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3ヶ月で得た変化と成長 J1第19節vs鹿島アントラーズ マッチレビュー

試合サマリ

前半

開幕戦では「サンガ対策のすべて」を体現してきたアントラーズ。
サンガDFラインへハイプレスで自由を奪い、大きく蹴ったらフィジカルで回収、奪えれば速攻狙いは今日も同じ。

一方で違いがあったのは攻撃面。サンガのハイプレスに対し「繋がず蹴り飛ばして空転させる」ではなく「繋いでパスワークで剥がす」で、回避ではなく対抗するやり方を選択。

望むところだ...と言いたかったのですが、剥がされる回数が多くこれはマズい展開。のはずですがここで違和感。
ハイプレスのやり方がいつもと変わっています。いつもほどにガツガツ追わないのです。開始10分くらいで気づいたので、体力的に厳しいのではなく、自分たちで抑えようとしていた意図があったのでしょう。

奪ってチャンスにこそなりませんが、無謀な突進が減って裏返される場面も減っていました。何より体力面での消耗が段違いで、これが後々大きく響くことになります。

鹿島のハイプレスに対して、サンガの攻撃はロングボール主体で回避しつつ、適宜ビルドアップとサイドチェンジを混ぜることで揺さぶりをかけます。

鹿島の前線に故障者が相次いでいることも関係しているのでしょう。プレスの強度は開幕戦に及ばず。左が福田→佐藤に変わったこともあり、前回狩場となった左サイドでのロストは激減。キーパーが若原→太田になったことで最後尾からのビルドアップ成功率も向上。
アントラーズは奪いどころを失います。

ハイプレスに来る割に奪えない30分くらいから、アントラーズの運動量が落ち始めます。
流石と思わされるパスワークでピンチは作られますが許容範囲。0−0で前半終了。パトリックを温存したアウェイのカシマでこの内容・結果は上々も上々です。

後半

先に動いたのはまさかの京都。Twitterに先駆けてAPIを呼び出し天馬と交代。3バックへ変更し中盤を手厚くします。

アピの途中出場が危険なこと、3バックへの変更が守備に拍車をかけてしまう傾向があることは、今まで痛いほど感じさせられています
また同じ手か...大丈夫か...と疑い見ていましたが、びっくりするくらいハマりました。

3バックへの変更で大きくメリットがあったのは「①ビルドアップの枚数が増えたこと」「②高さが補強されたこと」の2点。

鈴木優磨を軸にハイプレスを狙うアントラーズでしたが、シンプルにDFの枚数を2→3に増やしたことで一層ハマらず。1.5列目の選手達は足元のテクニックでは高いクオリティを持ちますが、プレスで鈴木優磨と連動できないため京都としてはやりたい放題の展開になりました。

中途半端に追う前線と連動しない後衛。生まれたギャップを使ってサンガは暴れることができました。縦に圧力を加えるもよし。左右へ展開して揺さぶるもよし。DFラインの背後を狙うもよし。

こちらは極端に上手くいった例ですが、51:10のシーン。


前線3人がプレスに向かうものの後ろが連動せず、川崎颯太の周囲に広大なスペースを作り、結局ゴール前まで前進を許してしまっています。
(もう少しで決定機になる惜しいところまでいきました)
肩を落としてプレスバックに向かう鈴木優磨のキツそうな雰囲気が印象的でした。

これ、進研ゼミで...はなく、我々の広島戦や札幌戦で見たやつだ。ですね。

サンガが悪い時によく見る典型的なパターンで、前線が無理くり突っ込むものの奪えるどころか制限すらできず。体力は失われチャンスまで作られるとても厳しい守備パターンです。

押し込まれ消耗するアントラーズ。ミスも増えてサンガにボールを渡して、攻撃の時間が短く守備になってしまいまた消耗が始まる悪いサイクル。

まさか京都に押されることになるなど想定していなかったのでしょう。苦し紛れで中途半端なロングボールを蹴って逃げますが、高さが加わったサンガのDFラインに弾き返され続ける展開に。

チャンスも生まれここで決めておきたいところでしたが、フィニッシュワークの質が伴わず。トラップが流れたり、シュートが枠に飛ばなかったり。

悪い流れと、原因が1.5列目にあることが岩政監督に察知されたことで手当が入ります。荒木・仲間に変えて名古と土居。プレス時のポジショニングが的確な二人の投入と、サンガの足が止まったことで流れはイーブン→鹿島ペースに。

押し込まれ危険なシーンを作られますが、個人と組織で高い集中力を見せます。要所でブロックに入り、セットプレーでは見違えるようなタイトな守備で失点を許さず。DAZN越しに見ても盛り上がる雰囲気のカシマスタジアムでしたが、最後まで守り切ることに成功。
鬼門カシマスタジアムで貴重な1ポイントを手に入れることができました。

