社会学

◆オーギュスト・コント(1798〜1857)
フランス
「社会学」の誕生

三状態の法則
人類の知性の進歩
①神学的段階→②形而上学的段階→③実証的段階

それに応じた社会の進歩
①軍事的段階→②法律的段階→③産業的段階

実証主義者協会を結成
ブラジルの共和国建国に貢献

コントは家庭の不和で精神を病み、妻と別居した後、若い女性との恋愛をしたが、翌年彼女も死んだ。これを機に彼は実証主義を手放し、人類を崇拝対象とする「人類教」を提唱。彼女の遺品の椅子を祭壇として使用した。


◆ハーバート・スペンサー(1820〜1903)
イギリス

コントの影響を受けて、「社会進化論」を提唱。社会は軍師型社会→産業型社会へ発展する。

日本の社会学はコントでなくスペンサーから始まる。当時は「交際学」「世帯学」と呼ばれた。

日露戦争後はコントの社会有機体説が流行る。建部は実証主義と儒教を融合。

◆ソースティン・ヴェブレン(1857-1929)
アメリカ

・消費の目的は、見せびらかし(誇張的消費)の欲望にある。インスタ映えなど。
・流行は上流階級からのお下がり(トリクルダウン)である。

◆エミール・デュルケム(1858〜1917)
フランス

「方法論的集合主義」
ウェーバーの個人主義と対比。社会現象を個人の行為に還元せず、社会全体が個人に影響を与える。

『自殺論』(1897)

社会学年報創刊→デュルケム学派

第三共和制を支持し、ドレフュス事件ではドレフュスを擁護。

◆ゲオルク・ジンメル(1858〜1918)
ドイツ

方法論的相互作用主義
社会は名目論でも有機体論でもなく、個人の相互作用により生まれる。

社会権の交錯
一つの集団にだけ属するのでなく、複数の集団に属することで、個人の自由は拡大する。国境を超えてこれを実践すればコスモポリタニズムが生まれる。

◆ジョージ・ハーバート・ミード(1863〜1931)
アメリカ

自我論
人間の自我は、他者の振る舞いを取り込み、自己が他者にどう見られるか想像することで成り立つ。自我は単一の人格ではなく、心の中で主我(I)と客我(Me)という複数の人格が対話して活動しており、社会性を持つ。

ミクロ社会学に影響を与える。

◆マックス・ウェーバー(1864〜1920)
ドイツ

方法論的個人主義

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1904,5)

カルヴァン主義に影響された、個人の宗教的な禁欲生活が資本を生み出し資本主義を発達させた。

◆カール・マンハイム(1893〜1947)

ハンガリーのユダヤ人

社会知識学
どんな思想も時代や立場と無関係に生まれないとして、知識と社会の関係を分析する。存在被拘束性。
全体を見渡す視座に欠けると巨大なイデオロギーに引き寄せられる。知識人は自分のイデオロギーも時代や立場から無関係ではないと自覚しなければならない。

◆アルフレッド・シュッツ(1899〜1959)
オーストリア→アメリカ

現象学的社会学の創始者

日常生活世界を研究対象とし、人が他人を理解する仕組みなどを研究。
人は空想、夢、狂気、科学的事実、など複数の現実を生きている。だが日常生活が至高の現実として意識される。現実のアクセントをずらせば複数の現実を行き来できる。

私たちは他者の行為の意味をいかに理解しているか

自分の体験の意味づけ過程
理由動機→企図(=目的動機)→遂行→達成←反省(意味づけ、他の体験と区別する)

他人の体験の意味づけ過程
他我の一般定立(自他は同じ意識を持っている)が前提にあり、他者の遂行を自分の遂行として推論する。

◆エーリヒ・フロム(1900〜80)
ドイツ

『自由からの逃走』(1941)

