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幸せのにおい

子育ての風景

子どものころ、夏に花火をした夜は
布団に入ると身体から火薬のにおいがして
ああ、花火のにおいがする、とうれしくなった。
当時、花火は本当に特別なイベントだったので
私は布団の中でそのにおいを飽きずに楽しんでいた。

また、子どものころ、たまに家族でジンギスカンをやった。
狭い台所に家族7人が集まって板の間に座り
七輪に乗せたジンギスカン鍋を囲んだ。
ホーローのバットに大きなごま塩お握りがぎっしり並んで
リンゴのすりおろしたのやら
刻んだパセリや、おろし生姜や
ゴマ油の浮いたタレがみんなの前に並んでいて
いつもと違う夕食が浮き浮きと楽しかった。
布団に入ると身体からジンギスカンのにおいがして
楽しかったジンギスカンをもう一度楽しめた。

大人になって、飲み会に行くと
お酒や焼き鳥や揚げ物のにおいがついてくる。
帰ってからお風呂に入るのだが
それでも布団に入ると飲み会のにおいがする。
楽しかった飲み会のにおいは
その日の眠りを幸せにしてくれる。

楽しさと結びついたにおいは
楽しさをそのまま自分の中にとどめている気がする。
楽しいにおいは
幸せに結びついている。

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