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#11 解説『日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学』【問2.4】前編

 こんにちは。鰰です。今回は問2.4の解説の前半をしようと思います。よろしくお願いします。


本問への印象・前提となる知識

 はっきり言って、今回は勘が働くか否か。本番での勘の働かせ方の練習をするには良い問題と言える。ただやたらめったら勘を働かせるのではなく、ちゃんと理論には基づいている。その当たりにも触れれば良いのかなとは考えている。

 では前提となる知識を紹介しよう。まずはガンマ分布である。$${i=1,2,3}$$の条件下で、$${Y_i}$$は$${Ga(\alpha_i,\beta)}$$に従うことが示されている。また同時確率密度関数についても説明する必要があるだろう。

 今まで私のnoteを読んでくださった読者の皆さんはもう見慣れた式かもしれない。ただこれは頻出であろう分布なので以下に示す。

$${f(x;\alpha,\beta)=\frac{\beta^\alpha}{\Gamma(\alpha)}x^{\alpha-1}exp(-\beta x)\sim Ga(\alpha,\beta)}$$

 また同時確率密度関数は分布の混合と同じ考えで良い。ただ分布の混合は必要に応じて変数を変換したのに対し、同時確率密度関数は単に掛け合わせるだけで良い。つまり分布の混合のようにガンマ分布の$${x}$$を$${\lambda}$$に変換する必要もない。分布の混合に関しては$${\darr}$$を参考にしてほしい。

 以上が前提となる知識である。次項では、実際に解いてみる。


実際に解いてみる【前半戦】

 まず$${i=1,2}$$の条件下で、$${X_i=\frac{Y_i}{Y_1+Y_2+Y_3}}$$が示されているので、それを活用する。つまりは$${x_1=\frac{y_1}{y_1+y_2+y_3},x_2=\frac{y_2}{y_1+y_2+y_3}}$$とおく。ここまでは最低限できる必要がある。まず$${Y}$$の変数が3つであるのに対し、$${X}$$の変数が2つしかないこと、そして何よりこのままだと計算しづらいことが分かる。でも$${X_3}$$は特に指定されていないので、自分で立てる必要がある。

 順序としては、まずは$${x_3}$$を指定する。そして$${Y_1,Y_2,Y_3}$$の同時確率密度関数を求めた後に、$${X_1,X_2,X_3}$$の同時確率密度関数を求める。もちろんこの変数変換の際にはヤコビアンが必要なので事前に求めていることが前提である。そして最後に$${x_3}$$について積分することで$${X_1,X_2}$$の同時確率密度関数を求める。これが全体の流れである。

 今回勘が必要なところはこの$${x_3}$$を指定すること・方法である。

 上記にもあるとおり、$${x_1=\frac{y_1}{y_1+y_2+y_3},x_2=\frac{y_2}{y_1+y_2+y_3}}$$が与えられている。これでは$${y_1,y_2,y_3}$$の変数変換が行いずらい。それは分数があるからである。要は$${x_1x_3}$$ないし$${x_2x_3}$$で分数が消えれば良い。つまり、$${x_3=y_1+y_2+y_3}$$である。このように指定すれば後の計算が非常にやりやすくなる。

 つまり$${x_1=\frac{y_1}{y_1+y_2+y_3},x_2=\frac{y_2}{y_1+y_2+y_3},x_3=y_1+y_2+y_3}$$とする。このとき$${y_1=x_1x_3,y_2=x_2x_3,y_3=x_3-x_1x_3-x_2x_3=x_3(1-x_1-x_2)}$$となることが分かる。

 ヤコビアンの求め方は以下の通りである。

$${\begin{array}{} J &=& \begin{vmatrix} \frac{\partial y_1}{\partial x_1} & \frac{\partial y_2}{\partial x_1} & \frac{\partial y_3}{\partial x_1} \\ \frac{\partial y_1}{\partial x_2} & \frac{\partial y_2}{\partial x_2} & \frac{\partial y_3}{\partial x_2} \\ \frac{\partial y_1}{\partial x_3} & \frac{\partial y_2}{\partial x_3} & \frac{\partial y_3}{\partial x_3} \end{vmatrix}=\begin{vmatrix} x_3 & 0 & -x_3 \\ 0 & x_3 & -x_3 \\ x_1 & x_2 & 1-x_1-x_2 \end{vmatrix} \\\ &=& \begin{vmatrix} x_3^2(1-x_1-x_2)-((-x_1x_3^2)+(-x_2x_3^2)) \end{vmatrix} \\\ &=& x_3^2\end{array}}$$

 つまりヤコビアンは$${x_3^2}$$になることが分かる。いったんここで終わり、後編ではこれを用いて確率密度関数を求めていく。続きはこちら$${\darr}$$


[To be Continued…]

 最後までお読みいただきありがとうございました。コメントの方、お待ちしています。

参考文献
日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学(教科書)

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