レヴィナスの著作リスト

エマニュエル・レヴィナス(Emmanuel Levinas)
(1906-1995)仏・ユダヤ人

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1906年リトアニアに生まれる。1923年から30年までフランスのストラスブール大学で哲学を学ぶ。この間、1928年から29年にかけてドイツのフライブルクに滞在、フッサールおよびハイデガーの下で現象学を研究、1930年フランスに帰化、第二次大戦中はナチの捕虜収容所にフランス解放まで抑留される。戦後、ポワチエ大学、パリ・ナンテール大学、ソルボンヌ大学教授を歴任。タルムード研究に取り組む一方、ハイデガー哲学との対決を通して倫理にもとづく独自の哲学を展開。1983年カール・ヤスパース賞を受賞。現代フランス思想界を代表する哲学者の一人。1995年12月25日パリで死去。

◆著作
●1930『フッサール現象学の直観理論』

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フッサールの現象学的哲学の基本諸概念をフランスに初めて紹介し、現象学的思索の視野を拡大し、さらに現象学を乗り超えんとして現代思想に多大な刺激と影響を与えたレヴィナスの思考の原点。フランスの現象学運動の方向を決定づけた歴史的な書。

●1949『フッサールとハイデガー』

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●1961『全体性と無限』

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本書は、西洋を支配してきた「全体性」を標的に据えている。全体性は、個体を「自分に命令を下してくる諸力の担い手」に還元し、個体から主体性を奪う。そうして主体性を失った個体は他者に暴力をふるうだろう。レヴィナスは、このような全体性に対抗するものとして「無限」を掲げる。無限とは、本書の副題「外部性についての試論」にも示されているように「外部性」を指す。外部性とは「他者」であり、他者は「私のうちなる他者の観念をはみ出しながら現前する」とき、私の前に「顔」として現れる。その顔に現れる無限に応答すること――それこそが重要なことであり、存在論は倫理学に取って代わられねばならない。

第I部 〈同〉と〈他〉
第II部 内奥性と家政
第III部 顔と外部性
第IV部 顔の彼方へ

●1967『実存の発見』

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レヴィナス哲学の見取図。フッサールとハイデッガーを超えて他者の倫理へ。フッサール、ハイデッガーに関する初期の解説、主著の思想の土台を成す「表象」と「志向性」をめぐる批判的な現象学研究、自らの「他者の倫理」を圧縮的に語る後期思想圏の論考など、レヴィナスの思索の各局面を具体的に描き出す12篇を収め、初期から後期までのその哲学の発展を理解することができる。

●1968『タルムード四講話』

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倫理の根源を問うた孤高の哲学者による、ユダヤの経典タルムードの叡智を伝える四つの講話(1963~67年)。

第一講 他者に対して
第二講 誘惑の誘惑
第三講 約束の土地か許された土地か
第四講 他者と同じだけ古く

●1972『他者のユマニスム』

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フッサール現象学から出発しハイデガー存在論へと向かいながら、その極点において、《倫理》の問題へと転回し、今日のフランス哲学のうちに、まったく独自な、反存在論的な、切迫した《倫理》の哲学を打ち立てた著者が、この反ユマニスム的な時代にあって、自由な《主体》のユマニスムではなく、もうひとつの別のユマニスム、《他なるもの》のユマニスムの可能性を根源的に追求する。小著ながら、著者の困難な思考の精華を凝縮した、レヴィナス哲学への最良の入門書。

●1976『モーリス・ブランショ』

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レヴィナスはモーリス・ブランショとは学生時代から親密であり(レヴィナス夫人は、第二次世界大戦中、ブランショの尽力で収容所行きを免れた)、思想的にも相通じあうものがあった。しかし、同時にきわめて異質なものを含んだ交友でもあった。本書は、難解で謎に満ちたブランショの文学および思想に対してレヴィナス的視点から解釈を試み、その思想的距離を見いだそうと試みる。

●1976『固有名』

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過ぎ去ったひと、同時代の哲学者、ユダヤ人作家…。著者レヴィナスの人と思想につながる12の固有名たちをアルファベット順に論じた本書は、われわれの時代と民族と、それを引き受ける個人の思索の偉大な力とを十全に伝える。初の作家論集。

アグノン/マルチン・ブーバー/パウル・ツェラン/ジャンヌ・ドゥロム/ジャック・デリダ/エドモン・ジャベス/キルケゴール/ジャン・ラクロワ/ロジェ・ラポルト/マックス・ピカート/プルースト/ヘルマン・レオ・ファン・ブレダ/ジャン・ヴァール

●1977『タルムード新五講話』

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倫理の根源を問うた孤高の哲学者による、ユダヤの経典タルムードの叡智を伝える五つの講話(1969~75年)。

第一講 ユダヤ教徒と革命
第二講 イスラエルと若者
第三講 脱神聖化と脱呪術化
第四講 そして神は女を造り給う
第五講 火によってもたらされた被害

●1978『実存から実存者へ』

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世界の内に生きて「ある」とはどういうことなのか。20世紀哲学の開拓者たちが深めてきたこの問いを、レヴィナスは捕虜収容所というギリギリの状況下にあって出発点から問い直した。フッサールやハイデガーの思想にいち早く透徹した理解を示しつつも、つねに批判的な参照項として、ギリシャ以来の合理主義と手を切った地点から新たな展望を開いてみせる。非人称的な「ある」ことが、「私」として「実詞化」され、糧を求め、他者に出会い、夜一人目醒め、芸術や神に関わる…。レヴィナス初期の主著にして、アウシュヴィッツ以後の哲学的思索の極北を示す記念碑的著作。存在は「悪」なのか―。

