リーグ戦の間が空くたびに見失う自分たちの「型」 J1第22節vs柏レイソル マッチレビュー
試合サマリー
前半
試合開始からエンジン全開で仕掛けたのはまさかのレイソル。
ミッドウィークの試合有無による影響は全く感じられず、不意打ち気味で受けたキツいプレッシャーと徹底したサイドバックの裏狙いに面食らってパニックに陥ってしまいました。
自陣に釘付けにされ何もできないまま時間が過ぎていきます。
個人の良い守備や際どいオフサイドに助けられ0で押さえていましたが、ロングボール対応でまさかの大ミスが発生。
抜け目なく細谷に決められ0−1。
何一つ型を作れないまま前半終了。
開幕鹿島戦に並ぶ、というか超えるレベルの悲惨な展開でした。
後半
谷内田の投入でボールが循環し、谷内田のサイドチェンジでスタジアムの雰囲気が変わり、谷内田のゴールで試合の展開を覆せた...と思ったのですが、VR介入とオフサイド判定でノーゴールに。
勝ち筋の一つであった「立田の投入」で生まれそうだったPKも判定はファールなし。
厳しい判定も混じり最大の得点機会を失ってしまいました。
その後は無策に近いトリプルタワーにぶつけて何とかする作戦を敢行。
しかし、トリプルタワーを建てるためにボールを奪い前線に供給できる選手をOUTにしたツケが見事に回ってしまいます。
パトと原に当てれば何かしらの可能性は感じられるとはいえ、当てる回数自体を減らしたことで生まれるチャンスは限定的に。
めぼしいチャンスはなく無得点で0-1の敗戦。
他会場では湘南と横浜FCが揃って勝ち。
中断明けの一戦で「残り試合12・最下位とのポイント差13」とするどころか、着地は「残り試合12・最下位とのポイント差7」で、残留争いの当事者に逆戻り。
最悪の結果になってしまいました。
PickUp:「全然うまくいかない」の正体
チームへのフラストレーションが溜まった試合でもありました。
レフェリーの判定以上に。
「上手くいく・いかない」はすなわち「機能する・しない」と言い換えることができます。
90分通じて感じ続けた
「なんでこんなうまくいかんのだ」
の違和感である機能不全の要因を具体化します。
サンガが機能する時
このノートでも度々書き続けていることですが、今年のサンガのサッカーは
ロングボールにより敵陣にボールを運び
FWが収めたり裏に抜けられればそこから攻撃を開始し
マイボールにできない/奪われたらハイプレスを仕掛け敵を深い位置に釘付けにする
ボールを奪回できればチャンス、できなくてもハイプレスで自由にさせず精度を奪い雑なパスを奪って回収
最初に戻る
のサイクルを回せているときが良いサッカーです。フローチャートで書けそうですね。
キーになるのは「ハイプレス」「ロングボール」の2つで、これが機能しているかどうかで大枠が決まります。
これを前提に、レイソル戦が上手くいかなかった点を時間に沿って見ていきましょう。
壊滅的だった前半
①止められない松本のキックと裏抜け
相手GKの松本。まともに試合に出始めたのは今年からの選手で、完全にノーマークでした。背番号"46"から伺えるように。
誤算だったのはキックの精度。
ロングボールの飛距離はもちろん精度がとても高い。緩めとはいえサンガからのハイプレスを受けても全く動じず。
的確にハイラインの裏(赤いところ)にボールを供給し続けました。
キックミスなくロングボールを細谷に当て福田の裏に落とすことで、サンガのハイプレス空転はもちろん、ハイプレスを支える前提になるDFのハイラインが崩されました。
次は個人の話。
わかりやすいほどに狙われた右サイドバックの裏。
福田のパス成功率54%はつまり「ボールを持てば2回に1回はミスをする」ということ。空中戦でもミスは多く、対峙したサヴィオの裏抜けに付いて行くことすらできず。
(スピード負けは仕方ないにせよ、集中を欠いているのかスタート時点で負けているのでは話にならない)
ならばレイソルは、複雑に足元で繋いでリスクを負う必要など全くありません。
福田の裏に蹴っ飛ばせば被カウンターのリスクなくボールを前線に届けられ、起点を作りチャンスができる。
仮にサンガボールになってもミスを誘えば50%で回収できるのです。
いわゆる「やっとけ得」ですね。遠距離から波動拳打っておけば近づけない近距離キャラへの対策みたいなもの。
