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PKを献上した福田の役割と責任 J1第32節vs川崎フロンターレ マッチレビュー

前半

直近湘南・新潟戦のゲーム内容と苦手等々力での試合。難しいゲームになることが予想された試合で、開始早々予想外の流れに。

GKを始点とした後ろからの組み立てで大きく右に展開。受けた福田がカットインし左足を振り抜くと、グラウンダーのシュートがポスト内側に当たってゴールイン。
開始7分でまさかのサンガ先制。

先制のよい流れそのままにサンガペース。
主導権を握る鍵になったのは、サンガの高い位置からのプレスと後ろからのビルドアップで見せた変化。

プレスでは無闇に飛び込まず、まずは相手のアンカーであるシミッチへのラインを徹底封鎖。シミッチへのコースを消せたら落ちてくる2CHをケア。
出しどころを失わせることでDFラインでのパス回しへ誘導し、ハマらせる。

DFから苦し紛れに蹴らせることでゴミスに入ってもサポートが遅れることに繋がりました。
ゴミスを孤立させて回収し攻撃へ繋げることに成功。

ビルドアップでは少ないタッチでテンポよく回し、相手を動かし崩すことができていました。
目立ったのは太田とヘンリーの2人。特に太田は、リスクを追ってでも自分のパスで剥がして味方に優位を作る意志を常に見せ続けてくれました。
狙われて危ないシーンもありましたが、全体を見るとチームにもらたしたメリットはとても大きいと感じました。

良いペースだと思っていたところで失点。
空中戦のこぼれ球をアピが後逸し入れ替わられ宮代が独走。きっちり決められ同点に。
焦るような場面ではないのに軽率に飛び込んでしまいました。

不用意なロストからのカウンターや、左サイドバックの裏を崩されてのピンチが見られるものの、なんとか耐えることで一進一退気味で試合を進められることに。

我慢して迎えた前半42分、また後ろからの組み立てを起点に原が左サイドを攻略。ジェジエウをかわしてあげたクロスに豊川が合わせて勝ち越し。
相手を動かして崩したことで中の枚数は3対3になっていて、いいクロスが上がれば豊川ならマークを外して決めきるところまでやってくれます。
「こんな形をこれからも多く作れればいいのにな」と思わされるような良い形でのゴールだったと感じました。

直後にまた追加点。
福田のフリーキックをエリア内の原が頭で落としたところで、またまた豊川。両手で数えられる位のボールタッチしかできていない豊川でしたが、いざボールがこぼれてきたときにすぐに反応できる集中力の高さ。技術面以上にメンタル面での安定感でも輝きを見せてくれました。

等々力でのスリーポイントが見えたと思った矢先にすぐさま失点。
クロスが流れて、左右に転がった所の1対1で武田が飛び込んでかわされフリーでクロス。小林悠に中でフリーで合わせられきちんと決められ3ー2へ。
飛び込む必要な場合のない場面で飛び込んでしまう軽率なプレイでした。

3-2で前半終了

後半

フロンターレは、明らかにコンディション不良だったジェジエウとシミッチを交代。ディフェンス面での穴を防ぎます。

守備の安定が攻撃の安定につながり、フロンターレの攻勢が強まってしまいました。
また、サンガのプレッシャーは相手のアンカーやCHを抑え、中を締めてサイドに誘導するスタイル。それに対し、本来サンガがハメたいはずのサイドの2列目ポジションを起点にしたパスワークが秀逸で、サンガの左サイドバック裏を突かれる回数が増え危険なシーンが増えてしまいます。

麻田の裏(ヘンリーとの間)をケアしたいここで京都が5バックに変更。
シンプルにセンターバックを1枚増やすことで、相手に機転を作られ続けた左サイドバック裏のスペースを消すことに成功。

しかし残念ながら…
右を立てれば左が、左を立てれば右が立たなくなるのがサッカーというスポーツです。後ろのスペースを埋めれば必然、前線の枚数が減ってスペースが生まれてしまいます。

機能していた前からのプレスの強度が落ちてしまい、攻撃を受ける回数そのものが増えてしまいます。また時間が進むにつれ体力的にも限界が。
前線でのプレスの核となる山﨑と豊川が交代したことで、プレッシャーは完全に機能しなくなってしまいました。
※5バックにするたびにサンガが陥る悪いパターン。ルヴァン決勝でアビスパが5バックの見事なゾーンプレスを見ていただけに、フォーメーションそのものが抱える欠陥ではないものと推測。基本となる4-3-3以外のシステムと異なる配置をしたことによる不慣れであったり、チームとしての戦術理解や浸透が不足していることが原因と考えています

そんな状況から生まれるのは川崎の攻撃心ばかり。
それでも個々の頑張りをベースに耐えつつギリギリまでリードを維持。していたのですが…

89分、瀬古に巧みにかわされ見事なスルーパスがマルシーニョに。ギリギリのところで追いつききれず福田が接触しPKに。落ち着いて決められ同点。

その後は長いアディショナルタイムを過ごし、3-3で試合終了。

残留に向けて大きな前進となる1ポイントを得たこと。
得た場所が苦手川崎のホームである等々力であったこと。
攻守の課題がクリアされそうな気配を感じられたこと。

2点リードを追い付かれるメンタルに響く内容ではあったものの、収穫も多い試合だったと感じました。
ガンバを抜いて一つ上の順位になったのも面白いところですね。

PickUp:役割を果たせているか

この試合で目立ったのは福田でした。
得点に被PKにと良くも悪くも印象に残るプレーで、試合後のTLでも言及する声が多かったと感じます。

そこで気になったのが「あんな守備では得点や良いプレーが台無し」といった声です。
遅れて強く接触しPKを与えてしまったのは事実ですが、責められるべきは福田であり、なぜならばPK献上に直接関与したからだとのロジックは妥当なのでしょうか。
(この流れで察することができると思いますが、そんなはずはありません)

