ネタバレあり、シン・エヴァンゲリオンのこと

シン・エヴァンゲリオン劇場版を見ました。公開日です。公開日に見たかったので予約解禁の0時に待機してユナイテッド・シネマで予約しようとしたらチケット販売サイトが落ち、購入できたのは2時半でしたが、地方の平日の朝の会だったので、普通に次の朝でも余裕で買えました。

あまり映画の感想とかは書きません。大体「見ました。面白かったです」で終わらせてしまうのですが、このシンエヴァに関しては見たその日に何かを書いておきたい気持ちになりました。以下はネタバレを含みます。シンエヴァで何が起きるかを知りたくない人は、自分で見るまではこれ以降は読まない方が良いでしょう。

エヴァンゲリオンという作品に対して、自分はあまり良くないファンであっただろうと思います。テレビシリーズは(多分あれは再放送か何かだったと思う)小学生の終わりか中学生の終わりあたりで通して見ました。前半を楽しんでみて、後半になるにつれてわからなくなり、とにかく話題になった最終回の二話についても、なんかわからんうちに終わった。というぐらいのボケッとした感じでした。一番気に入った言葉はディラックの海でした。

僕にとってエヴァンゲリオンの面白さというのは、これまで見たこともない新しい攻撃をしてくる使徒という超強い敵を、巨大ロボットが毎回ものすごく苦戦しながらもどうやって倒すのか、というところでした。なので、どうやって勝ったのか、何と戦っているのか、勝ったのか負けたのか、戦いが起こっているのかすらわからない後半部分になるにつれて熱量を失っていったように記憶しています。田舎でしたので旧劇場版を見る機会もなく、その10年後ぐらいに思い立って旧劇場版を見て、んーやっぱわかんないですね。とすんなり通り過ぎていきました。

序が公開された時は既に社会人でしたから、映画館へ見に行き、エンドロールのBeautiful Worldがその時の気分にバチンと合ったのが印象に残っています。以降の破とQは、エンドロールの宇多田ヒカルの曲を楽しむための前フリとして見に行っていたのも否定できません。

それでも新劇場版を追いかけていたのは、これまで見たこともないものを見たかったからに他なりません。エヴァの好きなところは超強い使徒との戦いでしたから、やはりテレビシリーズと同じく、新劇場版も序と破で自分の楽しいところは終わってしまいました。Qでは基本的にエヴァシリーズとの戦いになり、話の突き放し方も相まって、ああ、またあまり好きではないエヴァになってしまった、という思いがありました。

エヴァに散りばめられた数々の謎や設定にはあまり興味が持てず、この間Qをテレビ放送していた時に、横で見ていた奥さんに質問をされる度に「わかんないんだよね」と答えていたら「なんで何にもわかんないの?」と言われてしまいました。

ここまで書けばネタバレしても間違って読む人はいないでしょう。シンエヴァはこれ以上無いくらいにエヴァンゲリオンを終わらせ、荼毘に伏し、完膚なきまで葬式をしてくれました。こんなに喋る生きたモブキャラがいたエヴァは初めてだし、こんなに素直に心情を話してくれるエヴァも初めてでした。映画の中に満ちていたのは、自分で散らかしたものは自分で片付けるという大人の態度でした。盛大な後片付け映画です。これまで20年近くかけて散らかし続けてきたものをこれほどきちんと片付けられたのは、庵野監督の社長業の経験によるものかもしれません。

また、登場人物が素直に心情を話せるようになったのは、既に終わってしまったからかもしれません。どうしようもなく、終わってしまっているのです。アスカがシンジに対する恋心を素直に打ち明けられたのは、シンジが大人になった瞬間に、アスカの恋も過去のものになったからでしょう。痛みを伴って失ったものは、痛みが過ぎた後には語ることができます。この映画がこんなに素直なものになったのも、庵野監督にとってエヴァが過去のものになった、あるいはシンエヴァによって過去のものにできたからかもしれません。こんな映画が作られてしまっては、こちらからはもう何も言えません。ただ素直な言葉を吐き出して、別れの挨拶をすることしか。

書き割りのラストバトル(大日本人を思い出しました)から繋がる人類補完計画のパートは、キャストが一人一人クランクアップしてお疲れ様でしたーしていく感があり、卒業式の卒業証書授与のようでもあり、はいもう終わり終わり!終わりです!エヴァは終わり!皆さん次回作でまた!!と念入りに言われているようでした。色々な偶然が重なってこの時期の公開になってしまったのも、ある意味では良いタイミングだったのではないかと思えました。

シンエヴァを公開日に見るために、有給休暇を取り、娘を幼稚園に送った後、家族共用の車で映画館に行き、終わった後はその足で幼稚園へ娘を迎えに行きました。最初にエヴァと出会った頃とは全てが変わってしまったけど、やっとエヴァも終わったしな、これもいいんだよな、とエモーションが現れるような映画でした。

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