リスクよりリターンが偏って大きいシンプルな戦い方を追求したレイソルに上回られるのは当然の話です。
②下がるDF・狙われるビルドアップ
開始直後から激しいハイプレスを受けました。
細谷単騎であればなんとでもかわせるのですが、厄介だったのは山田・サヴィオの連動。
細谷が追い込み、山田はバックパスを狙うことでコースを限定し、サヴィオが金子に激しく当たることで唯一の出口も塞がれました。
ここ最近の京都のビルドアップは「GK・CB2・アンカー1」の4枚でスタートし、サイドバックは高い位置を取ることがほとんどです。
(佐藤はやや低く、右は高めに位置するのも傾向の一つ)
サンガの4枚に対してレイソルは3枚で激しくチェイシング。
パスコースは消失し苦し紛れににサイドに預けるのが精いっぱい。
CBの二人はエリア付近で、太田は自陣ゴールのすぐ前で触りたがることが多いですが、そんな低い位置で触っても相手には何の脅威にもなりません。
エデルソン・西川周作のようにワンステップで70m先に吹っ飛ばせるならいざ知らず。
最深部から蹴って届くのはせいぜいハーフウェイラインであり、ハーフに落ちてくるロングボールなど相手守備陣からすれば美味しいおやつです。
ゲームに緩く入りミスが多発したことも相まってラインを下げたことが、攻撃にまで悪影響を与えてしまいました。
③前後の分断・バラバラの意識
DFのビルドアップとも関連する話です。
金子が狙われているのであれば、福岡と平戸は落ちて助けてあげないといけない場面でした。
平戸は我慢して前に残ることが多い一方で、福岡は良くも悪くも欲しがって落ちることが多い選手。なのに落ちないのはなぜか。
「前で山崎に当てたボールを拾いたい」がゲームプランであり戻りを我慢していたと考えるのが素直です。
にもかかわらず、狙われて危険を招くビルドアップに終始し、ロングボールも意図が見えない中途半端なボールばかり。
前にいきたいのか?後ろから組み立てたいのか?
ハイプレスであたりに行くのか?抑え気味にいくのか?
11人の動きが全く統一できていません。
入りが緩い。準備ができているように見えない。
和歌山キャンプを揶揄する声はキツいコメントだと思いつつ、ここまでチームとしての「型」を失った京都に戻ってきたのであればやむを得ないと思います。
「鹿島戦を見ているよう」とのコメントをTLで見ましたが、それもそのはず。
試合に緩く入ってミス多発。相手のペースが決まってしまう。
想定外の強度でのハイプレスを受けビルドアップが崩壊。面食らってパニックに陥り修正やリカバリーに思考が回らない。
中途半端なハイプレスを後ろからのハイボールで回避され攻撃の糸口すら掴めない。サイドバック裏に蹴り込まれ続けて起点を作られ続ける。
一つ抽象化すれば、起きていることの根底はアントラーズ戦と全く同じです。前から追ってくる選手が鈴木優磨・知念なのか細谷・山田なのかの違いはあっても。
似てるのではありません。同じなのです。
後半の挽回→失速
後半が開始してゲームを握れた時間帯がありました。谷内田のパフォーマンスはもちろんですが、足し算引き算の話も大きい。
(アピの空中戦もありますが個人の話なのでいったん置いておきます)
レイソルの3枚を太田含めて4枚で受けていた前半と変わり、陣形を変えた後半は6枚を後ろからのビルドアップに当てました。
+2枚で回せばそりゃ繋がる回数は増えるものです。パスコース(青い矢印)が生まれました。
そして、幻のゴールあたりを境に失速したのもまた、陣形を変えたことによるものです。
後ろで枚数を余らせれば必然、前の枚数は不足します。
ロングボールを放り込めどパトリックと原は囲まれるばかり。孤立したパトリックが4〜5人に潰されて奪われたシーンもあり、山崎の落としを上手く拾って次に繋げてくれる豊川がいかに必要かを感じます。
繋がるかに見えた前線と後衛は結局また分断されてしまいました。
タワーが3本あっても4本あっても、戦ってボールを奪い前線に供給する選手を自ら手放してしまっては、チャンスはおろか当てることすらままなりません。
前線の孤立とそもそもボールを持つ時間そのものを失ってしまいました。当然、ハイプレスやロングボールでチャンスを生む回数も減ってしまいました。
