誰がために風立ちぬ
だあれが風を見たでせう
私もあなたもついぞ見ぬ
されど木の葉の顫えるは
風がとおりぬけたのです
だあれが風を見たでせう
あなたも私もいまだ見ぬ
しかれど梢がなびくのは
風がわたっているのです
ふるえる木の葉と同様に
なびいた梢と変わりなく
いのちというは、現象で
たれもが一期の、現象で
だあれが風を見たでせう
私もあなたもついぞ見ぬ
風は木の葉をおののかせ
私のこころもおののかせ
梢を手もなくなびかせて
花を手もなく散らしめて
いのちというは、現象で
まことはかなき、現象で
時代というのも、現象で
花と散るかは知らねども
貴方の元へも吹くでせう
だあれがために風は立つ