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ミルボンが推し進めるサステナブルな容器包装への取り組みと中期事業構想の関係

業務用ヘアケア用品のトップシェアを誇るミルボンが商品ボトルの仕様を変更しました。
ボトルの薄型化にはどんな意味が込められているのでしょうか。

■ミルボンがヘアケア商品の容器仕様を変更

美容室向けヘアケア商品の総合メーカーであるミルボンが主力商品について、容器ボトルの仕様を変更しました。
変更点は次の通り。

◎容器ボトルの薄型化
◎詰め替えパウチのキャップ変更

変更点について詳しくみていきます。

・容器ボトルの薄型化

ミルボンは、展開するヘアケア商品「オージュア リーブイントリートメント」の17商品と「エルジューダ」の3商品の容器ボトルを見直しました。
その結果、品質はそのままに、従来のボトルよりも容器を薄くすることに成功。
これによりプラスチック使用量について年間4.3tの削減が実現するとのことです。
薄型ボトルはまず「オージュア インメトリィ」と「エルジューダ サンプロテクト」から投入され、順次適用となります。

・詰め替えパウチのキャップ変更

容器の仕様変更は詰め替えパウチでも実施されています。
これまでミルボンでは400・600・1000mlの詰め替えパウチすべてにキャップをつけていましたが、400mlの詰め替えパウチはキャップレスへ変更しました。
600・1000mlについてはキャップを小型化することに成功。
これにより年間5.7tのプラスチック使用量を削減できるとしています。
ミルボンではすでにヘアカラー剤のプラスチックキャップの小型化に取り組んでおり、年間55tものプラスチック使用量の削減に成功済み。

■30%削減を目標にサステナブルな容器包装に取り組む

こうした取り組みは、サステナビリティに基づいた方針から生まれています。
ミルボンでは経営陣までを含めた一人ひとりが持続可能な社会の実現に向けて考え、行動するとしており、5つの最重要課題を掲げています。
そのうちの一つが「再生・循環型の清算・消費活動」というもの。
社会課題解決と持続的な事業成長を両立するために掲げられた重点取り組みテーマは、サステナブルな容器包装の設計です。
2020年比、売上原単位としてKPI(中長期テーマ)を石油由来バージンプラスチック削減率、2026年目標を15%削減、2030年目標を30%削減と定めています。
日本国内にて美容室向けヘアケア市場でトップシェアを誇るミルボンだからこその未来志向な取り組みといえるでしょう。

■ミルボンとは?

ミルボンはヘアケア商品を製造販売する会社です。
特徴はなんといっても美容室向け専門という点でしょう。

・20年以上も業界シェア国内トップであり続けている

一般的なヘアケア商品は一般消費者向けであることが多いなかでミルボンは美容室向けの商品のみを取り扱ってきました。
ヘアケアに関する悩みに対し、髪のプロである美容師を通じてアプローチすることで商品の品質に高い価値をつけることに成功。
これにより20年以上もの長きにわたり業務用ヘア化粧品のシェア国内トップを独走しています。

・売上高が落ちたのは過去に2回のみ

業界シェア率トップを誇るミルボンは業績も順調に伸ばしています。
売上高が落ちたのは決算期の日数変更があった時と、コロナ禍の時の2回のみ。
それ以外はずっと前年度比を上回る売り上げを上げてきました。
ミルボンではお客様だけでなく、商品を扱う美容師の目線も重視して製品開発を行っています。
また、市場政策の発信により会社としてどのように美容室のサポートを行うのかという姿勢を社員に浸透させる仕組みづくりが整っています。
こういった一見すると地味に感じられるような活動を丁寧に行うことが会社としての成長を支えているのでしょう。

■他分野企業との協業を視野に研究施設を開設

ミルボンはさらなる成長のため、ヘアケア領域だけでなく、スキンケアやビューティヘルスケアなどの多分矢部の事象領域拡大に取り組んでいます。
それが「ビューティプラットフォーム構想」です。

・他分野企業との協業を視野に

ミルボンの中期事業構想は2022年度を初年度とし、2026年の達成の目指すとしています。
ビューティプラットフォーム構想とは、美容室のあり方を改革するというもの。
単なるヘアサロンであった美容室を、美を通した豊かさを届けるビューティプラットフォームへ発展させるのが狙いです。
店舗起点型のサロン「スマートサロン戦略」と他分野への領域拡大を図る「ビューティライフケア戦略」の2つの戦略をメインに据えて展開させていくとのこと。
このビューティプラットフォーム構想では他分野への事業領域拡大が戦略として盛り込まれており、次期以降も続くと考えるのが自然でしょう。
実際にミルボンが所有する中央研究所は広々としたフロアにて長期的研究がおこなわれています。

