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「16」

先月の中頃、濃厚接触者の判定を受けて5日間ほど自宅待機となった。
落語会が一つあったが、それは代演をお願いして、あとは何もなかったので、特に対応に追われるわけでもなく日々が過ぎていき、それはそれで少し寂しかった。
家から出ることができなかったが、いつもお世話になっている方が玄関に食料を置いてくださったのでとても助かった。

あと、友人からすぐにLINEがきた。
「MIXの19巻買った?」
僕は最近、あだち充先生の漫画「MIX」を読んでると言っていた。
最新刊の19巻が発売されたところだった。
僕は「買ってない。16巻から持ってない」と返信した。

しばらくすると、玄関の外で物音がして、友人からLINEがきた。
「玄関のドアノブ見てみて」
玄関のドアを開けて確認した。
ドアノブにビニール袋がぶら下がっている。
中を見ると、「MIX」が3冊入っていた。
僕は嬉しくなり、すぐに袋から「MIX」を手に取り表紙を眺めた。
17巻18巻19巻の3冊だった。
すぐに「久しぶりに新品の漫画買った。暇なときに読んで」とLINEがきた。
僕は「ありがとう。でも、16巻持ってないよ」と返信した。
そこから、しばらく返信がこなくなった。

あまりにも返信がこなかったので考えた。
もしかすると、16巻を買いに行っているのだろうか。
いや、でも、僕は彼のことをよく知っている。
ボケで16巻を飛ばしたのか、天然で16巻を飛ばしてしまったのか、17巻からしか書店になかったからもう17巻からでいいかと思ったのか(多分これのような気がする)、いずれにしろ、再び16巻を買いに書店へ行くような彼ではないはずだ。
でも、こういうときだから、もしかするのかもと思い、友人にもう一度LINEをすることにした。
LINEのトーク画面を開くと、ちょうど友人からLINEがきた。
「とりあえず16飛ばして17から見て。16は想像して。外に出られるようになったら16買うんだっていう希望が出るはず」
少し笑った。
続いて、
「あと、いつものジュンク堂に16巻ないから他で探した方がいいよ」
やっぱり無かったんやないか。笑った。

僕は、
16巻から19巻を届けてくれるわけでもなく、19巻だけを届けてくれるわけでもない、
17巻から19巻を届けてくれた友人が好きだ。

あと、1冊くらい飛ばして読んでも全然楽しめるあだち充先生の素晴らしさに感動した。

しばらくして、また友人からLINEがきた。
「プレゼントはどんなものを渡されても嬉しいもの」

そうだよ。
今度、友人にプレゼントをする機会があったら、
どっか知らない国の民族音楽が入っているCDをプレゼントしよう。



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