具体的に…。被PK時の配置を振り返りましょう。

福田がマルシーニョに裏をとられてしまった場面がこちら。
たしかにマルシーニョのマークは右サイドバックの福田ですが、福田とアピの間に位置する橘田を誰も見ることができていません。

ピッチの横方向に5人を並べておいて、DFと DFの間にこれだけ大きなスペースを作っているようでは…。前の枚数を削って後を厚くている意味が薄れてしまいます。
5バックを活かせないチームとしてのミス。

するとどうなるか。
福田はマルシーニョだけでなく橘田にも対応できる場所に位置取るしかありません。この部分だけ切り取ってみるといわゆる1対2の数的不利で、大変に厳しい状況であったことがわかります。

このような数的不利に陥ってしまったときに、選手が取るべき選択肢は何か。
相手と相手の間に位置し両方ケアできる位置で、ボールが出た際はどちらにでも行けるポジションを取るのがセオリーです。
言い換えるならマーク対象であるマルシーニョに「張り付いてはいけない」という状況をチームが作ってしまったのです。

なぜそんな福田にそれほどまでに負担がかかる状況ができてしまったのでしょうか。 1個ずつ順を追ってみていきましょう。

まず1番大きな原因が金子の守備。

ボールホルダーの瀬古にプレッシャーに行って完璧に剥がされてしまいました。

相手のセンターバック2人に対して木下と武田もプレッシャーに行っているため、前線に3枚を割いてしまった=後から3枚の守備枚数を減らしてしまっています。
そんな状況に加えて金子が剥がされたことで、ボールホルダーに左右長短のパス/ドリブルの選択肢を与えてしまったことで、整っていたはずのチームの守備に歪みが生まれてしまいました。

次に、川崎と天馬のポジション。

問題はスタートポジションではなく、ポジションの修正の方です。
金子が瀬古に剥がされたのであれば内側にスライドして中央を埋めるべきでしたが、金子が剥がされた後の準備ができておらず、サイドへ誘導してハメるときのポジションそのままでストップしてしまいました。

セオリーで考えると川崎が中央を切りながら瀬古に当たり、天馬は脇坂を捨てて川崎がスライドした穴を埋めるべきだったのですが...。
反応が遅れ中央から橘田・マルシーニョへのコースを消すことができず。
(試合終盤の体力・気力ではやむなしの部分も大きいですけどね)

最後にDFラインのカバーとスライドの話。

かなり難しい要求であることは前提としてあるものの。
右大外の山根を捨てて、DFラインの選手が一列づつ右にスライドすれば危険なバイタルでフリーの選手を消すことができました。
アピ・福田間のスペースも埋められていたはずです。

上記で色々書いたように、福田の被PKに至るまでにはチーム全体で多くの守備ミスが発生してしまいました。違う失点に目をやれば2失点目の武田の飛び込み→かわされてフリーでクロスも大きなミスなのは間違いありません。

結局何が言いたいか。
同点となる3失点目PKに結果として直接関与したからといって、その選手だけが敗戦の責任を負うわけではない、ということです。

責められるべきは「自分の役割を果たしていない」ことであり、逆を返せば「役割を果たした」結果それでも失点してしまったのであれば、見た目の上では失点に関与したところで責められるべきではありません。
だって責任の範囲外だもの。

試合を通じてはもちろん、PK献上のシーンでも福田は果たすべき役割を果たしてくれていました。

個人ではなくチーム全体の問題として捉え、今後の改善に繋げる。
やるべきことはそれだけのはずです。
結果として最後の部分を担当することになった福田のプレーは言及すべき対象ではありません。
(チームのミスで生まれた数的不利を個の力で誤魔化せるスペシャルな選手になってほしい。そんな願望ならまた違う話になると思います)

さいごに

最近よく思うのです。「サッカーとはなぜこんなに面白いのだろう」と。
その答えの一つとしての仮説として「複雑さ」があるのかなと思っています。

具体的には…
一つの結果にいろんな原因や要因が混じっていて、何が正しいのかを解き明かすのが難しい。決まった正解がない。見方によって正解が変わるのが当たり前の世界でなお、起きた事象を分解して繋げて「これが一番正しいはずだ」を見つけていくのが、たまらなく楽しいのではと。

そんなスポーツなので「失点=DFが悪い」「無得点=FWが悪い」「パスが回らない=MFが悪い」みたいな話は違うよなあ。といつも思っています。
そして「最も正解に近い答え」を分かりやすく提示し続けられるようになれるといいのになあ。とも思っています。

今シーズンも残りわずか。プライベートと仕事の多忙が重なって書くのが遅くなりましたが、最終節までやり切ります。
楽しんでもらえるよう頑張るのみ。

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