・羽田イノベーションシティに研究施設を開設

ミルボンが新たな研究拠点として選んだのが羽田イノベーションシティです。
羽田イノベーションシティとは、羽田航空跡地の整備事業で誕生した日本初のスマートエアポートシティのこと。
広大な敷地には企業の研究施設や研修センターなどがあります。
将来的に他企業との協業を検討しているミルボンもこの羽田イノベーションシティに研究施設を開設しました。
ミルボンはこの研究施設開設にあたり、先端科学を基にした未来の暮らしをつくる企業のイノベーション事業が集結しており、協業の活性化が期待できるとしています。
羽田イノベーションシティにはホテルやショッピング施設、ライブホールなど、一般の人向けの施設も充実しています。
先端産業と文化産業が集まる羽田イノベーションシティは、現行の羽田空港第3ターミナル駅から1駅の天空橋駅に直結しており、グローバル戦略に力を入れるミルボンには最適の立地といえるでしょう。

■社長人事の発表により新体制がスタート

中期事業構想にはグローバル戦略も含まれています。
アジアNo.1、世界ベスト5を目指すミルボンは日本を含める14の国と地域に進出しており、これを「7つのリージョン」と名付けています。
7つのリージョンとは、次の国と地域を指します。

◎日本
◎韓国
◎中華圏
◎ASEAN
◎北米
◎EU
◎中東

それぞれのリージョンごとに異なる文化や価値観に対応しつつ、美容産業の発展に貢献するというのが戦略の概要です。
ミルボンではグローバル戦略の推進とさらなる企業価値の向上を図るべく、2023年10月13日、社長人事を発表しました。

・社長人事

2024年1月1日付として行われた社長人事は次の通りです。

◎佐藤龍二氏:代表取締役社長から取締役会長へ
◎坂下秀憲氏:取締役 経営戦略・情報企画・コーセーミルボンコスメティクス担当から代表取締役社長へ

佐藤龍二氏は2008年3月から約16年、代表取締役社長を務めてきました。
今回の社長人事により代表権のない会長となり経営陣のサポートを担います。

・新社長の坂下秀憲氏とは

新社長に就任する坂下秀憲氏は2001年4月にミルボンへ入社後、2010年10月にはミルボンUSAの社長に就任します。
その後も経営戦略部長に就任するなど、国内外にて得た豊富な経験と実績を基に企業の成長に貢献してきました。
ことグローバル戦略においては大きな力になるとの期待と、経営トップの若返りの観点から今回の社長交代に至ったとのこと。
1959年生まれの佐藤龍二氏に対し、坂下秀憲氏は1976年生まれです。
今回の社長人事によってミルボン経営のトップは実に17歳の若返りとなりました。

■ミルボンの企業情報

続いてミルボンの企業情報をチェックしていきます。

・会社概要

◎社名:株式会社ミルボン
◎所在地:〒104-0031東京都中央区京橋2丁目2番1号 京橋エドグラン
◎URL:https://www.milbon.com/ja/

◎代表:代表取締役社長 坂下秀憲
◎設立:1960年7月
◎資本金:20億円

国内に2つの研究所と8つの支店、11の営業所を所有。
また、工場と研修所が1つずつあります。
海外の14地域に子会社もあり、精力的な事業展開を行っています。

・「私たちのあり方 The Way We Are」

ミルボンには2012年に策定された「THE MILBON WAY」という冊子が存在します。
継承と革新をテーマとして、ミルボンのイズムや経営哲学、経営戦略がわかりやすく解説されたもので、ミルボングループの全社員に配られているそう。
設立から常に成長を続けるミルボンのあり方を言語化することより、あらゆるビジネスプロセスにおける判断基準となるべく様々な方針が明文化されています。

・ミルボングループの倫理行動指針

ミルボングループの社員一人ひとりが「THE MILBON WAY」を実践できるように定めてあるのが9つの倫理行動指針です。

◎安全で優れた商品・サービスの提供とお客様の信頼獲得
◎地域社会への貢献と共存
◎環境への責任
◎人権の尊重
◎ビジネスパートナーとの公正な取引と相互発展
◎社員の職場環境の整備
◎株主や投資家の理解と支持
◎政治・行政との健全な関係
◎反社会的勢力への対処

グローバルに展開するミルボングループでは、それぞれの国や地域にて法令順守はもとより、社会倫理に適した高い倫理観を持って行動できるよう、社内体制の整備や研修の実施などにより社内浸透を徹底しているそうです。

・美容の力で社会に貢献する

膨大な情報量と多様化する価値観のなかで個人がいろいろな選択をしなければならない現代では、「自分らしくありたい」と考える人が増えています。
ミルボンではその考えに寄り添えるよう、美容の力で社会に貢献し続けるとしています。
また、そのためには会社自体が持続可能である必要があり、経営指針でもあるサステナビリティが重要な役割を果たすとのことから、原料資材の調達から製造販売、消費後までを考えたサプライチェーン全体でサステナブルな社会づくりに貢献していくとのこと。
中期事業構想で掲げた「アジアNo.1、世界ベスト5」の先には「グローバルNo.1」という未来を見据えています。
 

美容室向けのヘアケア商品を製造販売するミルボンがプラスチック使用量削減を目指し、商品のボトル容器を仕様変更しました。
2030年には30%の削減を目指すサステナブルな容器包装の設計の一環とのことで、順調な様子がうかがえます。
中期事業構想を見据えた研究施設の開設や社長交代など、業界トップシェアを誇るミルボンは今後も躍進が期待できます。

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