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現代美術作家の戦略づくり〜アート、きっと、ユナイテッド〜

色々な構想や妄想、プロジェクトも既に走っているが、どっちの方向を見て進んでいけばいいか、何を頼りに進めていけばよいのか、具体的な施策を遂行する中で、途中で迷わないためには戦略が必要だ。

書籍『シンプルな戦略』によれば、

戦略とは、重要な目的を達成するための明快な方向性、およびそれに沿った一連の施策のこと。

と書かれており、主にビジネスの文脈で語られることが多いが、スポーツやエンタメなど、別の分野でも使われることがある。
そして、優れた戦略の三大要素は、
・顧客価値がある(顧客にとって嬉しいことか)
・差別化されている(他社とはなにが違うのか)
・収益性がある(自社は儲かるのか)
とも書かれている。

例えば、こんなことも戦略と呼べるかもしれない。
毎年数回会う姪っ子を喜ばせるという重要な目的がある人物が、それを達成するための戦略として、これまで姪っ子がもらってきたモノとは違うであろう、独自のワクワクするようなプレゼントを会うたび届ける。つまり、ターゲットへの価値提供と差別化を実践するのだ。
そのためには、トレンドのリサーチから始まり、同じ年齢くらいの子供がいる友人へのヒアリング、どんな店やサイトで商品を購入すべきかなど、一連の施策を含めて考える必要があるだろう。このような身近で何気なくやってることも入れてしまえば、戦略の使い道は様々な分野に及ぶ。

現代美術作家の戦略を考えてみる

今回この戦略という概念を、現代美術作家の活動にも応用してみることにした。芸術活動の発信の仕方や見え方(どのように世の中とコミュニケーションすれば良いか)を考えるなどの戦略なら作れそう。この戦略を作ることで、作家の理想の状態を作ることのお手伝いができるかもしれない。そんなことを思ったのだ。

そんな中スタートしたのが、現代美術作家である「野村康生応援プロジェクト」である。
野村さんは”Dimensionism”という概念のもと芸術活動をしており、人が普通には感じることができない高次元というものを、芸術というフィルターを通して感じさせようと試みている、気鋭のアーティストだ。社会へもう一つのありうる可能性を提示し、意識変容を引き起こす。世界の見方を変えることを目指して作品づくりをしている。

「野村康生応援プロジェクト」は、過去にSandSの高井が野村作品を購入していたり、ある企業製品のブランディングプロジェクトでご協力いただいたりするなど、野村さんと親交があったためスタートしたプロジェクトだ。今年私たちがSandSを立ち上げたことをきっかけに、野村さんから何か一緒にできないかと声を掛けていただいた。

戦略を作る上でまずは、野村さんの思想を9つの独自の視点で分解することから始めていった。野村さんの活動拠点であるニューヨークと私たちがいる東京をオンラインでつなぎ、私たちからインタビューをする形で進めていった。理解ができるまで何度もお時間を割いていただいた。そしてこれらのインタビュー情報をもとに、6つの切り口で整理を進めていった。

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つまり、インタビュー情報を通して、理想と現状のギャップを把握し、解決すべき課題を抽出し、その課題の解決の方向性と施策を構築する、という言葉にすると非常にシンプルな流れで進めていったのだが、そもそも野村さんの考えや歴史、芸術活動の内容はそんな単純なものではないという認識があったため、多角的な視点から周辺情報や文脈を理解し、時間をかけて丁寧に整理をする必要があると思った。

野村さんは約10年後の2030年代を射程に、あるスケールの大きな目的(理想の状態)を掲げていた。そこで私たちは、さらに解釈を加えて魅力的な戦略を作るために、2030年代の世界観を想像してみたり、トレンドは繰り返されるという前提に立ち、逆に約10年前の2010年代の歴史を掘り下げ、ヒントを得ようと試みた。
野村さん(と妻の奈津子さん)やSandSメンバー内で検討していく中で、これまでとは別次元で活動する新たなアーティスト像があるのではないか?という問いが生まれた。この問いに答える仮説が、芸術運動や社会運動としてムーブメントを起こす戦略になるかもしれない。議論を繰り返す中で、解像度が上がっていくのが分かった。

そのキーワードのひとつが“UNITED”である。

“UNITED” とは
アーティストが作品を通してメッセージや意図を発信するだけではなく、活動に共感・感化した人々が各々の主体性によって、そのビジョンの潜在的な可能性を引き出し、多角的な視点と様々な施策で広く世界へ伝播する、個人でもチームでもない有機的な活動体

個人でもチームでもない、ユナイテッドという視点から、最終的には「”Dimensionism”は、野村康生によって展開される現代美術の芸術運動および概念であり、これらによって触発された市民が様々な表現をしている様を指す。」と、”Dimensionism”の定義をアップデートすることにも言及することができた。

具体的な検討内容や戦略は、ここに記載することは控えておくが、策定した戦略をもとに、これから色々な施策を実行していく予定だ。まずは私たちと同じように、野村さんを応援する人たちとの対談リレーのようなものをしていこうと思う。
プロローグとして、SandS高井との対談を公開したので、ぜひ読んでもらえると嬉しいです。


来年2022年の夏に、野村さんはニューヨークから日本に一時的に凱旋帰国し、自身の出身地である島根県で展覧会を開催する。そこをひとつのマイルストーンに置きつつ、将来の展開を見据えて、今回作った戦略を少しづつ実行に移していき、現代美術作家の応援を続けていきたいと思う。

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