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トンネルの出口は突然に J1第3節vsFC東京 マッチレビュー

2連敗で迎えた今節FC東京戦。

京都は再びシステム・メンバーを入れ替え。後ろの枚数は4枚に、木下と山田楓喜が初先発。武田が先発復帰。

対する東京。松木・安倍・帆高とチームの中心を担う若手が欠場。CBにはエンリケではなく森重が入りました。
スタメンの、特に前線3枚は強烈も強烈な一方で、サブメンバーが手薄。
CB交代の影響は大したことないでしょう。後半まで耐えられれば活路は見えるのでは。

…そんな予想は開始5分でほとんど覆されることとなります。
中身を見ていきましょう。

試合サマリー

前半

開始早々からペースを握ったのはサンガ。ハイプレスでリズムを作るところまではいつも通り。はがされてビッグチャンス…まで至らせなかった点を考えると、いつもどおりを超えていつも以上です。

前節までと大きく違う点は、短いボールでのビルドアップと、陣地回復で蹴るロング(ハイ)ボールの先でした。

いったい今までは何だったのか。良い意味で驚きのテンポでパスが繋がります。ポイントになっていたのは初先発の木下と山田。

木下はロングボールの的になりながら素晴らしい足元の捌き。起点が2つになることで東京DFはパトリックに集中できず。アバウトなボールがだいたい収まることで相手のラインの押し下げに成功。
山田は強烈なスプリントでハイプレスの先陣に。仕掛ければ対面のバンクーナガンデをことごとくはがすキレの良さ。白井との組み合わせも相まって右サイドを完全に制圧しました。

ほとんどの時間を自分たちのペースで進めらました。残念ながらVARの発動や相手GKのビッグセーブで得点には至らず。
それでも、後半はもちろん、これからの2023シーズンにも光が見えた。そんな素晴らしい前半になりました。

後半

残念ながら前半ほどの勢いは維持できず。
運動量が落ちて生まれたスペースを活用され始めることに。とはいえそれは想定どおり。ややサンガペースで拮抗した状況が続きます。

均衡が破れたのは30分。セットプレーの流れで左から木下がクロス。DF・GKが誰も触れない絶妙なボールの先に川崎が待っていました。ヘディングでファーサイドに叩き込み待望の先制に成功します。キーパーもノーチャンスの素晴らしいシュートでした。

攻めに出たい東京は前線を大きく入れ替え。フレッシュな選手を投入しますが流れを変えるには至らず。京都の明確なウィークである左を狙い何度かチャンスを創出しますが得点には繋がりません。

このままクローズが見えた89分。相手PA内でのロストを白井が東から再奪取しPKを獲得。これをパトリックが決めて2-0。その後は井上の神クリアもありクリーンシートでようやくの初勝利。

トンネルの出口が見えた内容に、結果まで付いてきてホームで今シーズン初勝利。最高の一日に。よかった。本当に良かった。

前節までとの違いが生まれた理由

今節で大きな進展が見られました。前節までとの大きな違いはビルドアップとハイプレスがとても機能していたことです。ポイントは3つ。

①東京のDFライン

パト・木下・山田の圧力により、東京のDFライン押し下げに成功しました。東京はDFラインを深く取らざるを得ず、前のハイプレスに全体が連動できません。ロングボールが良い形で前線へ届きません。

「深い位置で剝がされても次でひっかければよい」のスタンスで襲うサンガのハイプレスが機能する、大きな一因になりました。

②東京のメンバー構成

左CBのスタメンはエンリケではなく森重でした。大した影響はないと想定していたのですが、これが良い意味で大きな誤算となります。

逆足サイドである左CBに入った森重はプレスを器用にはがせず。サンガのハイプレスに度々引っかかります。苦しまぎれに左SBのバンクーナガンデに当てるところも狩場になりました。

中盤では松木不在の影響が甚大でした。東・塚川は捌きを得意とする選手ではなく、ハイプレスに苦しむDFラインを助けられていませんでした。
そうなるとGKのスウォヴィクに逃げる手もありますが、セーブは素晴らしい一方でフィードが味方に合いません。後ろで容易に回収できました。

開幕戦で鹿島にやられ倒したパターンを、サンガは逆の立場で再現することに成功します。

③主審の判定基準

1・2節ではやけに細かく吹くなあと感じていました。昨シーズンは流し気味だったのに。また基準変えるんかい。と不満に思っていたところです。

ところが、この試合で主審を務めた福島主審はかなり流し気味。昨シーズンのサンガスタの名古屋戦で明らかに佐藤響の足を刈ったスライディングを流し、VARでPKに変更となったあの方です。と言えばピンと来るでしょうか。

福島主審のスタンスはこの試合でも同じ。きわどい接触はだいたいノーファール。山田のファールでゴールがVAR取り消しとなったシーンが象徴的です。

激しいハイプレスに接触に付きもの。せっかく奪えそうなシーンがファールで止まってしまうと、ハイプレスでリズムを作るサンガとしてはとても難しい状況になります。前節までは苦しんだ判定基準に今節は助けられました。

