもの

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もうひとつの世界--倒産する出版社に就職する方法・第76回

「本日、緊急事態宣言を発出します。国民の命と生活を守るための決断です」
2020年4月7日、総理大臣は7都府県に緊急事態宣言を発出し、不要不急の外出自粛を強く求めた。緊急事態宣言を求める強力な世論が政治を押し切ったのだった。
女性キャスターは視聴者に呼びかけた。
「その命を奪ったのは私たちかもしれない。どうか他人事ではなく、大切な命を守るんだ。『自粛させられる』ではなく、すすんで自粛してください」

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SAIKAI--倒産する出版社に就職する方法・第75回

この連載、やめたと思ったでしょ?
最終更新が1月22日で、そこから早3カ月。
それまでずっと1~2週間に一度ずつ更新してきたのが、3カ月更新されなかったら、ふつうもう二度と更新されないよね。商店街の和菓子屋のシャッター、3カ月閉まってたらもう潰れたと判断するよね。
ね、みんなも、もう二度と更新されないと思ったでしょ?
じつは俺自身がそう思った。
いや、俺だって初めの1週間くらいは「早めに次、更新し

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キューブが落ちてくる--倒産する出版社に就職する方法・第74回

風邪もインフルエンザも寝れば治る。私はそう信じている。

なぜなら、私はこれまでそうして風邪やインフルエンザを乗り越えてきた。

どうしようもなくつらければ、ひたすら寝ればいい。眠れば解決する。だから、私は眠った。

翌10日、布団の中で震えながら目を覚ます。歯と歯がぶつかりガチガチと音を立てる。異常な寒さだ。戦慄悪寒というらしい。

布団を這い出て、リビングに行き、体温計を脇に挟む。横目でちらち

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インフルエンザウイルスから逃げ切るスピード--倒産する出版社に就職する方法・第73回

2019年12月9日夕刻、私は阿佐ヶ谷の路上を小走りに駅へと急いでいた。背筋から全身へと広がる悪寒を感じながら、一刻も早く暖かな駅に駆け込もうとしたのだ。しかし、一歩一歩刻むたびに、悪寒も少しずつひどさを増しているような気がしてならない。
「やっぱり来たか……。やっぱり来たか……」
私は南阿佐ヶ谷駅の地下鉄へと続く階段を、そうつぶやきながら駆け足でくだった。
すでに終わりが始まっていた。
いや、始

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メビウスの輪--倒産する出版社に就職する方法・第72回

「1章ぜんぶ書き直す」って、この期に及んで何を言っちゃってるんでしょうか。
自動販売機に百円玉入れれば缶ジュースが出てくるように、印刷所に原稿渡せばゲラが出てくるわけではないのです。
ゲラにする際には、元の原稿に「誤脱字の修正」「用字用語の統一」「数字表記の統一」「事実関係の確認」などを行なったうえで、「文字の大きさ」「書体」などの指定書を作成し、印刷所に組版指定を行なうのです。それをもとに印刷所

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なんかちゃうねんーー倒産する出版社に就職する方法・第71回

さあ、カバーに使う写真は決まりました。
デザイナーに電話し、使用する写真とおおまかなデザインのイメージを伝えます。写真を確認したデザイナーからの「はぁ…」というため息は聞かなかったことにし、これでカバーはラフがあがってくるのを待つのみとなりました。

さて、続く課題は本文です。こちらもまだまだ課題は多いのです。
9月初旬のこの段階で、私と著者・藤原ひろのぶ氏の手元には『ぼくらの地球の治し方』の再校

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酸欠とカバーデザインーー倒産する出版社に就職する方法・第70回

「酸欠やねん」

2019年9月初旬、都内喫茶店。
10月初旬刊行で進行中の藤原ひろのぶ氏の新刊『ぼくらの地球の治し方』の編集作業は佳境を迎えていました。タイトルは正式に決定し、続くはカバーデザインです。
カバーデザインはタイトルとともに本の顔ともいえる部分。内容を表現しつつ、書店店頭やネット書店でも一目でアピールできる存在感も重要になります。
写真か、イラストか、はたまた文字だけで表現するか、さ

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新聞広告を考えるーー倒産する出版社に就職する方法・第68回

こんな反響があるとは思いませんでした。
7月30日に、新刊『交通誘導員ヨレヨレ日記』という本の新聞広告をやりまして。
一面の下に書籍広告が8本の並んでいるスペースがありますよね。あれをサンヤツ(3段8ツ割)といいます。読売新聞にサンヤツ広告したんです。
新聞広告自体はサンヤツも半五段も何回かやっているので、三五館シンシャにとってもそれほど珍しいことではありません。ただ、その反応が思ってもみないもの

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美しい風景--倒産する出版社に就職する方法・第67回

新潟県十日町で開催される「藤原ひろのぶ×ほう×EARTHおじさん個展講演会」開催直前、著者のほう氏から不安げなLINEメッセージを受け取った私は、開催2日目、十日町に赴きました。
東京駅から新幹線で越後湯沢まで1時間半、そこから北越急行ほくほく線に乗り換え30分の道のり。十日町駅です。
道も不案内な上、小雨も降っていたため、私は駅前からタクシーに乗車して、個展講演会場「十日町産業文化発信館イコテ」

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imagine--倒産する出版社に就職する方法・第66回

すみません。ちょっとタイムスリップさせていただきます。今から15年前、2004年を描いていた連載第65回から、一気に2019年7月にタイムスリップします。現在に帰るのです。現在に帰って、どうしてもみなさんにお伝えしたいことがあるからです。少々きついGがかかるかと思いますが、鼻つまんで耳から空気抜いてください。気分が悪くなった方はキャビンアテンダントまで。さあ、急降下、不時着します。場所はそのまま変

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怪しい男と怪しい女と怪しい男--倒産する出版社に就職する方法・第61回

――来ました。
見た瞬間、もう直感でわかりました。会ったことなくても、見たことなくても、間違いありません。アイツ以外ありえねえ、私の右脳がそう言っています。
JR上野駅、人ごみの中、ひときわ存在感を放つ人物が階段をくだり、改札に向かって歩いてきます。上着は白い作務衣風ジャケット、胸元が若干はだけています。髪は無造作に伸びたパーマ、はっきりとした目鼻立ち、足元は裸足にサンダル、手元には小さなキャリー

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イキッてるからすぐわかるーー倒産する出版社に就職する方法・第60回

2018年5月15日、午後2時、JR上野駅改札。
次々に改札に押し寄せる人の波を見つめながら、私は長澤美穂氏とともに、ある人物の到着を待っていました。待ち合わせ時刻はもうすでに過ぎています。

「どんな人なんですか?」
「うーんとね、イキッてる。とにかくイキッてるから、来たらすぐわかる」
「そうですか……」

すべては一枚のポスターから始まりました。A3サイズのカラーポスターには「トイレットペーパ

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電話番号が変わりました。ーー倒産する出版社に就職する方法・第59回

「電話番号が変わりました」
って、ふつうの事務連絡っぽいじゃないですか。
本来、ホームページのトップでやっていいことじゃないですか。
ホームページで、「新刊情報」の更新は去年の7月以降ずっと怠り、何かに取り憑かれたようにこの連載記事だけを58回にもわたって更新しつづけるという異常行動よりも理解しやすいことだと思うんですよ。
でも、設立からわずか1年半のうちに電話番号を変更せざるを得なくなったのには

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