見出し画像

陣痛はなぜ痛い?

1.「陣痛はなぜ痛いの?」

これは、分娩介助をする新人助産師のフォローについた時に、私が必ず尋ねる質問です。
妊婦さんに聞くこともあります。
「陣痛はなぜ痛いんだと思う?」

『え?何を言ってるの?陣痛だから痛くて当然でしょ?』

と思いますか?
新人助産師も妊婦さんもこの質問に、一瞬黙って100%こう答えます。

「・・・わかりません。」 

2.陣痛の強さは分娩監視装置でもはかれない。 

出産の時には、産婦さんのおなかにベルトを巻き、赤ちゃんの心拍数、胎動、子宮の収縮の具合をチェックする装置。それぞれがグラフとなって出てくる分娩監視装置というモニターを付けます。

出産予定日が近くなってきた外来での診察の時につけることもあります。

分娩監視装置

お腹にベルトを巻いているだけなので、陣痛が何分おきに来ているのかを見ることは出来ますが、陣痛が強いのか弱いのかを見ることは出来ません。

画像2

下の線は陣痛を表します。山が3つあるのが分かりますか?
陣痛が3回来たことが分かります。3㎝が1分間なので、約2-4分毎に陣痛が来ている。と読めます。

上の線は胎児の心拍数を表しています。
この子の心拍は大体1分間に130台(130bpm)で打っていることが分かります。
陣痛の山がない、下の線が平らなところが心拍数の基準となります。
(胎児心拍数の基準は陣痛のない時で110~160回までが正常です。)
心拍が下がっているところもないので、胎児は元気である。と判断できます。

下の線が表す陣痛の山が天井についている。もしくは山が大きいから陣痛が強い。とは読みません。というより、読めません。
なぜなら、ふくよかな人は皮下脂肪があるので、どれだけ陣痛が強くても、山が出てこない場合があります。
逆に、痩せている人は皮下脂肪がないので、軽い張りでも山が大きく出て来ることがあるからです。
また、巻いているベルトが緩んでいたり、きつかったりすることでも山の大きさは変わります。

お腹にベルトを巻いて陣痛を観察する方法は、何分おきに陣痛が来ているか。どれくらい長く張っているのかだけが分かります。

では、陣痛が強い弱いを何で判断しているか?

いい質問です。

それは、産婦さん(妊娠中の女性は妊婦。出産中の女性は産婦)のお腹に手を当てて、手に伝わる子宮筋の硬さで判断しています。

そのため、産婦さんが「いたーい!!」と叫んでいても、陣痛は弱い(赤ちゃんを押し出せるほど強くはない)と判断することも多々あります。
ちなみに、「いたーい!!」と叫んでいる時点で、実際の子宮収縮に伴う痛みより強く感じてしまっているのですが・・・・。

3.陣痛の痛みは自分でコントロールできる

陣痛の痛みは子宮筋が収縮する際、子宮内圧が上昇することで感じます。
子宮内圧が上がれば上がるほど痛みを強く感じる。という事です。

ふくらませた風船を外からギューッと押えると、風船の中の圧が上がって最終的に風船は破裂します。

子宮は筋肉で出来ています。
胎児を押し出すためのなくてはならない大切なエネルギーなのですが、子宮筋が収縮した時に、子宮内圧が上がります。その時に、痛みとして感じます。
さらに、筋肉は力を入れると硬くなります。

では、イメージしてみましょう。

右腕を前に伸ばして下さい。
次に腕に力を入れてみてください。
腕の筋肉が硬くなっていることが分かりますか?

陣痛が来た時に「痛いっ!!」「陣痛がまた来たっ!!」「怖いっ!」
と全身に力が入ったり、体をこわばらせてしまったり「いたーい!!」と声が出ていると、更に子宮内圧が上がることになり、

『めっちゃ痛いっ!!!!!!』

という事になります。
ここで質問!

陣痛を痛くするのは誰ですか?

4.リラックスして呼吸をしよう。

出産の時に”呼吸法をしましょう。”
と言うのは、呼吸法をすることで余計な力が入らないように意識しましょう。という事なんです。
痛みがあるときに呼吸法をすることはなかなか難しいです。

人はだれでも痛みがあるときには息を止めたり、体をこわばらせたりしてしまいます。
そんな時に、助産師やご主人が優しく声をかけてあげることで、意識して呼吸法をすることが出来、リラックスすることが出来るのです。
ですが呼吸法だけでは、陣痛の痛みを軽くすることは出来ません。
出産の時に陣痛を強く感じないようにする秘訣。それは、

子宮内圧を上げないようにリラックスして呼吸をする事。

呼吸法とリラックスが上手にできる人は、陣痛が来ていない時には力が抜けていて、大抵ウトウトしています。
陣痛が来ている時も、静かに呼吸法をしているので、そばにいても
”陣痛って本当は痛くないんじゃないの?”
と錯覚させられるくらいお部屋の空気が穏やかです。
なにより、そばについているご主人やご家族が安心して奥様を見ていらっしゃいます。

出産後に本人は「めっちゃ痛かった」というのですけれど・・・。

5.そばにつく人の心得

陣痛が来た時に眉間にしわが寄ったり、肩に力が入ったり、「痛い!」と
声が出るのは力が入っている証拠。
実際の子宮収縮で上がる内圧よりさらに子宮内圧を本人が上げている状態です。
そばについているひとは、
「眉間にしわが寄ってるよ。」とか「肩に力が入ってるよ。」
「(呼吸法で)声が出てるから風だけにしてみて。」
と声をかけてあげましょう。
たまに熱くなりすぎて、言いすぎて喧嘩になるご夫婦がいるので、ついている方も注意が必要です。
ついている方は優しく、あくまでも優しく、静かなトーンで穏やかに声を掛けましょう。

彼女は痛みに耐えて頑張っているのです。
代わってあげることは出来ません。

そばについている貴方自身が、彼女が痛がっていることに気付かないくらいリラックスした呼吸法をさせられることが出来たら、彼女も陣痛を乗り切ることが出来ます。

6.産婆さんからのアドバイス

「陣痛はなぜ痛い?」 

答えは・・・「子宮内圧が上がるから」

子宮内圧を上げなければ、痛みはきつく感じることはありません。

眉間にしわが寄っていませんか?
肩に力は入っていませんか?
声が出たりしていませんか?
リラックスは上手くできていますか?

呼吸の仕方で陣痛の痛さの加減が変わります。
お産の時は、リラックスして呼吸法をしましょう。

ですが、長くなりました。
リラックスして呼吸法をする方法はまた次の機会にお話ししましょう。
子宮内圧を上げない呼吸の仕方は、貴女が知っている、イメージしている呼吸法とは全然違うと思います。
目からうろこの呼吸法は次の機会に。

本日は最後までお読みいただきありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?