上手くかみ合った結果の好サイクル

後ろと中盤でしっかり作る。しびれを切らして相手FWがハイプレスを開始したらロングボールで陣地回復。前に収まればよし。奪われればハイプレスで回収してやり直し。

これぞサンガがやりたかったサッカー。まさに狙っていたハイプレスを軸にしたサイクルが回っていました。
勝つべくして勝った。こんなに気持ち良いものだったとは。

個人評価

先発

若原 智哉 6.5
数少ない出番できちんと仕事を遂行。安定感あるキャッチとビッグセーブで守備に貢献しました。「え?そんなとこ通すの?」みたいな縦パスも見られるように。着実に改善しています。

麻田 将吾 5.5
失われたのは自信なのか何なのか。相変わらず足元の捌きにもたつくシーンが散見。27分55秒の伊藤涼太郎トラップをDFラインでやるのは勘弁してください。(たまたまだと思うけど)
とはいえ守備では割り切ってタスクをこなしてくれました。狙われ続けた佐藤のカバー含め良い対応でした。

井上 黎生人 6.5
リキトがようやく戻ってきました。最後の神クリアは助けられましたが、そもそも黎生人が妙なスルーしたせいでは…。いや個別の話はいいでしょう。90分通して安定しています。引き続きこの調子で。頼りにしています。

白井 康介 7.5
前半は山田との連携で右サイドを完全に制圧。1対1も含めてバンクーナガンデ・アダイウトンに何もさせませんでした。こぼれ球争いで仲川を手玉に取ったシーンは秀逸。
押し込まれた時間帯はギアを落としてビルドアップに専念。押し返したと見るや再度ハイプレスを開始してPKも獲得。このハイパフォーマンスが90分続く原理がさっぱりよく分かりません。全盛期のダニエウ・アウベスが憑依しています。
文句なしのMOM。

川﨑 颯太 7
周囲との連携も活用して中盤で躍動。不運なカードももろともせずチームを支えました。そして殊勲の決勝ゴール。得点後のホッとした表情が印象的です。肩の荷、降りましたか?

福岡 慎平(OUT:82) 5.5
らしくないミスが多く、存在感が薄め。よく走って戦ってはいましたが…。それでも前節からは改善しています。続けていきましょう。

武田 将平(OUT:64) 6.5
前線で走り回って、ターゲットにもなり、下がって繋いで奪って捌いて。これくらいやれる選手です。去年から気にしていた膝は完治してないのでしょうか。そこだけが気がかりです。

山田 楓喜(OUT:64) 6.5
右サイドで東京の脅威となり続けました。ハイプレスの先陣を切り、攻撃ではドリブルで起点に。単騎で突っ込んで空回りする悪癖も改善されています。チームを牽引する素晴らしいパフォーマンスでした。
後半バテてしまいましたが、初出場であれだけ走ればそりゃそうでしょう。試合に出てコンディションが上がれば解決する問題かなと。

佐藤 響 5
大事なところで大きくなるドリブル。突然相手にプレゼントされるパス。後逸してしまうなんでもないハイボールを対応。厳しいこと・偉そうなことを承知で言わせてもらいます。技術がJ1の水準にありません。
後半20分以降のようにボールに触らず、鉄砲玉みたいな突進やクリア対応に専念すると悪くなくなります。しかし「ボールさえ持たなければ良い」はサッカー選手としてどうなのでしょう。

パトリック 6.5
異次元の空中戦勝率。相手のDFラインを押し込めるのはパトリックのおかげ。またしても相手のビッグセーブに合いましたが、ようやくの初ゴール。おめでとう。流れからの点も期待してます。

木下 康介(OUT:92) 7
左右の足から生まれるキックの精度が抜群。ゴール前でボールに絡んだときはずっと得点の匂いを振りまいていました。ターゲット・捌き役・ドリブルの3役をこなして守備でも頑張り、決勝アシストまで上げるスペシャルな活躍。

途中出場

金子 大毅(IN:64) 6
This is 途中交代で入ってきたセントラルハーフの動き。顔の出し方、捌き方、プレッシャーのタイミング。よい。高い安定感で武田の不在を感じさせませんでした。

谷内田 哲平(IN:64) 6
今日は上手くゲームに入れませんでした。珍しいミスも。と思ってたらPK奪取に一役買ってくれました。やっぱりキックの質が良い。高まる期待感と頭から見たい願望。

イヨハ 理 ヘンリー(IN:82) なし
途中出場でクロージングに貢献。PKに繋がるFKも良いボール。ルヴァンで出番が来るでしょうか?楽しみですね。

山﨑 凌吾(IN:92) なし 
競り合いでの負けやファールが多いなあと。パト・木下を見ているだけに余計に気になります。

監督

曺 貴裁 6.5
自分たちの原点を取り戻すことに成功。チームを快勝での今季初勝利に導いてくれました。
相手の主力欠場や対策不足に助けられたことを差し引いても、前に進んだことを実感できた内容です。次の強敵湘南相手でどれくらい同じことができるか。

敵ながらあっぱれ賞(相手チームMOM)

なし。「〇〇に苦しめられた」と感じた選手はいませんでした。
余談ながら…。天皇杯決勝然り、度々苦汁を舐めさせられた森重のパフォーマンス低下には悲しいものを感じました。

内容は以上です。

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久しぶりの勝ち試合で筆が滑って文量が多くなってしまいました。勝利って本当に良いですね。
最後までご覧いただきありがとうございました!


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