自由主義が独裁を生む。自由は他方で孤独や無力感を生む。権威に服従している方が楽だから。その自由の重荷に耐えかねて、権威に依存する人々は権威的な指導者を期待する。

◆ハーバート・ブルーマー(1900〜87)
アメリカ

ミクロ社会学
シンボリック相互作用論
人は、社会から押し付けられた価値や規範に従うのでなく、仲間との相互行為の中で主体的に"意味"を解釈し行動している。

◆タルコット・パーソンズ(1902〜79)
アメリカ

社会システム論
なぜ個人が自由に行動しても秩序が創発するのか(秩序問題)を問うことが社会学と定義した。個人の思惑とは無関係に維持される社会全体を構造として理解し、その構造を維持する機能を分析する。機能主義。AGIL図式。

◆デヴィッド・リースマン(1909〜2002)
アメリカ

『孤独な群衆』1950
伝統指向型
内部指向型
他人指向型
大衆社会では、理想の自律的な市民像というのはなくなるので、マスメディアによる動向に敏感になり、他人の顔色を伺いながら生きるようになる。恥や罪でなく不安により動機付けられる。

◆ジョン・ガルブレイス(1908~2006)
カナダ

欲望は生産の後に生まれる。ヒット作を生んだ企業は、消費者ニーズを発見したのではなく、消費者ニーズ、新たな欲望を作り出す。
逆に言えば、企業の生き残り戦略によって、消費者は欲望は常に肥大化させられ、いつまでも満足(自足)できない。

◆ロバート・マートン(1910〜2003)
アメリカ


中範囲の理論。逸脱研究。犯罪や非行は個人の責任というより社会的要因がある。文化的目標と制度的手段の関係。経済的成功が目標とされる社会の中で、それを達成する手段(教育の機会など)が無いと犯罪が増える。目標と手段のずれをなくすことが重要。

◆ハロルド・ガーフィンケル(1917〜2011)
アメリカ

エスノメソドロジー(人々の方法論)

ある社会的現象が、社会の当事者たちのローカルな実践的活動を通してどのようにして社会的事実として成立するのか、その方法論を分析する。会話分析など。
パーソンズの構造-機能主義への批判としてできた現象学的社会学。

◆ジグムント・バウマン(1925~2017)
ポーランド


流動性の高い現代社会は液状化した社会。固形的な社会では長期的な人生計画が通用したが、液状化した社会では消費が重視されるので、一貫したアイデンティティは負の遺産となる。

◆ニクラス・ルーマン(1927~1998)
ドイツ

『社会システム理論』(1984)
オートポイエーシスな社会システム論。社会の構成要素は個人や行為でなく、コミュニケーション。コミュニケーションの自動連鎖により複雑なシステムが形成されるが、シンプルに理解するために意味が形成され、それが社会制度・規範になる。個人の意識は独立している。

◆ユルゲン・ハーバーマス(1929~)
ドイツ

フランクフルト学派第2世代
市場と官僚制による巨大なシステムと、人々の生活世界(公共圏)があるが、現代社会は社会システムが肥大化し生活世界を圧迫し、再封建化している。人々が理性的議論(コミュニケーション)を行い公共圏を回復すべき。

ルーマンと論争となる。

◆ジャン・ボードリヤール(1929~2007)
フランス

『消費社会の神話と構造』(1970)
記号は差異なので、他と差別化すれば無限に個性として増殖できる。あふれる商品は記号が生み出す実体なき虚構(神話)である。

◆ピエール・ブルデュー(1930~2002)
フランス

本人も意識しない内に言葉遣いや振る舞いや考え方を身につけていることをハビトゥスと言う。ハビトゥスは社会構造から無意識のうちに取り入れられるが、ハビトゥスが慣習となって社会構造に変化も与える。

◆アンソニー・ギデンズ(1938~)
イギリス

現代社会は「再帰性」がしんどさを生んでいる。社会が常に目まぐるしく変化し続けるので、それに合わせて社会制度や自己アイディンティティを見直し続けなくてはならない。そのしんどさが人々を依存症に走らせている。

