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『私がオバさんになったよ』 / ジェーン・スー |誰かの話は心に刺さる対談集

いいタイトルの本。
オバさんでなくても刺さる話がどこかにある。
昔からジェーン・スーは頭が良くてフェアな人と思ってる。相手の話の要点を掴んで、膝を打つような返しをする。ワードセンスもあって、秀逸な例えをする。そんなジェーン・スーの対談集なら、そりゃ面白い。

対談相手の人選もいい。光浦靖子に山内マリコや海野つなみ、宇多丸ときて、最後は能町みね子。
女性が多いので、ジェンダー論、フェミニズムの話になることもある。しかし、田中俊之との対談では、男性の生きづらさの話をしっかりしてくれる。
フェアな対談集だな〜と思う。

中でも面白かったのは、脳科学者の中野信子との対談。話が上手な脳科学者の話ってこんなに面白いのか…もちろんジェーン・スーの聞き手としての能力が素晴らしいってのもあるけど。

『AI時代、役に立たない面白いものが大事になる』ってのも納得したし、面白い視点だった。大抵のものは代用できるから、今みんながスルーしてる部分がたしかに大事になってきそう。

あとは『疎外されている、マイノリティでいることって大事で、繁殖するだけなら、アメーバの形がベスト、でも多様性に乏しいから病気とかで1発で滅びる』って話もよかったな。なんとなく上から目線でマイノリティを守ろう、多様性を認めようみたいな話をする人が多くて、うんざりする部分があるけど、ちゃんと理屈としてその違和感に対して納得できたのは発見だった。

その視点でいうと、『どんな人でも多様性の一端を担っている可能性がある』というのもたしかにマジョリティ側にいると思ってる人多すぎると思ってた。多様性を受け入れるって自分がマジョリティ側にいると思ってる上から目線だよな〜って。このへんは『正欲』を読んでも思った話だな。

生きるモチベーションについて尋ねられると、『意識は体のオプション』という回答が返ってくる。体という機械が動くのが1番で、そのための意識という発想は今までなかった。生きるとは、と考えると、どうしても意識とか、心とか、精神的なものの位置を高くしてしまいがちだけど、そうじゃなくてもいいんだ、と心が軽くなる発想だった。

脳科学者の本にめちゃくちゃ興味がわいたし、今後もまたいろんな本を読みたくなったけど、他の人達もいろんな新しい視点を持っていて、読んでいていろんな発見がある。

宇多丸の話はラジオでいつも聴いているんで、間違いないのはわかっていたけど、2人が大学時代の先輩後輩だからこその話も多く、知らなかった面が色々垣間見えるのがいい。

逃げ恥作者の海野つなみとの対談では、『男性は突き詰めたくない人が多い』という話もよかった。女性が自分のことを話すのに対して、男性はあまり話したがらない。たしかに男同士で内面的なことを話し合うってのが想像つかないもんな…自分の弱さと向き合いたくない、特に男性同士で弱さを晒し合うってのはイメージできないし、それが自殺率の高さと関係してるんだろう。そーいう部分が今後良くなっていけばいいけど、まだ想像がつかないから怖くなったな…

とにかく全部の対談が面白かった。職業や性別、未婚、既婚など、どんな属性をもった人でも何かしら響く部分があるんじゃないかな。自分にとっては、脳科学者への関心、多様性、家族のありかたなんかを考えるキッカケになった。万人におすすめできるな〜とにかく手にとってパラパラめくってほしい。おすすめです!


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