賢さゆえの奨学金地獄

私には借金がある。
奨学金という名の借金だ。

私の実家は貧乏であった。

幼い頃に親が亡くなったり、
その親にも借金があり保険金を返済に充てたりしたので、
とにもかくにもお金が無かった。
(保険金の件は詳しく知らないが。)

そんな中でも(個人的には)幸せに暮らしていた。
友達にも恵まれ、笑いの絶えない日々であった。

そして私は、それなりに勉強ができた。
できてしまっていたのだ。

私には年上の兄弟が2人いる。
その2人は、こう言っては何だが、あまり勉強ができない。

その2人は、公立の工業高校に行った。
公立でお金はかからなかったが、奨学金は借りていた。
それを家の生活費に充てていた。
そして2人は高卒で就職し、今も毎月奨学金を返している。
少額ではあるが、毎月の負担だとは思う。

対して私は、公立の進学校へ行った。
地元の中学校では学年でほぼほぼトップの成績であったので、進学校以外の選択肢が無かった。

じっくり先のことを考えたら良かったのだが、
「勉強できるやつは〇〇高校へ行く」との暗黙の了解で、
敷かれたレールに乗ったのだ。

高校でも私はそれなりに勉強ができた。
理系の特進クラスに選ばれ、学年でもトップ10には入る成績を取っていた。
そうなると、周囲・特に教師陣からの進学の期待は高くなっていた。
そんな中、私は実家の経済状況を把握していなかった。

高校3年生の冬、私は某国立大学を受験した。
結果は、合格だった。

その後、親と進学に係るお金の話になった。

結論、
・入学金は親に出してもらえる。
・その後の学費は自分のバイト代と奨学金で払う。
・バイト代は扶養内に収める。

ということになった。

待っていたのは、奨学金地獄であった。
高校の頃から借りていたので、
卒業時には約700万円の借金が手元に残っていた。

幸い私は大学を4年で卒業でき、
手前味噌ながら名のある国立大学ということもあり、
良い企業には就職できたと思う。

年収に関しても不満はないし、
同じ年代の中央値と比べても高い方ではあると思う。

ただ、毎月3万円、年間36万円の返済を続けている。

正直貯金はあまりできていない。
日々の生活もかなり質素である。

「この3万円があればこの服買えた。」
「この3万円があれば自分も一緒に旅行に行けた。」
「この3万円があれば、大事な人に良い品が贈れた。」


そう思うことは何度もあった。
社会人になって6年、奨学金を返していなければ、
今の貯金がプラス200万円以上になっていた。

そして今思うことは、
大学に行っていなかった世界線のことだ。

もし勉強ができなかったら?
もし実家の経済状況を深く知っていたら?
もし大学に行かなかったら?

今のような奨学金地獄は待っていなかっただろう。

実際、高卒で働いている兄弟の方が貯金はある。
お金は持っている。

稼ぎは恐らく私の方が多いが、返済額も私の方が大きい。

数十年の長い目で見たら、
私の方がお金を持つことになるかもしれない。
ただ、私は今生活が苦しいのだ。

そして、この状況だと結婚に踏み切れない。

抱えている借金の額が少なかったら、
結婚も視野に入っているのだが、相手のことを想うと、
こんな借金に塗れた私と結婚してほしいとは言えない。

婚期が遅れてしまった場合、
お金では取り返せない程の人生の負債が待っていると思う。

これ以上は雑感になるので割愛するが、
勉強ができてしまうが故に、
先を考えずに借金を増やした自分を、
疎ましく思ってしまう自分がいる日記である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?