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鏡の中の鏡の中の鏡の中の

小さな怪奇現象

小樽芸術村に何度か行った。
ここは家具や生活雑貨で知られたニトリのいわゆるCSRだ。
そこで見た非常に不思議で面白いものが
旧三井銀行小樽市店の中の
「貸金庫回廊」
分厚い頑丈そうな金庫の扉の向こうにはなぜか白いタイル張りの部屋がっ!
なぜか“回廊”になっていて(実は空気を回して結露を防止するため)
角々には床から天井までの細長い鏡が設置されている。

鏡の回廊

これで回廊のどこに人がいても一目でわかるのだ。
隠れることができない。
今ならカメラだのセンサーだのというハナシになるところを
非常に単純な方法で電気も使わずにスマートに解決している。
カーブミラーのようなものか。
で、そこで鏡の中の自分を見ると
そこにいたのは
何とも不思議な

鏡に映る自分の後ろ姿

で、ナンで?
45度の角度で回廊の角々に設置されている鏡に
自分の姿が反射して反射してぐるっと一回り
いや、理屈はわかるんだけどさ。
それでもなお、不思議な体験であった。

そういえば
子どもの頃は学校のトイレでは手洗い場の鏡が向い合せになっていた。
そこの間に立って鏡を見ると
鏡の中にどこまでも続くゆがんだ四角と自分の姿が。
子ども伝説の一つとして
13日の金曜日に鏡の間に立つと鏡の中に引き込まれる
なんていうのがあって、これはかなり怖いハナシだった。
鏡の面が完全に平らじゃなくて少しゆがんでいることで
入れ子のように続く画面がゆるくうねりながら小さくなっていくのが
本当に吸い込まれるような世界を作り出していた。
さて、子どもの頃は
この鏡の中の画面はどこまでも果て無く続いていると思っていて
いや、だからこそ恐ろしかったのだが
あるとき科学の本を読んでいて
「この画面は無限じゃない」ことを知って
拍子抜けした。
というか、正直がっかりしたような…。

鏡の中の像は光でできていて
光には決まった波長があるからその波長より小さい像はできない。
1ピースが1センチ角のブロックで5ミリの絵は描けないようなもの。

あまりにも理解できてホントにつまらなくなった。
何かこう、果ての無い道の向こうがいきなりどん詰まりだった
みたいな。

それでもまだ、果ての無いような世界は自分たちの身近にちゃんとある。
青空の彼方には宇宙があるのだ。

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