◆ジョージ・リッツァ(1940~)
アメリカ

『社会のマクドナルド化』(1993)
消費の合理化を追求すると日常生活にもその考え方が浸透する(マクドナルド化)。
四つの原理
・効率性…客の従業員化
・計算可能性…質より量、量的指標
・予測可能性…マニュアル化、チェーン展開
・制御…自動機械化による人為的エラーの削減

消費の合理化が進むと消費の再魔術化も同時に進む。
映画館、劇場、ディズニーランド、テレビゲーム、アニメ…

◆アーリー・ホックシールド(1940~)
アメリカ

女性は仕事(ファーストシフト)の後も家事・子育て・介護(セカンドシフト)がある。そこでグローバル・ケア・チェーンという現象が起きる。
先進国はセカンドシフトを移民労働者に任せ、移民労働者は国内のさらに貧しい親戚にセカンドシフトを任せるという連鎖が発生。

◆リュック・ボルタンスキー(1940~)
フランス

新自由主義(国内の財政負担を最小限にして、市場の競争原理、自己責任論で経済を回す)の時代に必要な精神はネットワークの活用。自身が企業家となり、自分の業績とキャリアアップを意識して、フレキシビリティ(柔軟)に動き、能力とスキル向上に自己投資すべし。

◆ロバート・パットナム(1940~)
アメリカ

構造的空隙だけではだめ。皆がそこを目指すとネットワーク自体が崩壊する。閉じたネットワークの中の利益も大切。「信頼と互酬性の規範」とは、贈与すると返礼しなくてはという義務感が働き、贈与・返礼のやり取りが多いほど信頼性が増すが、少ないと相互不信が強まる。

◆マーク・グラノヴェッター (1943~)
アメリカ

ネットワーク社会では、強い紐帯の人間関係より、弱い紐帯の人間関係から新しい情報や仕事や転職情報が入って来る。強い紐帯を弱い紐帯が橋渡しをして社会ネットワークを形成している。

◆ウルリヒ・ベック(1944~2015)
ドイツ

リスク社会論。以前はモノを生産し富を配分することが問題だったが、現代はモノの生産と共にリスク(産業廃棄物や環境汚染など)も生産され、そのリスクの配分が問題である。しかし個人主義が進み、共同体(組合など)が弱体化し、リスクから個人を守れなくなっている。

◆ブルーノ・ラトゥール(1947~)
フランス

アフターネットワーク理論(ANT)
従来は人と人の相互作用だけが考察されていた。80年代以降は人とモノの相互作用も取り組まれる。モノは道具=客体でなく人間と対等な主体である。個人、モノ、主体、媒介、客体が対等な相互作用を及ぼしている集合体として社会を捉える。

◆ロナルド・S. バート(1949~)
アメリカ

『競争の社会的構造―構造的空隙の理論』(1992)
ネットワーク理論の弱い紐帯をさらに深め、ただ弱いだけでなく、閉じたネットワーク構造同士にある隙間(構造的空隙)を弱い紐帯で橋渡しをすると、新しいアイデアや付加価値を生み出せる。




社会有機体論
プラトン、ヘーゲル、スペンサー
社会は生命のように各器官の働きを通して恒常性を維持し、進化発展している。

社会名目(唯名)論
ウェーバー
個人の集まりが社会。個々人の意志が社会を形成する。しかし社会現象には創発特性があり、個人の意志とは無関係な動きをする。

社会実在論
デュルケム
社会は個人とは別に存在する。メンバーが入れ替わっても組織自体は存在しつづける。社会が個人に影響を与える。

心的相互作用主義
ジンメル
社会名目論と実在論を批判。個人同士の相互作用が社会を構成する。その関係の形式を探る。

社会システム論
パーソンズ、ルーマン
社会を構造と機能に分けて分析する。生態的、機械的なアナロジーがある。AGIL図式、オートポイエーシス・システム。


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