開幕戦で、サンガゴール裏に向かって笑顔でグーチョキポーズをしていた鈴木優磨。この日は試合中から肩で息をし膝に手を付いて、余裕のなさを感じさせてくれました。

失ったプライドや自信を取り戻し切るには十分な結果とパフォーマンス。カシマスタジアムでの1ポイントと同じくらい貴重な収穫を手に、京都に帰ってきてくれました。

PickUP:開幕戦との違いを生んだもの

セットプレー守備

アントラーズ相手に開始早々のセットプレーで失点すれば、たとえマリノスであっても3ポイントが厳しい試合になってしまいます。
開始5分のCKでフリーの選手を作り失点したことが、開幕戦の悪展開を作ってしまったと言っても過言ではないでしょう。

アントラーズはセットプレーを得意とするチームです。
セットプレーから失点最多を誇るサンガの守備で対抗するのは心配を通り越して「1点までなら仕方ないかな」と諦めてすらいたのですが、この試合では抜群の集中力を見せてくれました。

敵に塩を送る必要はない(SNSは敵チームのリサーチ対象になる)ため詳細は省きますが、今日はセットプレー時に弱点となる部分をきっちり抑えて対応できていました。横浜FC戦以上に。

競り合ってフリーにさえしなければ強いヘディングになりません。枠に飛びません。絶妙なコースに打たれません。止められるのです。

よほどしっかりと準備していたのでしょう。90分通じたタイトなセットプレー守備は、アントラーズの狙いを崩すに十分なクオリティでした。

左のビルドアップ

開幕戦で左サイドバックに入ったのは福田心之助。
大卒一年目・Jリーグ初出場・本職ではない逆足サイドのサイドバックに対し、開幕戦なのになぜか後がなくなった岩政監督は徹底してプレッシングする守備を選択しました。

この守備がハマりにハマってしまいます。左の低い位置でボールが滞留したことで、チーム全体に悪影響が出ました。
満足にビルドアップできない。それどころからロストして失点まで生まれてしまう。実質試合が決まってしまったシーンでした。

今日も開幕戦の再現を狙っていたのでしょう。
アントラーズは積極的に京都の左サイドバックをハイプレスで狙い撃ちますが、今日は左を本職とする佐藤が先発。

短いパスで剥がすだけでなくサイドチェンジで大きく動かすなど、プレスにハマらない捌きを披露。広く揺さぶられたことでアントラーズは狩場を失いました。ただでさえキツい夏場に運動量が増え足も止まりがちでした。

変化したハイプレス

開幕戦と今節の基本スタッツを比較します。
シュート数などでほぼ互角の数字を叩き出した一方で、遂にスプリント回数が100を切りました。

試合中から「今日は前からガツガツ行かないんだ」と感じていましたが、ある程度正しかったようです。
この気温と湿度でいつもどおりの特攻プレスを仕掛ければどうなるか。早々に崩壊するぞと。前半戦の失敗を元にあえてセーブしていた様子が伺えます。

カシマスタジアムで勝点を奪う手段なんて「走って走って走り勝つ」以外にないと思っていた予想を裏切ってくれました。

「人と人とが自在に動く連動したプレス」とまではいきませんが、相手の特徴や環境をもとにプレーを変えられる柔軟性。が備わりつつある兆候だと嬉しいなと思いました。

個人評価

・良かった選手

MF 44 佐藤 響 ★MAN OF THE MATCH
アントラーズが狩場にしたい左サイドで、長短パスを使い分けてプレスをいなし空転させたことが、チームに大きなメリットをもたらしました。やはり3月の試合と比べると別人にしか思えないのですが、人間こんな短期間で変われるもんなのでしょうか。すごい。

DF 3 麻田 将吾
失点への直接関与に加え、メンタルへの悪影響で1ヶ月近くパフォーマンスを落とす原因になった鈴木優磨相手に一歩も引かず完封。前節に続いて空中戦での的確な対応が光っていました。

MF 19 金子 大毅
肉弾戦を仕掛けてくる相手に大刺さりでした。空中戦でも地上戦でも。楔のパスに反応が遅れてフリーでロストしたり捌けないのが勿体なく、改善してほしいとも思っています。

FW 17 木下 康介
裏抜けとポストプレーを駆使して起点になり、攻めてはチャンスメイクでも役割を果たし、守備では献身的。ヘディングで勝てない一美の分まで空中戦を担当して時間を作ってくれました。90分出場は監督からの評価も高い証です。

・悪かった選手

なし。途中出場まで含め全員がハイパフォーマンスでした。

さいごに

新潟と横浜FC相手に3ポイント。カシマスタジアムで1ポイント。これ以上ない後半戦のスタートになりました。

とはいえ苦手な夏も本番が始まり、次は不調を脱したガンバが相手です。
進化したスタイルを見せつけてくれるのか。変わらず元の単騎特攻が出てきてしまうのか。近場のアウェイで注目の一戦が待っています。

スタイル的には得意な相手ですが、果たして。

以上です。
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