一撃に賭けたい気持ちは理解しますが、トリプルタワーは大スベリの失策でした。
大事なレイソル戦でぶっつけでやることなのでしょうか。
意味のないパス回しとは
なぜサンガの選手は組み立てができないのか。
技術の問題はあるにせよ、それ以前に「パスを当てる先の選択」と「ポジショニング」のミスがとても大きい。
象徴的なシーンを解説します。
太田が拾ってからの組み立て直しを狙う場面。
赤いゾーンに密集するサンガの選手たち。
レイソルの選手5枚に対してサンガは6枚であり数的有利。にもかかわらずあっという間に追い込まれ、金子から福田を狙ったパスがカットされカウンターになりました。
攻撃側においてスペースは広ければ広いほどよく、この場面で狙うべきは青で囲った三竿かバックライン裏です。
自分たちで意味もなく密集してスペースを消した挙句、各駅停車で隣の選手にパスを渡すだけでは、ボールを動かしても相手は動かないのです。
形式的にボールは動かしている。
でも選手間の距離が不適切(近すぎる)な状況でパスを出していて、隣の選手にとりあえず渡しているだけ。
するとどうなるか。
微修正で対応できるから相手守備陣を動せない。
次の動きの予測が容易で狩場を作りやすい。
予測を裏切れないから守備の判断ミスも起きない。
こうして「崩れてサンガの選手がパスを受けるスペースが生まれる」といったシーンが生まれず、窮屈で「うまくいかない」と感じるシーンが増える。
そうこうしているうちにパスが浮いたりトラップが流れたりして余裕がなくなる。そこを狙われて強く寄せられるともう蹴っ飛ばすしかない。
蹴っ飛ばすにしても寄せられて余裕のない状況でボールも雑になる。
「ここに蹴るしかないだろう?」と余裕を持って対応するDFに刈り取られ、しんどい守備時間の開始。
ずーっと、ずーっと、これの繰り返しです。
あくまでワンシーンの切り取りですが、この試合を通じてはもちろん、今シーズン全体でも似たようなシーンがとても多い。
逆に、広いスペースにポジションを取った選手に大きく展開できるとどうなるか。決定機が生まれていますね。幻のゴールが生まれた唯一のチャンスらしいチャンス。
山崎→木下で逆サイドに大きく展開し、外されてパニックになったレイソル守備陣が木下のカットインに4人引きつけられ、三竿がフリーになり高精度のボールを供給できエリア内でフリーのシュートに繋がったシーンです。
(ハイライトを見て「なぜシュートに繋げられたのか」を追っていくと楽しいですね)
90分を通じてそれがたったの一回では点は取れない。
上手くいかないと感じるのも当然です。
今回書いたポジショニングや崩しの話は、私が考えた最強の崩し理論や独自の戦術論ではありません。
人数(味方と相手の差)
スペースの有無
ゴールからの距離
と、サッカーにおける基本要素に沿って、起きた現象を当てはめているだけです。
普通のレベル以上のコーチがいるチームであれば町の小中学生のスクールでも教えているような内容ですよ。
ボールを使わないとかキツい追い込みも結構ですが、課題はそこなのでしょうか。突き詰めるべき基本は他にあるのでは。
と感じてしまったポイントです。
総括
「90分フルタイムでうまくいかなかった」のは、サンガ側の誰が見ても明らかなゲームでした。良いゲームをする度に、またはオフ・キャンプ・ルヴァンでリーグ戦の間ができるたびに緊張感を欠いて悲惨なゲームが生まれる悪癖はバリバリ健在。
同じパターンを何回繰り返すのか。
谷内田の輝きと、左サイドバックの補強が不要になった安心感しか収穫がありませんでした。
長くなったので個人評価はお休みです。ぼそぼそとツイートで書くことにします。
(谷内田・三竿・山崎・豊川の4人からはポジティブなものを感じました)
見る人によって良い悪いの差も出ないでしょうし。
以上です。
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(普段は文章が多いnoteですが、ちょうどいい機会なのでフォーメーション付き図解を増やしてみたところ、めちゃくちゃ時間かかって折れそうになった心を奮い立たせました…)
最後までご覧いただきありがとうございました!
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