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#4 解説『日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学』【問1.2】

 #4になりました。ここでは問1.2を解説します。よろしくお願いします。なお、解説の時には「です・ます」調よりも「だ・である」調の方が書きやすいので、そちらで書かせていただきます。


(1)

 コーシー分布と変数変換に関する問題。コーシー分布に関しては教科書のP.42をご参照してほしい。

 まず変数変換を行う。$${Y=\frac1X}$$の確率密度関数を求めるので、$${y=\frac1x}$$の変数変換をする。ここでの注意点は、確率密度関数の変数変換を行う場合には単に変数変換をしてはいけないことである。それはヤコビアンを変数変換の後にかけなければならない。今回は$${x}$$を$${y}$$に変換するだけなので$${\lvert\frac{dx}{dy}\rvert}$$がヤコビアンになる。

 それでは変数変換をしよう。まず$${y=\frac1x}$$なので$${x=\frac1y}$$になる。またヤコビアンは$${\lvert\frac{dx}{dy}\rvert=\frac{1}{y^2}}$$となる。これらをコーシー分布に代入して

$${f_Y(y)=\frac{1}{\pi(1+(\frac1y)^2)y^2}=\frac{1}{\pi(1+y^2)}}$$


(2)

 2変量正規分布と変数変換に関する問題。2変量正規分布を一般化した多変量正規分布に関しては教科書のP.44をご参照してほしい。

 ただ2変量正規分布の変数変換をするに当たっては本教科書よりも統計検定準1級の教科書の方が分かりやすいかもしれない。統計検定準1級の教科書『日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック』(以下、参考文献1)を参考にする。参考文献1のP.43によると以下の通り。

$${f_{XY}(x,y)=\frac{1}{2\pi\sigma_1\sigma_2\sqrt{1-\rho^2}}exp[-\frac{1}{2(1-\rho^2)}((\frac{x_1-\mu_1}{\sigma_1})^2-2\rho(\frac{x_1-\mu_1}{\sigma_1})(\frac{x_2-\mu_2}{\sigma_2})+(\frac{x_2-\mu_2}{\sigma_2})^2)]}$$・・・①

 ここで$${\mu}$$は平均、$${\sigma}$$は分散を意味する。また添え字が1の場合は$${X}$$の平均や分散であり、添え字が2の場合は$${Y}$$の平均や分散となる。さらに$${\rho}$$は$${X}$$と$${Y}$$の相関係数である。

 本問に戻ると、$${X}$$と$${Y}$$は各々標準正規分布に従っているので、
$${\mu_1=\mu_2=0,\sigma_1=\sigma_2=1}$$となる。さらに$${X}$$と$${Y}$$は独立であることから$${\rho=0}$$になる。これを①に代入すると$${X}$$と$${Y}$$の2変量標準正規分布の確率密度関数は以下の通りになる。

$${f_{XY}(x,y)=\frac{1}{2\pi}exp[-\frac12(x^2+y^2)]}$$

 2変量標準正規分布の確率密度関数を求めることができたので、続いては変数変換を行う。変量が2つなので$${X}$$と$${Y}$$を$${U}$$と$${V}$$に変換する必要がある。既に$${V=\frac{Y}{X}}$$があるので、残りは$${U}$$となるわけだが、これは単純に$${U=X}$$で良い。後に$${U}$$について積分するため、回答に$${u}$$が入ることはない。

 上記より$${u=x,v=\frac{y}{x}}$$となるが、これは$${x=u,y=xv=uv}$$のように書き換えることができる。一旦ここで置いておく。

 そして(1)同様、ヤコビアンを求める必要がある。2変量のときのヤコビアンは以下の通りである。

行列式は自分でWordに書いてスクショしました。これからもたぶんこうなります。

 このヤコビアンを計算すると以下の画像の通りになる。

これもWordによる自作です。

 ここまで揃えば$${U}$$と$${V}$$の確率密度関数を求めることができる。

$${f_{UV}(u,v)=\frac{\lvert{u}\rvert}{2\pi}exp(-\frac12(u^2+(uv)^2))=\frac{\lvert{u}\rvert}{2\pi}exp(-\frac{u^2}{2}(1+v^2))}$$

 今回は$${V}$$の確率密度関数を求める問題なので、$${u}$$について微分すると解ができる。

$$
\begin{array}{} f_V(v) &=& \int_{-∞}^∞\frac{\lvert{u}\rvert}{2\pi}exp[-\frac{u^2}{2}(1+v^2)]du \\\ &=&\frac1\pi\int_0^∞u\cdot exp[-\frac{1+v^2}{2}u^2]du \\\ &=& \frac1\pi[-\frac{1}{(1+v^2)}exp(-\frac{1+v^2}{2}u^2)]_0^∞ \\\ &=& \frac{1}{\pi(1+v^2)}\end{array}
$$


※補足

 自然対数を用いた積分は非常にややこしい。今回利用した自然対数の積分を下記でご紹介する。

$${\int_0^∞te^{-ct^2}dt=[-\frac{1}{2c}e^{-ct^2}]_0^∞}$$

 ここで$${c=\frac{1+v^2}{2}}$$に変更すれば上記の式がご理解いただけるであろう。


終わりに

 #4では、一気に問1.2を解説しました。変数変換の問題は数学的知識が必要ですね… 準1級のときも苦労した覚えがあります。

 それでは最後までお読みいただきありがとうございました。コメントの方、お待ちしています。

参考文献
日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学(教科書)
日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック(参考文献1)

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