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正鵠とは何ぞ

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勉強

神奈川県の藤沢の近くの地名で「告げるに鳥」っていう漢字なんて読むの?
と聞かれたので
「くげ」だよ、と。
鵠沼(くげぬま)のことである。
「ググればいいじゃん」
「だから読み方がわからないから」
「コピペすればいいじゃん」
で、鵠ってナンの鳥だろか雁じゃなかったろうかと
愛用の携帯新漢和中辞典 長澤規矩也編 で調べてみたら

㊀クグイ(ヒ)白鳥。がんに似て大きく、羽は白い。
ですってよ♪
そういえばこの字は「正鵠を射る」の「鵠」だなあ。
一般的に日本の弓道で使う的は「霞的(かすみまと)」と言って
まん中は白い。
これとは別にまん中が黒い「星的(ほしまと)」というのもあるが
慣用句なら一般的な「霞的」の方を意味するのでは。
そうか
的のまん中が白いから 鵠=白鳥 ってことで「正鵠を射る」かー♪
確認のため「正鵠」をいつもの明解国語辞典 第三版 で引いてみると

正鵠 〔的のまん中の黒点の意〕急所。要点。「-を射る〔急所をつく〕」

…ん?
的のまん中の“黒点”ですと?黒点?
改めて漢和辞典を見直すと、㊀の後に

㊁マト。弓矢のまとの中央の黒いほし「正-」

となってるじゃあーりませんか!!
さらにまた“正鵠”を 広辞苑 第二版 補訂版 で調べてみたら
ほほー!これの語源は中国の古典「中庸」ですってよ♪
そこで図書館で借りてきた
「中庸」宇野哲人 講談社学術文庫 で調べてみると

子曰く、射は君子に似たるあり、これを正鵠に失いて、これをその身に反求すと。

君子は、矢を放って外れたら、そのワケを自らに求める、と。
君子は己を正しくして人に求めぬ、のだそうです。
って
元は「正鵠を射る」じゃなくて「正鵠を失う」なのか?
さてそこで・字義を見ると
正鵠=的のほしのこと。…布を張って的とし、それにほしを画けるを正鵠といい…
熊・虎・豹等の皮を張って的とし、それにほしを画けるを鵠といい…
正は…鷹の類。鵠は雁の類。
等々書いてあり、もとは狩りで鳥獣を狙っていたことから来た的の呼び方のようだ。
そうか・これは弓道の霞的のことではなかったということか!
形も丸じゃなくて・四角だし。
というワケで
正鵠が古代の四角い的で・弓道の丸い霞的じゃなかったことはわかったが
で、ナンで
「正鵠を失う」が「正鵠を射る」となったのかはわからなかった。

“鵠”を巡る三日間の調べ物の旅であった。

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