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#9 解説『日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学』【問2.2】後編

 こんにちは。練習問題が第5章まで進み、テンションやや高めの鰰です。今回遂に問2.2を解きます。今日もよろしくお願いします。

始めるに当たり

 今回の#9では、問2.2は解くが前提となる知識が非常に多い。以下の4点を理解している前提で解説する。

・分布の混合
・ポアソン分布
・ガンマ分布
・負の二項分布

 以上の前提となる知識をご存じでない皆さんは$${\darr}$$の#8をご覧いただきたい。


実際に解こう

 では、実際に解こう。まずは立式だが、これは少し注意が必要である。まず混合する2つの分布、ポアソン分布とガンマ分布をまずは明示する。

$${Po(\lambda)=\frac{\lambda^x}{x!}exp(-\lambda)}$$
$${f(x;\alpha,\beta)=\frac{\beta^\alpha}{\Gamma(\alpha)}x^{\alpha-1}exp(-\beta x)}$$

 それでは実際にポアソン分布とガンマ分布を混合しよう。ただし、注意点が2つある。まず1つめは#8での「分布の混合」でも述べた通り、ガンマ分布は連続型確率密度関数なので$${\int}$$を利用する。

 そして2つめは混合するときのガンマ分布の式である。今回は$${x}$$についてではなく$${\lambda}$$について混合する。つまりガンマ分布の$${x}$$の部分は$${\lambda}$$に変換する必要がある。厳密には積分の変数変換の処理を行う必要があるが、$${x=\lambda}$$である以上$${\frac{d\lambda}{dx}=1}$$つまり$${dx=d\lambda}$$なので特に何もすることはない。

 さあ、混合するぞ。ただ先に述べるが、これは以下のリンクを参考にした。というか、丸パクリなので引用元を示す。また便宜上求める関数を$${f(x)}$$とおく。

$${\begin{array}{} f(x) &=&\int_0^∞\frac{\beta^\alpha}{\Gamma(\alpha)}\lambda^{\alpha-1}exp(-\beta\lambda)exp(-\lambda)\frac{\lambda^x}{x!}d\lambda \\\ &=& \frac{\beta^\alpha}{x!\Gamma(\alpha)}\int_0^∞\lambda^{x+\alpha-1}exp(-\lambda(1+\beta))d\lambda \end{array}}$$

 ここで、変数変換を行う。具体的には$${\lambda(1+\beta)=\mu}$$にする。この場合、$${\frac{d\lambda}{d\mu}=\frac{1}{1+\beta}}$$つまりは$${d\lambda=\frac{d\mu}{1+\beta}}$$なので注意しなければならない。

$${\begin{array}{}f(x) &=& \frac{\beta^\alpha}{x!\Gamma(\alpha)}\int_0^∞(\frac{\mu}{1+\beta})^{x+\alpha-1}e^{-\mu}\frac{1}{1+\beta}d\mu \\\ &=& \frac{\beta^\alpha}{x!\Gamma(\alpha)}\int_0^∞\frac{\mu^{x+\alpha-1}}{(1+\beta)^{x+\alpha}}e^{-\mu}d\mu \\\ &=& \frac{\beta^\alpha}{x!\Gamma(\alpha)(1+\beta)^{x+\alpha}}\int_0^∞\mu^{x+\alpha-1}e^{-\mu}d\mu \end{array}}$$

 また#8で習った通り、$${\Gamma(\alpha)=\int_0^∞t^{\alpha-1}e^{-t}dt}$$を活用すると簡略化できることが分かる。

$${f(x)=\frac{\beta^\alpha}{x!\Gamma(\alpha)(1+\beta)^{x+\alpha}}\Gamma(x+\alpha)}$$

 また重要な公式がある。それは$${x!=\Gamma(x+1)}$$である(証明は省略)。

$${f(x)=\frac{\Gamma(x+\alpha)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(x+1)}\beta^\alpha(1+\beta)^{-x-\alpha}}$$

また同時に変数変換も行う。$${\beta=\frac{p}{1-p}}$$である。ただ既に$${\int}$$はとれているので、微分する必要はない。

$${\begin{array}{} f(x) &=& \frac{\Gamma(x+\alpha)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(x+1)}(\frac{p}{1-p})^\alpha(\frac{1}{1-p})^{-x-\alpha} \\\ &=& \frac{\Gamma(x+\alpha)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(x+1)}p^\alpha(1-p)^x \\\ &=& \frac{(x+\alpha-1)!}{x!(\alpha-1)!}p^\alpha(1-p)^x \\\ &=& _{x+\alpha-1}C_xp^\alpha(1-p)^x \sim NB(\alpha,p)\end{array}}$$

 本当は$${\alpha}$$よりも$${r}$$の方が良いので、$${\alpha}$$を$${r}$$に変換して

$${f(x)=_{x+r-1}C_xp^r(1-p)^x\sim NB(r,p)}$$

 よって問2.2が示された。


終わりに

 今回は非常に膨大な量の計算が必要でした。また重要な公式$${\Gamma(x+1)=x!}$$も登場し、覚えることも盛りだくさんの問と言えるでしょう。正直、どのように変数変換するかはその時思いつくか思いつかないかの運が結構左右されると思います。もうこれは日頃の訓練でしょうね。

 それでは最後までお読みいただきありがとうございました。コメントの方、お待ちしています。

参考文献
日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学(教科書)
singular point 『分布の混合による負の二項分布の生成』 http://www.singularpoint.org/blog/math/stat/poisson-gamma-negative-binomia/

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