●1980『時間と他者』

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レヴィナスが初めてその独自の哲学を主張した著作。アウシュヴィッツ体験をふまえて、時間は孤立した単独の主体に関わる事実ではなく、時間はまさに主体と他者との関係そのものであることを明らかにする。

●1982『聖句の彼方』

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汲み尽くしえない謎をはらんだユダヤ教の聖典タルムードを通して現下の諸問題に斬新な光を当てるレヴィナスの解釈学の極致。混沌とした今日の人間と世界を読み解く。

●1982『倫理と無限』

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倫理の根源を問い続けた思想家レヴィナス。フランスのラジオで放送された10回のインタヴューをまとめた本書は、レヴィナス自身によるその思想の解説とも言える一冊である。自らの思想の形成期に「聖書」から文学作品を経て哲学の道へとたどりついた経緯、フッサール、ハイデガーの思想との出会いが語られ、四つの著書『実存から実存者へ』、『時間と他者』、『全体性と無限』、『存在するとは別の仕方で、あるいは存在することの彼方へ』が参照されつつ、レヴィナスの重要概念が簡潔に紹介されていく。難解な主著のモチーフを自ら解きほぐして語った、貴重な肉声。

●1984『困難な自由』

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第二次世界大戦直後、東欧のユダヤ人社会がほぼ全滅し、西欧のユダヤ人たちが自失状態にあり、「ユダヤ人であること」に積極的な理由を見出しえずにいたまさにその時に、今ここでユダヤ人であることの意味とは何か?という問いに、正面から答えようとした論考である。

●1988『諸国民の時に』

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ユダヤ教律法のタルムード読解を主軸に、マイモニデス、メンデルスゾーン、ローゼンツヴァイクなどユダヤ教思想史の重要な局面を論じながら、現代の倫理と正義を鋭く問う、レヴィナスの最新ユダヤ教論集。

●1990『存在の彼方へ』(存在とは別の仕方であるいは存在することの向こうへ)

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フッサールとハイデガーに現象学を学び、フランスに帰化したユダヤ人哲学者レヴィナス。戦争の世紀の証人として生き、「平和とは何か」の問いを極限まで考察したレヴィナスは、本書において他者への責任とは他者の身代りになることだと説く。『存在と時間』(ハイデガー)以降最も重大な著作とされ、独自の「他者の思想」の到達点を示す大著の文庫化成る。

第1章 存在することと内存在性からの超脱
第2章 志向性から感受することへ
第3章 感受性と近さ
第4章 身代わり
第5章 主体性と無限
第6章 外へ

●1991『われわれのあいだで』

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フッサール,ハイデガー,ベルクソンらの思想との格闘をつうじて混迷を続ける現代社会の道徳と政治に一条の希望の光をもたらす。1950〜80年代の思索の集成。

●1992『観念に到来する神について』

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いかなる現実性からも乖離している神だが、「神」という言葉はなにごとかを意味しうる。「神」という語を意味のある語として悟性的に了解することの可能性、ないしは悟性的に了解するという事実そのものについて考察する。

●1993『神、死、時間』

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ソルボンヌで二つの講義の、「死と時間」、「神と存在-神-学」)を復元、ヘーゲル、ハイデガーを綿密に読解し、ベルクソン、ブロッホらに新たな論考を加える講義録。カント、ヘーゲル、ベルクソン、ハイデガー、ブロッセ、セルバンテス、デカルトらのテクスト解読を通じての、思考発酵のドキュメント。

●1995『他性と超越』

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レヴィナス自身が編集に携わった最後の論集。“超越”を起点として、レヴィナス哲学の枢要な概念“全体性と無限”をめぐり展開されるその思考の精髄。

●1997『貨幣の哲学』

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ハイデガーが唯一現象学的考察を加えなかった「貨幣」について,倫理的意味を有し,世界の正義と人間化に貢献しうるものとして考察するレヴィナスの経済倫理思想。

◆その他
●『レヴィナス・コレクション』

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人間は「イリヤ」(ある)という非人称の牢獄から逃がれることが可能か。深いユダヤ的体験からハイデガー哲学との対決を通して、人間存在と暴力について根源的な問いを発し、独創的な倫理哲学を展開して「他者」の発見にいたるレヴィナスの思想の歩み、その40年の哲学的成果、「フライブルク、フッサール、現象学」「逃走論」「ある」「時間と他なるもの」「存在論は根源的か」など、21篇を集大成。

●『超越・外傷・神曲』

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第一章 存在論復興とナチズムの影(1934-1935)
第二章 迷路と脱出(1936)
第三章 死の王国から他なるものへ(1937-1940)
第四章 影たちの彷徨(1946-1949)
第五章 発露する顔(1951)
第六章 『全体性と無限』への道(1953-1957)

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