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夜道に響く声明(しょうみょう)

小さな怪奇現象

徹夜明けのその夜
もう、体力は限界だった。
会議を終えて家に帰ろうと夜道を自転車で走っていたら
なんとなく
耳元で声明(しょうみょう)が聞こえているのに気が付いた。
「しょうみょう」というのは
仏教の儀式で声を合わせてお経を唱える、というものだ。
あれー
どこからきこえるのかなあ
と、ペダルを踏みながら寝不足の頭で考えた。
自転車は走っているが「しょうみょう」は離れて行かないで
ずっと耳元で聞こえている。
みょうぎょうおうしょうようぎょうみょうよう
一緒についてくるなあ
と、ペダルを踏みながら寝不足の頭で考えた。
なんだか足元から響いてくるなあ
と、ペダルを踏みながら寝不足の頭で考えた。
そしてようやくその音が
ホントに足元から響いてくることに気が付いた。

ダイナモの響きだったのだ。
夜だったのでライトをつけて走っていた。
電池切れがイヤだったので
発電する分走りは重くなるが、ダイナモを使っていた。

タイヤと一緒に回るダイナモは

うぉんうぉんうぉんうぉん

と規則的にうなりを上げていて
それが「しょうみょう」のように響いていたのだった。
ああ、ダイナモか、と思いつつも
その「声」に心地よく包まれていた。

疲れや寝不足も怪奇現象のもとになる。

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